難易度が下がる予想時の学習方法と保護者の役割[中学受験]

今回のように受験者数が大幅に減少すると志望校の難易度が下がり、浮き足立つ受験生が増えることになるだろう。全体の受験者数が減るので確実に全体の難易度が下がることはわかっていても、どこにその影響が出るのかがわからない。大手模試の志願者数を見ると、その影響で難易度が上がる入試も出そうで、先が見えない不安が受験生・保護者にはあると思う。特に年が押し迫って、目の前に入試がぶら下がってくるころになると、志望校の難易度がどうなるか気にならない受験生のほうが少なくなるだろう。

そうなる前に対処策を考えておくべきだ。例年になく、過去問演習はおすすめの学習法となるかもしれない。過去演習は2種類の弱点克服法があるが、おすすめなのはケアレスミスなどをなくして得点力を付けていく「答案作成テクニック」を身に付ける方法だ。
このような「答案作成テクニック」を「スコアメーキング」と呼ぶが、「スコアメーキング」には「ケアレスミスの改善」のほかに「時間配分」「ランダム問題の慣れ(出題分野・単元がランダムな入試問題は、見たとたんに解法が浮かぶように問題慣れすることでスピードと確実性を向上させることが可能)」があり、現状の学力で得点率を上げるテクニックだ。志望校を変更すれば出題傾向が変わるが、「スコアメーキング」は出題傾向にはほとんど影響されないので、競争相手の受験生に比べて有利になるという論理だ。
また、この学習法は誰でも一定期間まじめに取り組めば、着実に得点力を伸ばす効果がある。周囲が浮き足立っているなかで、着実に得点力を付ける学習を毎日規則的に行うことができるので、我が子を精神的に安定させる効果が期待できる。この学習をペースメーカーとして、他の学習も規則的に行うことができるので、周囲に惑わされずに学習を進めることができるようになる。ただし、2か月以上は続けないと身に付かないので、1月から開始したのでは間に合わないので注意してほしい。

こういうときこそ落ち着いて何が大事かを考えて行動してもらいたい。お子さんが落ち着いて学習できるようにすることが、親が我が子にしてあげなければならないことのひとつだ。お子さんが不安定なときほど、規則正しい生活を土台にした着実な学習が必要で、入試直前の1月もそのような状況があると思う。
まずは健康だ。そのための食事や睡眠を管理してあげればよい。そのような状況が少し早く来たと考えれば、何もあわてることはない。親子で不安に陥っていたのでは、受験する前に戦わずに負けることにもなるのだ。
また、難易度が下がることは確かだが、同じ偏差値の学校でも下がる学校もあれば上がる学校もあることを子どもに話して落ち着かせることだ。それでもだめならば、「どんなことがあっても第1志望校は変えない」と保護者が我が子に宣言してしまえばよい。まずは、お子さんが落ち着いて学習できる環境を提供してあげることだ。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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