夏休みに、子育てを考えよう! 本当に必要なのは「所属先」ではなく「信頼関係」[高校受験]

今回は、これからの社会で必要になってくる力についてお話しましょう。


毎年3月にはこんな電話をいただきます。
「お陰さまで〇〇高校に合格できました」
「それはよかったですね。おめでとうございます」
といったやりとりのあと、切り出される用件は次のようなものです。
「4月からはどこの塾に通わせたらいいでしょうか?」


常に我が子を勉強する環境に置いておかないと不安で、そのために先へ先へと準備するクセが付いてしまっている保護者のかたが、大勢います。

入学時だけではありません。高校2年生になればなったで、本人以上に熱心に予備校探しをします。さらには「大学はどこの大学で、どういう学部なら、大企業の正社員になれる確率が高いか」……。そうしたことまでが保護者のかた同士の会話に上ります。

我が子の将来が不安でしかたがない保護者のかたが増えていることが、最近の世相に見られる顕著な傾向です。


しかし、先行き不透明だからといっても、どんな境遇になっても自分の力でやっていけるような実力を付けておいてやろうという方向にはなかなかいきません。それよりも安全確実なところに所属させてやりたいという方向にばかり関心が向いてしまっています。

が、その安全とにらんだ所属先がどうなるか。大企業といえども、倒産やM&Aの増加などを見れば、絶対安全なところなどありません。


私自身が上場企業を離れて、独立して小さな研究所を運営しているから特にそう感じるのかもしれませんが、所属先や給与でお子さまの幸せが決まるような考え方はしないほうがいいと思うのです。


この年になってみると、人生の充実は、所属先やポスト、給与といったものではなく、自分に向いた仕事ができていて、人との間に深い信頼関係が生まれている状態にあるような気がします。

保護者のかたが先へ先へと安全な所属先を用意してしまうのではなく、お子さま自身が悪戦苦闘しながら、自分の手で生き方を見つける、それができてこそお子さまは人生の充実を感じるのではないでしょうか。


お子さまが充実感を得られるよう、「肉体的にも精神的にもタフに育てる」、それを意識して子育てしてくださるよう願っています。


プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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