共学化「人気」を検証する[中学受験]
■2014年中学入試の人気と背景を読む
中学入試において、人気校はなぜ人気校であるのか、果たしてそれは受験生にとって真に望ましい学校なのか、ということを考えてみたい。そこで近年の入試においての、最大のトレンドである「共学化人気」について今回は検証する。
共学化した結果、どれだけ人気が出たのかを分析してみる。
表1の①に示したように、2009年の受験者数を100%とした2013年の受験者数増減率は、共学化した学校の平均が104%と、首都圏全体の平均(約80%)に比べると高い数値だ。しかし、リーマンショック後に共学化した学校の受験者数増減率は220%と高いが、リーマンショック前に共学化した学校の受験者数増減率は平均で約80%と低く、首都圏全体の平均(約80%)と同じだった。
このように比較してみると、リーマンショック前/後で共学化した学校では、極端な人気の差があるように見える。受験者数の全体がリーマンショック後に大きく後退沈静化したので、共学化人気があっても、その波にのまれてしまったかに見えるのである。
表1の②は、2013年入試の受験者数を、共学化前年の受験者数で割ったもので、共学化した学校の平均が181%と、大幅に増加したことがわかる。また、リーマンショック前/後では、それぞれ180%/185%でほとんど変わらない。やはり、リーマンショック前でも共学化前年と比べると2013年入試の受験者数は増えているのである。つまり、リーマンショックで共学化人気が打ち消されたわけではないのである。
とはいえ、表2の「共学化時 前年対比」を見ると1校(91%)だけ共学化しても受験者数が減少している。同数だった1校を除き、他の14校は共学化したことで人気が出て受験者数が急増している。
次に、表2の「リーマンショック前後の時期における共学化後の受験者数前年対比推移」では、共学化後、どれだけ人気が続くのかを分析した。共学化した学校全体では、共学化時の平均前年対比179%で受験者数が急増し、共学化2年後までは、毎年、前年の受験者数を上回っている。しかし、3年目では、受験者数が6ポイントだけ前年を下回り、徐々に受験者数は減少することがわかる。
また、リーマンショック前とリーマンショック後では、リーマンショック後のほうが、より早く、共学化2年後で93%と受験者数前年比が100%を下回っている。ここにはリーマンショックが大きく影響していると考えられる。
毎年、受験者数は景気動向や人口および競合校の影響等で増減するので、共学化直前の受験者数と比較しなければ、どの学校が、どれだけ人気が出たのかがわからない。
表1の②で共学化前年と、2013年の受験者数を対比した数値を見ると、16校中11校は120%を超えるなど、受験者数を増やしているが、5校は100%未満で受験者数を減らしている。増やしている11校のうち6校は200%以上に達し、マーケットを2倍にした(男女とも対象となる共学化した)だけの人気があることがわかる。そのような共学校を見ると、共学化しただけではなく、同時に二の矢、三の矢ともいうべき教育改革を行い、教育理念や教育内容を、それまでとは一新したものに改革している学校が多い。
こうして見ていくと、確かに共学化したことによる人気上昇というものは存在する。したがって、共学化すれば受験者数が増えるということで、今後も共学化する学校は多いだろうが、単なる数合わせのための共学化は、短命(おおむね3年くらいだろうか)に終わっていることも表2からも見てとれる。よって、共学化人気校については、教育改革が伴うものかどうかの見極めが欠かせない。
受験者数が200%を超えている学校は、校名変更、校舎新築と「新しい酒は新しい革袋に」ということわざにあるとおりの手も共学化「後」に打っている。ただし、カリキュラム改革を、事業課題として位置付けていることが共通している。