子どもが失敗した時にかける言葉[やる気を引き出すコーチング]

テストで思いどおりの点数がとれなかった、部活のレギュラーになれなかった、肝心な時に遅刻してしまった……など、子どもが思いどおりの結果を作れなかった時、どんな言葉かけをなさっていますか。

「なぜ、もっとがんばれなかったの?」
「なぜ、いつもできないの?」
否定形でつい原因を聞いてしまうこともあります。これによって強化されるのは、「あなたはがんばれない人」「あなたはいつもうまくいかない人」という自己暗示です。恐ろしいですよね。

「大丈夫、大丈夫!」
「次、がんばろう!」
と励ますことで、次の行動へ踏み出せる子どももいるでしょう。しかし、激しく落ち込んでいる時には、「そんなこと言われても……」という気持ちになってしまったという経験は誰しもあるのではないでしょうか。

では、コーチはこんな時、どうしているのでしょう?


■次は「どうしたいのか」を聞く

コーチMさんの娘さん(中2)が期末試験で思うような点数がとれず、落ち込んで帰ってきました。

「期末、ぜんぜんダメだった」
「そう。ダメだったんだ」(いったん「受容」)
「今回は失敗!!」
「そう。どこが失敗だと思ったの?」(叱るわけでもなく、励ますわけでもなく、質問をする)
「え? ……特に英語」
「そう。次はどんな勉強をすればよいかな?」
「って、お母さん、いつも聞くけど、それがわかったらもっと点数とれてたよ!!」
次の行動につながる質問をしたつもりが、かえって、娘さんの気分を害してしまいました。

Mさんは、質問を変えてみました。
「次は、どうしたいの?」
「もっとがんばりたい」
「そうだよね。どんなふうに勉強したい?」
「もっと、単語を覚えたほうがよいと思った。……書いて、壁に張っておこうかな」

Mさんは気付いたそうです。失敗した時、「なぜ、できなかったの?」と聞くよりは「次はどうすればよいかな?」という質問のほうがたしかに効果的だけれど、ともすれば、「ちゃんと考えておかないとダメでしょ。しっかり自分で考えて!」という指示的なメッセージにもなりかねないということを。
まず、「あなたはどうしたいの?」と本人の気持ちを聞いていくことで、自分で「どういう結果を作りたいのか」を考えるようになります。そうすると、自分で「どうすればよいのか」という次につながる具体的な行動を考え始められるのです。

■失敗の「原因」ではなく「成果」に焦点をあててみる

「発表会、ぜんぜんうまくできなかった」
「そう。できなかったんだ」(何よりもまず「受容」)
「もう、だめ! 私、できない」
「そう。この経験で得たことって何かな?」
「え? 得たこと?」
「うん、どんなことに気付いた?」
「緊張するとできない」
「うん、他にどんなことを学んだ?」
「練習は大事!」
「そうだね。この経験を次に活かすとしたら何ができるかな?」
「緊張する練習もしておくとよいかも!」
「へえー、おもしろいこと言うね。たとえば、どんな練習?」
「わかったよ! お母さん。ふだんからもっとたくさんの人の前で発表してるって思ってやったらよいんだよね。リハーサルもやればよいんだよね」
「そうだね! 大事なことを学んだ良い機会だったね!」(最後に「承認」)

コーチ側が、失敗は「良くないこと」「してはいけないもの」ととらえて、相手と接するのではなく、「失敗によって得た成果もある」「失敗は何よりの学びの機会」ととらえて接することによって、次の行動に違いが生まれるように思います。

とはいえ、どんな言葉かけよりもまず、失敗して落ち込んでいる気持ちをしっかりと受けとめてあげることが大前提です。「今回は、思いどおりの結果ではなかったけれど、次は結果を出す人」として接し続けることです。子どもたちは、ちゃんと次に活かせる「強さ」を持っています。


プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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