子どもが積極的に勉強するために必要なこと [中学受験]

中学入試のスタート時点では自主的に勉強する小学生はあまり多くないと思う。子どもは、親や塾の先生に言われるので仕方なく勉強しているのが実状で、「勉強なんかしたくない」というのが本音であろう。親は、「放置しておけば遊んでしまい、自分から進んで勉強しょうとする子どもはいないだろう。だから、塾が必要になる」と考えていると思う。

受験勉強が楽しいものではないので、子どもとしては、できれば避けて通りたいし、周囲には中学受験をしない友達もいるだろう。そうなると、子どもとしては、「なぜ、自分は受験勉強をしなければならないのか?」という疑問を持つだろう。親は、その疑問に明確に答えてあげられなければ、子どもは安定した状態で受験に取り組むことができないのではないかと思うかもしれない。しかし、論理的に説得しようと試みても子どもがどこまで理解できるか疑問だ。親の話に子どもが相づちを打ったとしても、良い教育を受けて得をした経験がなければ納得はできないのではないか。

子どもでなくとも、経験したことがないことを理解させることは難しいので、中学受験の重要性を理解させることはあきらめたほうが良いかもしれない。そこで、中学受験を自分のこととして捉えさせることが考えられる。中学受験は、親がおぜん立てをしてあげなければできないので、「親子二人三脚の受験」と言われている。しかし、親が前面に出ることで、子どもにとっては中学受験が他人ごとになってしまうので、そうさせないようにすべきだ。中学受験を子どもに決断させるのも、志望校を子どもに決めさせるのも、塾を選ぶのも、選択肢を親が考えてあげ、何が大事なのかなどの基準を教えて、選択方法はアドバイスもするが、最後の決定権は子どもに委ねる。そのようなご家庭が増えている。

そうすることで、「勉強をしろ」というのではなく、「自分で決めたことはやり通せ」と言うことができるようになる。中学入試が、子どもにとって自分のことという意識を持たせなければ、自主的に勉強させることは難しい。もちろん、叱咤激励が多すぎても逆効果となろう。叱咤(しった)激励する回数を減らすべきだが、黙っているのも苦痛であろう。そんな時は、叱咤激励する代わりにほめてあげるとよい。ポイントは子どもの心理状態を読んで、子どものやる気を継続させてあげられるようにすることだ。

受験勉強を始めてしばらくすると、それほど受験勉強を嫌がっているように見えない子どもが増えてくることがわかる。継続的に、しかも一生懸命に取り組むと、なんでもおもしろくなるものだ。受験勉強も例外ではないようだが、継続的に一生懸命に取り組むために最も重要なことは「自分から進んで取り組む」ことだ。親が勉強を強制することで、勉強嫌いな子どもにしてしまっては元も子もないのではないか。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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