難易度が下がるという入試予想で注意すべきこと[中学受験]

単に、受験者数が減少すれば中学入試全体が易しくなるということではない。前のコラムで述べたように来年の受験者数が大幅に減少するという予想に、受験生・保護者や学校の心理が働くこともありうる。偏差値の高い学校ではさらに受験者数が増え、難易度は変わらずとも倍率増で入りにくくなり、偏差値の低い学校では、さらに受験者数が減って難易度が下がる方向に拍車がかかることになる。予想が実態に影響を与えて、予想以上の状況になる可能性もあるのだ。

2011(平成23)年中学入試の受験者数前年対比予想では、難易度A校と難易度F校で既に大きな差がついている。しかし、受験者数前年対比に大きな差ができる要因は偏差値だけではなく、入試日、午前・午後入試、4教科・2教科、男子校・女子校・共学校、地域などの項目でも起こりうる。今年の2010(平成22)年中学入試でもそのような傾向はあったが、2011年中学入試で受験者数の減少幅が大きくなれば、それだけ格差も大きくなると予想される。

よく考えてみれば、第1志望をこの時期に変更する生徒は少ない。いま志望校を変えるのであれば別だが、そうでなければ、あまり志望校の難易度動向を気にしていても仕方がない。そうであれば、志望校の変更は2011年入試の受験者数前年対比がより明確になる11月、12月を待ってからでもよいだろう。また、11月、12月になれば学力の変動も落ち着いてくるので、併願校の選定・変更だけではなく、第1志望校に学力が届かず、やむなく第1志望を変える場合もあると思うので、やはり、その時点で志望校の難易度の動向を確認すればよい。

2011年入試の受験者数が減少すれば全体の難易度は下がるが、我が子の志望校の難易度が下がるかどうかはわからない。もちろん四谷大塚などの大手のテストで、志望校前年対比を調べればある程度予測はできるが、大手のテストで志望校前年対比が低くとも、翌年の入試で受験者数が増加することもある。つまり、志願者数情報は他の受験生も知っている可能性が高く、前年対比が低ければ受験者数が増える需供バランスが取れるようになっていると思える。少しでも有利に受験したいのであれば、複数の学校に願書を出して、志願者数を確認しながら、前年対比で志願者数が少ない有利な学校を受験するしかない。

大手のテストで志願者数が減ると、受験生・保護者も志望校の受験者数が減少して難易度が下がることを期待するようになる。受験が易しくなることに期待を持つ気持ちはわかるが、その結果、勉強に力が入らなくなるのは問題だ。勉強をしなくとも合格できるのではないかと思えば、積極的に勉強しなくなるのは人の心理だ。つまり、志望校の難易度が下がることは、我が子が受験勉強で手を抜くことにもつながるので、喜んでばかりはいられない。易しくなると思うと誰でも油断をするが、競争相手よりも勉強をしなければ、合格できる学校にも不合格になってしまう。中学受験はそれほど易しくはない。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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