国債をきっかけに国の財政について知る

国と地方の借金の残高が2012年度末には1000兆円を超える見通しとなることが報道され、大きな問題となっています。政府が税金を元に国民の生活に関するさまざまなサービスなどを行う活動を指す「財政」は、社会に大きな影響を与える大切な事柄で、中学入試の社会でも出題されることが多い半面、お子さまにとっては実感しづらく、理解が難しい分野でもあります。そこで今回は、国債を入り口に、消費税引き上げなどが大きな問題としてクローズアップされている財政のしくみについて解説しましょう。



国債をきっかけに国の財政について知る


クイズde基礎知識

国債とは?/新しい国債はどれ?/国債の発行額は?/歳入のうち国債などが占める割合は?/歳出のうち3つの費用を割合の大きい順番に並べると?


時事問題を学ぶきっかけになる題材をクイズ形式でご紹介します。基本情報の整理に、親子で時事問題について話題にするきっかけに、入試・適性検査対策に、お役立てください。

Q1

国債とは何のこと?


A.政府の収入のこと
B.政府の支出のこと
C.政府の借金のこと


A1 正解は 「C.政府の借金のこと」 です。


「国債」とは、政府が債券を発行して借金をすること、もしくは借入証書として発行される債券のことをいいます。地方自治体が債権を発行して借金すること、もしくは借入証書として発行される債権のことは「地方債」といい、国債と地方債をまとめて「公債」といいます。

政府や地方公共団体は、税金によって国民や企業から収入を得て、そのお金を使って福祉や教育などの公共サービスを行ったり、道路や空港の建設などの公共事業を行ったりしています。こうしたお金の出し入れを財政といい、政府の財政は財務省が担当しています。

Aの政府の収入を「歳入」といい、Bの政府の支出を「歳出」といいます。財務省は年度が始まる前に、その年の歳入や歳出の計画を立てます。これを「予算」といいます。年度が終わったあとなどには、実際の歳入や歳出の状況を調べます。これを「決算」といいます。予算も決算も、国会に提出して「議決」を得なければなりません。

歳入は、税金でまかなうのが基本です。しかし、歳出が多く、税金だけでは足りない場合もあります。そこで国債を発行し、必要なお金をまかなうのです。

国債は、銀行や証券会社を通して、企業や個人が買います。つまり、政府が企業や個人に借金をしているようなものです。何年か後に期限がくれば、企業や個人が買った時の金額(元金)に何パーセントか上乗せする金額(利子)がついた値段で政府が買い取り、借金を返さなければなりません。

国債は海外の企業や個人が買う場合もありますが、日本の国債を買っているのはほとんどが日本の企業や個人ですから、お金のほとんどは日本国内で回っていることになります。




Q2

2011年12月から募集が始まった新しい国債は?


A.建設国債
B.特例国債
C.復興国債


A2 正解は 「C.復興国債」 です。

国債は、おもに、Aの「建設国債」とBの「特例国債」とに分けられます。建設国債とは、道路や空港などをつくる目的のために発行される国債のことです。特例国債とは税金でまかなうべきお金が足りないために発行される国債のことで、特例国債のことを「赤字国債」ともいいます。

この2種類以外に、2011年12月から新しく募集が始まったのが「復興国債」です。これは、東日本大震災の復興財源を目的としたもので、企業などの団体ではなく個人を対象に発行されます。2012年3月からは、復興国債とは利子などの条件が異なる「復興応援国債」の募集も始まっています。

国民の関心を高め、復興の力とするために、復興国債を購入した人全員に、財務大臣からの感謝状が贈呈されます。また、復興応援国債では、全員への感謝状に加え、一定額以上購入した人には、東日本大震災復興事業記念貨幣も贈呈されます。



Q3

2011年度予算(4次補正後)で、新規国債の発行額は?


A.約7兆円
B.約44兆円
C.約55兆円


A3 正解は 「C.約55兆円」 です。




「日本の財政関係資料—平成23年度3次補正後予算 補足資料—」財務省 より作成


国債の新規発行額は、1990年度にはAの約7兆円でした。しかし、1990年以降の景気低迷に加え、リーマンショックと呼ばれる世界的な金融危機などもあって税金による収入が減り、国債の新規発行額が増える傾向にあります。

予算は、年度の初めに成立した後、実際のお金の使われ方などに応じて、年度内に補正を行います。通常、補正が行われるのは2回(2次補正)までですが、2011年度は、3月に発生した東日本大震災からの復興のための費用が必要となり、復興国債や復興応援国債が発行されたことなどから、通常よりも多い4回(4次補正)まで行われ、その結果、国債の新規発行額は約55兆円となりました。

たくさんの国債の新規発行が何年も続いた結果、積み重なった国債の残高は2011年度末で約675兆円に達し、2012年度末の見込みでは、国債と地方債を合わせた公債の残高は1000兆円を超えるという予測が立てられています。



Q4

2011年度予算で、歳入のうち国債などの借金が占める割合は?


A.約1割
B.約2割
C.約5割


A4 正解は 「C.約5割」 です。



2011年度の予算総額は、約106兆円でした。歳入について内訳を見ると、国債による収入が約55兆円で約5割を占めています。税金による収入は4割程度に過ぎません。本来、歳入をまかなう柱となるべき税金による収入を、将来返さなければならない借金である国債による収入が上回っているのです。



Q5

2011年度予算で、歳出のうち社会保障関係費、公共事業関係費、国債費が占める割合を大きい順番に並べると?


A.国債費>社会保障関係費>公共事業関係費
B.社会保障関係費>国債費>公共事業関係費
C.社会保障関係費>公共事業関係費>国債費


A5 正解は 「B.社会保障関係費>国債費>公共事業関係費」 です。



社会保障費は、年金の支払いや医療費の負担など行うために、公共事業関係費は道路や橋などを作るために、国債費は、国債の返済に充てるために、それぞれ使われる費用です。

国債は企業や国民に対する政府の借金ですから、期限がくれば返さなければなりません。国債の発行額が増えれば、返済のための費用(国債費)も増えます。2011年度予算では国債費が約21兆円と歳出の約20%に達し、社会保障関係費の約27%に迫り、公共事業関係費の約7%よりもはるかに多くなっています。

老齢人口の増加に伴い、社会保障関係費は毎年伸びています。こうした問題に対応するために国債費は増加しているのです。しかし、歳出でも歳入でも国債に関する費用が多くを占める現状は、借金を返すために新たな借金をしているようなものです。そんな異常事態を改めるため、国家予算の無駄遣いをなくして歳出を減らそうと、小泉内閣以降の自民党政権は公共事業関係費や防衛費の削減に努め、民主党政権になっても見直しが進められています。一方で、消費税の引き上げなど、国債以外の歳入を増やす政策も検討されています。



子育て・教育Q&A