自分が完全と思えるまで、不完全な解答は書きたくないようです[中学受験合格言コラム]

自分が完全と思えるまで、不完全な解答は書きたくないようです

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


※小泉さんへのご質問は、不定期にBenesse教育情報サイトメンバー向けのメールマガジン「教育情報サイト通信」で募集をいたします(随時の受付は行っておりません)。


質問者

相談者:小4男子(性格:神経質なタイプ)のお母さま


質問

記述問題を解く時、解答を書けば満点に近い点数をとれる時もあるのに、まったく書けない時もあります。理解できていないわけではなく、自分が完全と思えない不完全な解答は書きたくないようです。少しでも部分点がもらえるようにするためには、どのような声かけをしていけばよいでしょうか。


小泉先生のアドバイス

“爪跡だけでも残す”ことによって、どれだけよい結果が生まれたかを実感させる。

性格的に神経質で几帳面なお子さんは、「完璧」をめざしますから、不完全になると思われる記述問題は白紙にしておくことがあります。極端な場合、選択肢でも答えを書かずにそのままにしておきます。その子いわく、「答えがわからなかった。当て推量で正解してもしかたないので、空欄のままにしておいた」ということです。確かに適当に選択肢を選んで、それで正解でも実力ではありません。

しかし、テストでは1点でも多くとりたいですから、あやふやでも選択肢を選び、記述では何らかの答案を仕上げるのが受験生としての行動だと思います。恐らく、もう少し受験が近付けばさすがに点数が欲しくなり、お子さんも答案を埋めるようにはなるとは思います。しかし、「完璧」を求めすぎると困ることもありますから、機会をとらえてアドバイスをしていくべきだと思います。

それでは、「完璧」を求めすぎるとどのようなことが困るのでしょうか。神経質なお子さんは、非常にまじめで計画性もあり、コツコツ勉強する努力家が多いようです。おおらかで楽天的な性格の子どもと比べれば、受験生としての適性はあるといえるかもしれません。しかし、1つ困ることは「完璧」を求めすぎるために、完全にはできないと思われる物事に手を付けないことがあることです。まさに、今回の記述問題のようなケースです。まるでそれがなかったかのように、フタをして無視してしまうのです。

もちろんそれをしなくてはならないことは十分承知していますから、完全にやらないのではなく、正確にはズルズルと先延ばししてしまうというのが本当でしょう。どんどん先延ばししてしまうので、あとで取り返しのつかない事態になってしまう場合もあります。これは、神経質な人の大いなる欠点だと思います。自分の得意なことやできることは徹底的に仕上げて、難しいことやできそうもないことはやらずに先延ばしする。たとえば、自分の家の玄関はそれこそピカピカにしておくが、自分ではできない裏庭の手入れは放置して、雑草が伸び放題というのと同じです。

人には得意・不得意がありますが、物事を処理するのにもタイムリミットというものがあります。時間内にいかにベストな結果を残すかが、受験に限らず求められることです。そのためには、「全体を見渡す」ことや「バランスをとること」が非常に大切です。しかし、そのようなアドバイスをしても、神経質な人はいろいろな理由を付けて反発してくるでしょう。恐らく、理屈ではなく、完璧にできないことが感情的に受け入れられないのです。しかし、物事は一部を完璧にやっても、他の部分がなおざりでは高い評価は受けられません。やはり「バランス」という視点は必要不可欠ですから、今から少しずつ身に付けたいものです。

さて、アドバイスの方法ですが、やはり声かけのチャンスは「この問題ができていたら、点数や偏差値が上がって、それにより上のクラスに入れたのに!」というような局面です。つまり、完璧にできなくても、“爪跡だけでも残す(少しでもやっておく)”ことによってどれだけあとによい結果が生まれたかを実感させることが大事なのです。それは「失敗事例」でも「成功事例」でもかまいません。そのような経験を積むことで、完璧にはできなくても少しでもやることの重要性を体感できるでしょう。最初のうちは精神的に気持ち悪いかもしれませんが、「ここまではやっておく」というバランス感覚が、事例を通して経験的に身に付いていくと思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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