難易度に影響する隔年現象[中学受験]
今年の難関校・上位校の受験者数は、それほど下がっていないと書いたが、それは全体的な話で、難関校・上位校の中には受験者数が大幅に増減している学校もある。そのような学校には大学受験で合格実績が増減した学校のように明確な理由のある学校もあるが、なぜ受験者数が増減したかわからない学校も多い。この何年かの受験者数・受験倍率をさかのぼって分析すると、増加した翌年は減少する、またはその逆の隔年現象になっている学校が多く、特に偏差値の高い学校ほど頻発して起きていることがわかった。受験者数・受験倍率が増減した理由がわからなかった学校の多くが、隔年現象で増減していたのだ。
ここで、隔年現象が起こるメカニズムを考えてみよう。
前年に受験者数・倍率が急に減少した学校は、翌年は塾の先生もすすめやすく、保護者としても「お得感がある」ので志願者が集まりやすくなって、受験者数・倍率が増加することになり、隔年現象が起こりやすい。
逆に、前年に受験者数・倍率が急に上がった学校は、保護者だけでなく塾の先生からも敬遠されてしまい、志願者が集まりにくくなり、受験者数・倍率が減少し、隔年現象が起こりやすい。特に、2010(平成22)年入試では受験者数が全体として減少したことが原因ということもあると思うが、2009(同21)年入試に受験者数・倍率が急に上がった学校は、2010(平成22)年入試で減少している学校が多かった。このように、隔年現象は、受験生・保護者の「少しでも有利な受験を行いたい」という心理から起こることがわかる。
隔年現象が起こることは多くの人が知っている。論理では、前年、急に難しくなった学校を受験すれば競争倍率が低い有利な受験となることが、逆に、前年、急に易しくなった学校を受験すれば競争倍率が高く不利な受験となることが予想できるわけだ。
しかし、隔年現象が起きているということは、隔年現象があることを無視しているようにも思える。前年に受験者数・倍率が急に上がった学校を受験する勇気が湧かないというのはわかる。もしかすると翌年はさらに難しくなるかもしれないのだ。塾の先生も「隔年現象があるのはわかっていても、前年に受験者数・倍率が増加している学校はすすめにくい。つい敬遠してしまいます」と言っていたのを聞いたことがある。
同じ受験日に複数の学校に受験票を出す受験生がけっこうな割合でいる。学力が伸びている最中で、どちらの志望校を受験するかは、受験直前まで待って決めたいという受験生もいるとは思う。一方、「昨年は難易度が急増または急減しており、今年は隔年現象で逆の現象が起こる可能性が大きい。しかし実際にどうなるかはわからないので受験直前まで倍率を確認してから受験する学校を決めたい」という受験生も多いのだ。このように、複数願書を出すことで、難易度のリスクを減らし、お得な受験ができる可能性を高めることができる。