夏休みは、家庭学習を充実させよう [中学受験]

塾の夏期講習は、節電対策のため、例年よりも短くなる可能性がある。それだけではなく、毎日違う時間帯で授業が行われたり、講習期間中にイレギュラーにお休みになったりすることも考えられる。塾においては学習しにくい環境であることは確かだ。夏休みは40日と長く、塾の学習だけではなく家庭学習にも力を入れることができる。これまでなかなか手が回らなかった基礎学力の向上や不得意科目・分野の克服を行うことや、理解が不十分なところを問題演習で定着させることや、受験学年でなければ読書を行うことができる大きなチャンスとなる。

万が一、停電があるとしたら今年は家庭学習のウエートが例年よりも高くなるだろう。夏休みは期間が長いこともあって、「塾に行かなければ勉強できない」という生徒も多いのだが、大震災で被災した同学年の子どもたちのことを思えばそんなことも言っていられない。もちろん、自宅でも停電・節電はあるかもしれないが、停電の日程を子どもの希望で変えられるわけではないので、与えられた環境で勉強するしかない。好きな時に勉強し、好きな時に休めるのが家庭学習の良いところでもあるが、どうしても「いつでも勉強したいときに勉強できる」ことから、集中力を維持できないことが難点であった。停電・節電では、決められた時間帯しか勉強ができなくなることが、逆に集中して勉強できる大きなメリットとなるだろう。

確かに、毎日の学習計画の管理は大変だが、これはスケジューリングの練習となる。いかに快適に学習するかはスケジューリングによるところが大きく、これもメリットと考えることができる。夏休みは長く、毎日同じ学習計画で勉強していると飽きてしまうためか、勉強したくないという気持ちになってスランプに陥りやすいデメリットがある。毎日の学習計画を変えるのは混乱の原因ともなるので毎日の学習計画を停電・節電のスケジュールに合わせたいくつかのパターンで作り、一週間単位で生活のリズムがあるスケジュールを作成できれば自分が工夫をしたことで気持ちも前向きになると思う。夏休みの長丁場を乗り切ることが夏休みの課題の一つだったが、停電・節電が夏休みの長丁場を乗り切る妙案となるのは逆転の発想だ。

そもそも夏休みの家庭学習は、暗記や計算が中心となる基礎学力の向上や理解から、定着に必要となる問題演習など、時間をかけて同じことを繰り返すような学習が多く、すぐに飽きてしまう。そうであればなおさらスケジュールや毎日の学習計画は自分で工夫できるから楽しいと思えるように親はアドバイスしてあげるべきだろう。今回の停電・節電は、どんな状況でも、与えられるのを待つのではなく、自分自身の知恵とやる気で切り開くことができることを経験させる良い機会だ。親は、問題を定義し、問題の原因を解消する方法に子どもがたどりつけるようにアドバイスしてあげてほしい。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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