なぜ「コース制」をつくるのか?[「コース制」の学校、どう選ぶ? 第1回]
私立高校では、「コース制」をとっている学校のほうが多いほど「コース制」が広がっています。1つの高校の中でも「コース」によって、合格基準にものすごく開きがあるので、どの学校を受けるかと同じくらい、どの「コース」を受けるかが重要になってきています。
そこで今回は「コース制」の学校の受験について考えてみましょう。
「コース制」を設置するようになった背景
「コース制」は、大阪の女子校・四天王寺が「英数コース」をつくったのが最初といわれています。その後、同じく大阪の女子校・大谷が「医進(医学部進学)コース」という名称のコースを設置したことで、現在見られるような多種多様な名称のコースが存在するようになりました。首都圏でも、「東大クラス選抜」「スーパー特進」「難関大学進学コース」「アドバンストコース」といった名称で、急速に広がってきています。 このところ、学校評価の物差しとして「大学合格実績」を見るケースが多くなっています。前年の大学合格実績がストレートに翌年の応募者数に影響するとなれば、学校側も大学合格実績を上げることに一生懸命にならざるをえません。学校が「国公立・早慶上智(※1)20%以上」「MARCH(※2)50%以上」といったマニフェストを掲げるようになったのもそうした背景があります。
大学合格実績を高めるには、何より入学してくる生徒の学力が高いことが必要です。といってもいきなり全員が高いレベルになることは不可能です。そこで、少数でも学力の高い子に入学してほしい…それがコースを設置する狙いです。一般コース(名称は「総合コース」などさまざま)とは別枠の少人数の募集をすることで、偏差値表の高いところに校名が載るようにし、そうすることで学力が高い層に受験してもらおうというわけです。
※1 早慶上智は早稲田大学・慶應義塾大学・上智大学のこと。
※2 MARCHは明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学のこと。
コースによって偏差値が15も違う学校も
今や「○○高校の偏差値いくつ?」という質問があまり意味をなさなくなってきました。同じ高校でも、特待生や特進、選抜といったコースと総合コースとでは合格基準に大きな開きが生じているからです。都心の高校の中では、コースによって合格偏差値が15くらい違う私立高校は珍しくありません。
公立高校が学校による特色付けをハッキリし出している一方で、私立高校は1つの学校が学力幅の広い生徒を受け入れるようになっているのです。
多くの学校が取り入れている特進コースでも、バラエティーに富んだコース名が見られます。国公立大学進学を目指すコースや医歯薬・看護医療系を目指すコース、留学を前提とするコースなど、最近では特進コースの中に更に選抜を設ける特進選抜コースまであります。(「エリート選抜東大コース」などという3段重ねのネーミングをする学校もあるくらいです。)
当然、どのコースを受けるかで全く合格の可能性は違ってきます。ですから、高校名だけでなく、コースにまで踏み込んで受験校を決めることが必要なわけです。