難易度が下がるという入試予想と仕上げの学習方法[中学受験]

10月になると、早い生徒は受験勉強の仕上げとして、過去問演習を行う。1月に入ってからでは、この学習法で成果を出すのに時間がかかるため、遅すぎるスタートとなる。一般的には、11月ごろから通常の学習と並行して行うと入試のときに効果が期待できる。過去問演習については昨年も一昨年もこの時期に詳しく述べたので、過去のコラムを参照していただくと良いと思うが、少しだけ概要をお話ししよう。

志望校の過去問を実際に解いてみると同じような間違いをすることに気が付くと思う。それはお子さんの弱点で、志望校合格のために必要な学力が身に付いていない部分があるか、ケアレスミスなどを克服できていないかを意味する。
過去問演習で、どれだけ得点できるようになれば志望校に合格できるかの目標を設定し、その目標を達成するために、出題頻度が高くしかも自分の弱点となっている不得意な教科・分野・単元・項目を集中的に学習する必要があることを受験生本人が自覚し、学習して得点できるようにする。さらに、もう一つの弱点となりうるケアレスミスなどをなくして得点力をつける「答案作成テクニック」を身に付けることで最後の伸びを期待する学習法だ。
この学習法で、毎年、多くの生徒が模試の終了する1月以降、急速に学力を伸ばして多少無理かと思われた第1志望校に合格している。

ここでお話ししたいのは、過去問演習をするにしても、第1志望校の難易度が下がり第1志望校を変更するかもしれないなかでどのように過去問演習を行えばよいかということだ。志望校を変更すれば出題傾向は変わるので、身に付けるべき学力は異なる場合がある。過去問演習の真髄は、第1志望校の過去問との真剣勝負なのだ。第1志望の過去問だから意味があり、生徒も真剣に取り組めるのであって、単なる受験問題では本気にはなれず、効果は半減するだろう。
一つの解決策としては最後まで第1志望校を変えず、第1志望校のほかにチャレンジ校を作ることだ。チャレンジ校は、文字通り受験生の偏差値よりも高い学校で、教育方針や校風も我が子に合っているが、これまでは偏差値が高くて諦めていた学校が多いだろう。
問題があるとすれば、第1志望校とチャレンジ校の出題傾向が大幅に異なる場合だ。その場合は虻蜂(あぶはち)取らずにならないようにチャレンジ校は諦めたほうがよいかもしれないが、実際にチャレンジ校の過去問演習を行ってみれば、どうすべきかがわかる。意外に、チャレンジ校のほうの出題傾向が合っていて得点率が高かったり、出題傾向が大きく違っても、その部分がお子さんにとっては得意分野・単元だったりすることもある。

第1志望校とチャレンジ校が、同じ入試日である場合はどうすべきか。確かに、これは解決しにくい問題だが、過去問演習で弱点が解消できるようになれば、志望校の選択肢が増えることになる。ポイントは、第1志望校を動かさず、過去問演習を開始することだ。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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