受験生活のスタートにあたって 学区の撤廃・緩和が進む[高校受験]

 いよいよ受験生活が本格的に始まりますね。お子さまの受験生としての意識はどの程度まで高まっているでしょうか。
 保護者のかたには、まずご自分が高校受験をされた時と今とでは、公立高校の入試が大きく変わっていることを知っておいていただきたいと思います。今回は、どんな点が変わったのかについてお話ししましょう。


 以前、どの都道府県でも公立高校の普通科には、通学区域の指定があったのですが、学校選択の自由化ということで、2003年度以降、急速に撤廃ないし緩和(学区の数を減らすことで選択できる学校数を増やす)され始めています。すでに撤廃されたところは以下の22都県です。


青森県、秋田県、宮城県、茨城県、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、福井県、
山梨県、静岡県、滋賀県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、広島県、高知県、大分県、宮崎県


 この間、北海道は2005年度に55学区を25学区に統合、2009年度にはさらに19学区にしています。また、岩手県では学区数をほぼ半数に、長野県は3分の1にしています。
 近年中に動きがあるのが、
・大阪府 2014年度から学区を撤廃
・山口県 2015年度以降学区を撤廃
 などです。
 このように、学区が撤廃ないし緩和されたところでは、保護者のかたが受けられなかった高校を、お子さまは受けられるようになっているのです。ですから、これからは広い範囲の高校を受験対象として意識してください。

 ただこうなると、交通の便のよい学校、大学進学実績の高い特定の学校に人気が集まるようになってきて、進学校ほど倍率も高く、厳しい入試がめだつようになってきています。
また、首都圏、中部圏、関西圏など大都市部では新しい路線の開通で、これまでなら通えなかった高校に通えるようになるということがしばしば起こります。

 たとえば東京では、2013年3月16日に東急東横線と地下鉄副都心線の相互直通運転が始まり、地下鉄副都心線とつながっていた西武池袋線、東武東上線とも直通運転が始まりました。そのため、神奈川県横浜市の元町中華街駅から埼玉県の川越駅まで1本で行けるようになりました。

 今春の入試で、東京北部に位置する池袋駅周辺の学校(これまでは東京を除くと埼玉からの通学生が多数だった)の入学者が、埼玉と神奈川が同数になったというのも、こうした交通機関の発達によるものと考えられます。

 やはり3月中旬、私は講演で京都、神戸に行ったのですが、神戸から新大阪に向かうつもりで乗った電車の行き先が、まったく知らない駅名でした。京都・滋賀方向だったらほとんど知っていたので、不安になって席を立って車内の路線図を見に行きました。すると、その駅は京都府と奈良県の境に近い、木津に向かう路線の途中駅でした。尼崎で慌てて降り、次の電車に乗り換えました。その電車の行き先がなんと福井県の敦賀。久しぶりに関西に行ったら、やはり交通事情は驚くほど変わっていたのです。

 このように、通学できる範囲が飛躍的に拡大していることも考慮に入れてください。


 


プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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