受験生活のスタートにあたって 入試を一本化する動きも[高校受験]

推薦入試はそもそも、学力検査では測れない多様な学力の生徒を入学させる目的で始まりました。ところが、推薦入試でも一般入試でも実際に合格する生徒は変わらない、ということが問題になりました。それでは推薦入試を行う意味がないということです。


 推薦入試の減少を受けて、入試自体を1回にする県も出てきています。埼玉県、静岡県、和歌山県ではすでに一本化され、神奈川県、茨城県、岐阜県も今年度から1回になりました。

 こうした変化の背景には、中学校の3学期の授業をきちんと成立させ、全員に学力検査を課すことで、しっかり勉強させる方向に変えていこうという意向があるのです。

 一本化によって、どう変わったのか、神奈川県を例に取ってみましょう。

●神奈川県の主な変更点


〇選抜機会の一本化
 ・2012年度までは前期選抜と後期選抜の2回だったものが1回に

〇学力検査の共通化~消える学校独自問題
 ・学力向上進学重点校を中心に11校で導入されていた学校独自問題はなくなり、
  全校共通問題に。

〇調査書+学力検査+面接と特色検査で選抜へ
 ・調査書・学力検査・面接の項目を100点満点に換算した後、項目ごとに各校が
  2倍から6倍し合計点1000点満点で合計数値を算出する。
  項目の倍率は各校で異なる。
 ・面接も点数化。出願時には「面接シート」を提出。


 上記の「調査書・学力検査・面接の項目を100点満点に換算した後、項目ごとに各校が2倍から6倍し合計点1000点満点で合計数値を算出する。項目の倍率は各校で異なる。」は、わかりにくいと思いますので、実例を示してお話ししましょう。

 神奈川県内きっての進学校である湘南高校は、調査書3割・学力検査5割・面接2割という比率にしたので、調査書が300点、学力検査が500点、面接が200点の1000点満点になります。

 一方、湘南高校と競う存在である横浜翠嵐高校は、調査書2割・学力検査6割・面接2割という比率にしたので、調査書が200点、学力検査が600点、面接が200点の1000点満点になります。進学校でもこのように調査書の比重が異なっています。

 その他の普通科高校でも、調査書2割が横浜翠嵐高校を含め3校、調査書3割が湘南高校を含め29校、調査書4割が最も校数が多く49校、調査書5割が17校、調査書6割が4校とバラバラです。

 保護者のかたの時代は、公立高校の入試といえば、どこを受けても条件は同じでした。調査書と学力検査の比重、入試教科数、入試問題、配点……すべてが同一でした。どこも同じものさしで選抜が行われるごくシンプルな世界だったのです。

 それがこのように高校によって、選抜の方法が異なるようになったということが近年の大きな傾向です。高校によってこれほど違うということは、秋以降いざ受験校を決める時に大きく影響しますので、ぜひ知っておいてください。


 


プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

子育て・教育Q&A