夏休みの学習と子どもの主体性[中学受験]

受験生にとって、またそれ以上に保護者にとって夏休みは貴重な時間だ。その中で最も大切なことは、子どもが主体的に学習することだ。まだ小学生であることから主体的な学習を行える子どもは少ない。だからこそ、それができれば、ほかの生徒よりも優位に中学受験を行うことができる。それだけではなく、子どもの将来にわたって役立つ主体性という能力を体験し、体験を積み重ねることでこれを身につけることができる。

好きなことを進んで行うのは当たり前のことで、それを主体性があると言っても本人を勇気づけられない。嫌いなことでも積極的に取り組むことができるときに、「主体性がある」といって勇気づけられる。学習が嫌いでも主体的に取り組むのは、向上心や責任感が働くからだ。主体性を持たせるためには、子ども自身に決定させることで責任感や向上心を抱かせることがポイントとなる。

たとえば、第1志望校を受験生本人に決めさせるご家庭が多い。これは、第1志望校を受験生本人に決めさせることで、責任感と向上心を抱かせ、学習に主体性を持たせようとしているのだ。自分の決めた第1志望校には責任がある。学力が思ったほど伸びなくとも、簡単には志望校のランクを落とさない。その思いが自分で決めたということから起因する責任感だろう。そして、第1志望校に合格するために今の自分よりも高い学力が必要ならば、学力を伸ばしたいと思う向上心が生まれるはずだ。それが学習につながることになる。

中学受験の目的は、「第1志望校の合格」だが、それを可能にするためには学力を伸ばすことが、当面の目的となる。その目的が達成されたかどうかがわかる具体的な目標が必要となる。一般的には、模擬試験の成績が第1志望校の80%偏差値になることが目標だ。しかし、当面は身近な50%偏差値が目標でよい。夏休みの学習においても、各科目・分野単元についての学習量や学習時間などのさらに細かな目標を受験生本人が設置する。周囲はその助言をする。進度が思ったほど進まなくとも、簡単には目標を下げるわけにはいかない。明日は上達して目標を上回りたいと思う。その向上心を認めて励ましていけば、次第に主体的に学習に取り組むようになる。

ただしこれに代えて、主体的に学習して「学習量」の目標を達成する体験でもよい。そのほうが簡単で、しかも結果がすぐわかる利点がある。それは、1日単位でも良いし、1週間単位でも良いので学習量や時間を目標として、細かく分けて設定する。そのほうが達成するチャンスが多くなるので成功体験も増える。目標を達成したことで、子どもは次の目標にチャレンジする気持ちが芽生えやすくなる。つまり、達成感をたくさん体験したことで、主体性を身につけることも可能になる。夏休みは、学習で主体性を育む絶好の時期だ。成功体験をできるだけ多く積み重ねてほしい。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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