漢字・指示語・熟語・ことわざ・慣用句など、国語のすべてが苦手で困っています[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小3男子(性格:大ざっぱ・感情的なタイプ)のお母さま


質問

国語がとにかくすべて苦手です。まず、漢字のとめ・はね・はらいなどが丁寧に書けません。文章を読む時も、指示語がわからないので、わからなくなるようです。選択肢は、いったん合っていると思えば、他の選択肢を熟読せずに選びます。修飾語や体言止め等の文法も理解していません。四字熟語・ことわざ・慣用句などもあやふやです。
現在は、対策として問題を解かせ、まちがえたら説明し、その問題は後日再度解かせています。しかし、前回と同じようにまちがえることが多いです。正解になるまで何回もくり返し解かせますが、通信教育の教材のサイクルに追い付けずたまる一方です。片付けるため、つい、△くらいなら○にしてしまっているような状況で、困りきっています。


小泉先生のアドバイス

学習内容に優先順位を付けて確実にこなしていく。「焦らず・たゆまず」が最善の学習方法。


こなすべき課題が多すぎて、学習内容が消化しきれていないようです。小学校の中学年の時期は、国語が得意な子は特に何もしなくてもできるようです。それなのに「国語はすべて苦手」となると、親としては非常に焦ることでしょう。ということで、問題を次から次へとやらせて、「つい、△くらいなら○にしてしまっている」ほど取り組みが荒くなってしまいます。恐らく、学習内容の定着度合いが低く、よくない状態でしょう。効率の悪い学習に陥っていると思われます。

解決方法としては、学習内容に優先順位を付けて一つひとつ確実にこなしていくことです。優先順位は、(1)語彙(ごい)>(2)読解>(3)解法です。まずは、漢字の書き取りや熟語、慣用句、ことわざなどが国語の基礎になります。次に、文章をしっかり読めて内容を理解できることが必要です。そして、最後にしっかり読めたかどうかを確かめるためにある、選択肢問題や記述問題などが解けるようになるということです。もちろん問題が解けなければ最終的な成果は出ませんから、漢字の書き取りをしっかりやってもテストの点数はあまり変わらないかもしれません。でも、問題文がしっかり読めていなければ、問いに答えることはできません。また、語彙力がなければしっかり読むことはできません。基礎ができていなければ、いくら上に積み上げていっても次々に崩れていってしまうのです。ここはじっくりと基礎力や読解力を構築することに力を注ぐべきです。

基礎力に注力するといっても、漢字の練習だけをしていればよいというものではありません。基礎的な学習はすぐに飽きてしまいがちなので、長い時間やっても効率的ではないと思います。漢字の勉強であれば、1日20分、毎日やるという具合に取り組めばよいでしょう。その時に漢字のとめ・はね・はらいなどをしっかり丁寧に書かせ、練習させればよいでしょう。なお、1字についてはせいぜい10回くらい書かせる程度のほうが雑にならなくてよいと思います。

読みは音読をさせるとよいでしょう。特に、男のお子さまの場合は音読を嫌がりますが、それは読み方がヘタクソだからです。読めない漢字や意味のわからない慣用句が多く、どこで文を切って読めばよいかわかりません。聞いている人にまちがいを指摘されるのが嫌なので音読を嫌います。しかし、しっかり読めなくては国語力が向上しませんから、何としても音読の機会を増やしたいものです。なお、文法は今の段階ではそれほど意識する必要はないでしょう。音読することで、言葉と言葉や文と文の関係が自然と身に付いていきます。それを論理的に理解するのが文法ですから、まずは音読で言葉や文章に慣れることが先です。

もちろん、問題集をやる時間を設けてもよいでしょう。ただし、次から次へやってくる問題集を、すべて片付けようとはしないことです。もっとじっくりと、「考える学習」を行いましょう。具体的には、問題を解かせてまちがえたら、説明し、後日、まちがえた問題をさせます。ここまではよいのですが、同じようにまちがえることが多いのが大きな問題です。お子さまは、お母さんの説明をしっかり聞いていないのかもしれません。聞いているようですが、自分の頭で考えていないので本当の意味で理解できていないのです。これはお子さまの責任だけではないかもしれません。

一般的に、学習者は指導者の説明を聞くのがヘタクソです。多くの場合、指導者が説明を始めると、それだけで安心してしまい頭が働かなくなります。それを防ぐには、説明の途中で質問するとよいでしょう。「なぜなの?」「どういうことなの?」を織り交ぜて説明すると、学習者は自分の頭で考えざるを得なくなります。さらに、すべての説明が終わって「わかった」と言ったら、今度はお子さまに説明させるとよいでしょう。2、3日たってもしっかり説明できるようであれば、十分に理解していると思います。

このように勉強していくと、少なくとも当初はかなりの時間がかかります。問題集も今までの半分以下の分量しかこなせないかもしれません。「これでよいのか?」と、お母さんとしては非常に焦ると思います。焦るとは思いますが、とりあえず3か月~4か月やってみてください。恐らく、3か月しっかり継続できれば、目に見えて成果が出てくると思います。最初はほんの少しずつ、本当に「少しよくなったかな?」程度ですが、やがてそれは成績に明確に現れてきます。その間はお母さんもイライラするでしょうが、少しでも成果が出てきたらそれをほめてあげましょう。成果といっても、最初は本人にもわからないくらいのささやかな場合が多いと思います。

具体的にいえば、「10問中2問しかとれなかった漢字の書き取りが3問~4問とれるようになった」、あるいは「難しい慣用句を1つ知っていた」そんな程度です。点数が10点~20点上がるとか、偏差値が5上がるとかであれば、誰でもほめてあげられます。でも、その前の前兆をほめてあげるのは非常に難しいでしょう。しかも、それをほめてあげられないばかりに、お子さまの「継続して努力しよう」という気持ちがなえてしまい、せっかくの伸びる芽を摘み取ることになるのです。この時期にほめて励ますことは、お母さんの大切な役目だと思います。

以上より、「たまる一方なので、つい、△くらいなら○にしてしまっている」という指導法がいかにダメなものかがおわかりになったと思います。ここは、「たまる一方なのを気にせず、○でないのものについては『なぜそうなの?』としつこく考えさせる」ような指導を行いたいものです。なお、今回のように問題を次から次へとやらせる指導も考えものですが、これとは反対に、「日本語なんだから、学年が上がればなんとかなる」と放っておくのはそれ以上に問題です。放置しておいても、事態は改善しないばかりかますます悪くなります。なんでも同じですが、「焦らず・たゆまず」が最善の学習方法なのだと思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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