2014年中学入試の人気と背景を読む[中学受験]
今年(2013年)の中学受験における受験者数前年対比は全般的に減少しているが、下表に見られるように、理系大学の系列校である東邦大学付属東邦中学校、東京農業大学第一高等学校中等部、東京都市大学付属中学校、芝浦工業大学柏中学校、芝浦工業大学中学校、東京電機大学中学校は同じ難易度の平均よりも受験者数前年対比が高く、受験者数は増加している。
※森上教育研究所調べ
もっとも、これは男子が増加しているのであって、共学校の女子は微増か減少である。将来の職業を意識した中学受験が増えてきているということだろう。特に難関校では医師をめざす女子が多い。
小学生が将来の職業を具体的に考えるのは早すぎるのではないか。むしろ、現実的な職業というよりも夢や希望を育む必要があるのではないかというご意見もあると思う。あこがれの職業に就くために必要な能力を身に付けたとしても、その技術はすぐに古くなってしまう世の中だ。そう考えると小学生の時点で職業に対する意識を持たせることは決して悪いことではないにしても、職業の基盤にある人々の夢や希望、意欲と何よりもその土台となる知識、これらを用いて応用する「課題解決力」などにこそ目を向けて学ぶことに意義があるだろう。
さらにいえば大学での理数系の学習は、必ず理論立てや実験での検証が行われる。その世界的な潮流も常に教育の場に生かされる環境がある。その結果、概して理系学生、とりわけ国立大理系の就職は安定感がある。その期待において理系大学の系列校人気はもっともだといえよう。だが、その分人文系への進学が大きな割合を占める女子中位校は、反対に人気が沈静化している。あるいは男子の社会科学系学部への進学の多い中位校も緩和している。なぜなら、その先の就職難がよく知られているからだ。とはいえ、しばしば進路は変更を余儀なくされる。必ずしもその能力技能が十分なケースばかりではないからであり、あるいは興味関心を持続させることができないことも少なくないからだ。ただその点は中学高校での課題といえよう。
少し話は脱線するが、最初に掲げた中学校6校はすべて大学系列にあるため、総じてキャンパスが広く設備も整っている、という点も見逃せない。会社にたとえれば、いずれも大企業の子会社もしくは系列会社で、構えに余裕がある。人気の背景としてその辺りも今の恵まれた環境に育った受験生に好まれそうである。
付言すれば千葉の2校の共学校(東邦大学付属東邦中学校、芝浦工業大学柏中学校)は人気ゾーンの上位中堅難度にあって相当な人気校だが、東京の2校の男子校(東京都市大学付属中学校、芝浦工業大学中学校)と、別の2校の共学校(東京農業大学第一高等学校中等部、東京電機大学中学校)はいずれも一度沈静化した人気が近年復調している状況だ。したがって東京の4校は中期的に考えると、国立大理系への進学率向上や理系教育の内実のよさが今後を占う鍵になるだろう。
ほかにも、玉川大学には中高校舎に隣接して大規模なサイエンス館ともいうべきサイテックセンターがあり、学習院大学には中高大を通じた理系の一貫教育セミナーなどがある。理系大学の系列校だけではなく、総合大学の系列校にも、知的資産を生かしやすい総合キャンパスを持つ強みがあることに、注目する必要があるだろう。