国語で文章題が出ると、問題の前後だけしか読みません [中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す保護者のかたから寄せられた疑問に、実践的なアドバイスをします。
【質問】
文章を読むのが苦手です。そのせいか、問題文の全体を読みません。傍線部など、問題に取り上げられている部分の前後だけ読んで、解答しようとしているようで困っています。
相談者:小6女子(大ざっぱ・わんぱくなタイプ)のお母さま
【回答】
全部読んでから問題を読む方法に早く変える
■なぜ全体を読まないのか?
なぜ全体を読まないのでしょう? 読むのが面倒くさいからでしょうか? 恐らく、そうではないでしょう。問題文を全部読んでいると、時間内に答案を仕上げることができないからだと思います。それは、(1) 文章を読むのが遅い、または、(2) 問題(特に記述問題)を解くのが遅い、のどちらかであろうと思われます。
文章を読むのが遅いかどうかは、同じ問題文を一緒に読んでみればわかります。同時に読み始めて、お子さんがかなり遅れて読み終わるようであれば、遅いということになります。ただし、保護者のかたは、少しゆっくり読んであげましょう。また、文章の内容を理解できたかどうかを確かめるために、お子さまが読み終えたら、どのようなことが書いてあったか確認しましょう。
問題を解くのが遅いかどうかは、解いているところを見ていればわかります。特に、記述問題で書き始めるのに時間がかかったり、途中で書いたり・消したりを繰り返しているかどうかがチェックポイントになります。
原因がわかったらその対策ですが、その前に、問題文を全部読んでから問題を解くべきことをお子さまに納得させる必要があります。
■なぜ問題の前後だけ読んで正解が得られるのか?
ところで、なぜ問題の前後を読むだけで正解を得られることがあるのでしょうか? それは、文章の構造に原因があります。筆者は文章を記す時、ポイントになる言葉Aや事柄Aを書いたら、読者がそれを忘れないうちにその説明をします。あるいは、必要に応じて理由や原因を書き添えるでしょう。そして、その言葉Aや事柄Aに傍線がひかれ、「どういうことですか」とか「なぜですか」という問題にすると、先ほどの説明や理由・原因が答えになるのです。だから、傍線部の近くに(傍線部の前も含む)答えがあることが多いのです。
こうした問題は構造が簡単なので、多くは低学年から中学年にかけて出題されます。そして、このような問題を解いてきた子どもたちは、今までの経験(成功体験?)から全文をしっかり読まなくも傍線部の前後を読めば正解が得られると思うようになるのです。
■このままでは合格点が厳しいことを納得させる
このままで済めば国語も楽なのですが、やはり現実は厳しい。高学年になると、特に入試問題では、傍線部の近くに答えがないような問題を多く作ってきます。場合によっては、次のページに答えがあることもあります。抜き出し問題でも同じことがいえますし、接続語の穴あき問題でも、穴の前後の文だけではなく段落単位で比べることが必要な場合も出てきます。こうした事実を示して、「問題の前後だけ読んで答えていては、合格点はとれない」ということを納得させる必要があるでしょう。
6年生ともなれば、小学生といえども自分なりの考えを持っていると思います。理由も説明せずにお子さまのやり方を非難しても、反発するだけでしょう。納得させるには、理由と共に具体例を示すのが最適です。解答を確認しながら、正解がどのくらい離れていたか、あるいは全文を読まなければわからなかったとを示すことです。もちろん、なかには傍線のそばに答えがある問題もあります。簡単な問題です。しかし、それだけ正解しても、合格はできないということは明白でしょう。
■慣れるまで点数が悪くなることもある
問題文を全部読まざるを得ないことが納得できたら、問題文を先に読んでから問題を解くようにすると同時に、問題文を速く読む練習や記述問題などを効率的に仕上げる練習をさせましょう。問題文を読むのが遅い子どもは、読書の習慣がなくて文字に親しんでこなかったことが多いようです。もちろん、お子さまの6年生という学年を考えると読書をする時間はないと思いますので、やさしめの入試問題を読んでいくことで、文章に慣れていくことをおすすめします。なお、慣れるために問題文を読む場合は、問題はやらずに、読んで内容を確認するだけでよいでしょう。
それからもう一つ。問題の解き方を変えると、一時的に成績が落ちる場合があります。今までは問題の前後を読んで答えていたのが、問題文全部を読むために答える時間がなくなり、点数が前より悪くなるということです。慣れるまでに、3か月程度はかかる可能性があります。点数が悪くなっても少し我慢して、問題文を全部読んでから問題を解くという方法に慣れましょう。問題文の前後をだけ読んで解く方法では、これから点数が悪くなることはあっても良くなることはまずないのですから、極力早くやり方を変える必要があると思います。
(筆者:小泉浩明)