受験生・保護者が求める教育[中学受験]
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以前から当研究所では、学校を選ぶときは「学校の偏差値」だけではなく「我が子に合った学校」で選ぶべきではないかという提言をしてきた。その提言が浸透してきたせいか、3年ほど前のことだったと思うが、大手中学受験塾の幹部の先生から、「このごろ、学校の偏差値や大学合格実績だけではなく、『我が子に合った学校』かどうかで志望校選択を行う受験生・保護者が増えてきた」ということを聞いた。
しかし、「我が子に合った学校」と言っても、偏差値がせいぜい2~3程度の範囲内で学校を選ぶわけで、当時は偏差値の差が5以上となると間違いなく偏差値の高いほうの学校を選定していた。ところが、最近は偏差値が5以上高い学校に合格していても、その学校を蹴って、志望順位の高い学校に入学する生徒が少しずつ増えているような事例を目にすることも出てきた。
そのことを裏付ける話として、最近、教育関連の出版社のかたからも、「中堅校の中には、より高い偏差値の上位校に合格できる学力の生徒が、あえて第1志望とするような特別な中堅校が出てきつつあるのではないかという感覚がある」という話を聞いた。その原因は、まだ明確ではないようだが、中高一貫校に進学させる保護者の価値観に変化が出てきたことは確かだろう。
確かに、これまでの中高一貫校の人気は、少なくとも中堅校以上では、大学合格実績に比例しており、受験生・保護者としても同じ大学を目指すなら、少しでも偏差値の高い中高一貫校に進学した方が有利という考え方であったと思う。しかし現在、大学は目指すが、大学合格実績よりも、中高一貫校の特色である教育方針や校風によって子どもに身につけさせたいことを重視する保護者が一部に出てきているのではないか。つまり、志望校選定を行う時、一部の受験生・保護者は、ほぼ大学合格実績で決まる学校の偏差値に左右されないということになる。
最近までは、出身大学が有名ブランドであれば、豊かな将来が保障されてきた。しかし、現在は、出身大学だけではなく、人柄や能力などの実力が求められる社会になってきており、それが、このような現象の原因となっているのではないだろうか。社会の求める人材が変化し始めているなかで、変化に敏感な受験生・保護者は、社会の要求を満たす能力を身につけることができる中高一貫校を探しだし、進学しているのではないだろうか。そのように考えれば、今は珍しく受け取られる「自分の偏差値よりも低い偏差値の学校に進学する」ことが、不思議ではないことになりそうだ。
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