夏休みに、子育てを考えよう! これからの子どもに必要な「力」とは……[高校受験]

今回は「話し方」の問題について取り上げます。


日本人同士の会話の特性についてよくいわれていることを整理してみましょう。


・主語が何かがわからない。

・最後まで聞かないと、肯定なのか否定なのか判断できない。

・「あれを取って」「それをして」といった指示語が多く、仲間内でしか通用しない表現が多い。

・相手の反応を見て、途中から話の方向が変わる(変える)。

・阿吽(あうん)の呼吸を相手に求めている。


このようなことがしばしば取り沙汰されます。


日本人同士ならこのような会話でもいいでしょう。しかし、お子さまが巣立っていくこれからの社会では、ごく普通に外国の人(そんな言い方すらしなくなっているかもしれません)と話す必要が出てくる可能性が大きいのです。そうした時、上に挙げたような、日本人の特性にあふれた話し方をしていたのでは、まるで通用しません。


必ず主語をはっきりさせて話をする、結論を先に言う、主観的な印象ではなく客観的材料を踏まえて話す……そういったことは、その場で意識して話せば可能になるというものではありません。日頃からトレーニングしなければ、身に付かないものです。そこで、まだ少数ですが、生徒の将来を考え、「論理的思考力」、「クリティカルシンキング(批判的思考)」、「言語技術」といったものを身に付けさせようと授業を工夫しだしている高校が出てきています。


もちろんしっかりとした知識の習得はやりますが、それに加えて変化が激しい時代に向けて、「情報を収集・分析し、的確に判断する力」、「自ら課題を設定し、それを解決する力」、「自分のアタマで粘り強く考える力」、「自分の考えを周囲にわかりやすく伝える力」を付けようと「総合学習」を工夫し、重視している高校もあります。


「総合的な学習」は「ゆとり教育」の代名詞のようにいわれて評判が悪いですが、教科学習だけでは補えない、これからの時代を生きていくうえで必要な各種の「力」をつける時間なのです。


我が子に難関大学に入ってもらいたいと考えている保護者は、効率的なカリキュラムや先取り学習を採用し、早い時期から大学受験の演習に移行するような高校を選びたくなると思います。が、長いスパンで考えれば、お子さまには、上に挙げたような「力」を付けることが必要だと気付かれると思うのです。


これからお子さまが生きていく時代には今回取り上げたような会話や思考の「力」が必要です。こうしたことを参考に子育てしていただくと同時に、これからの受験校選びでも、これらを意識している学校かどうかをチェックされてはいかがでしょうか。



プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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