問題文を理解せず、的外れな解答を書く[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。



質問者
小6女子のお母さま


質問

説明文の読解が苦手です。問題文は読んでいるようですが速読に近いです。しかし内容を理解しているわけではなく、理由を求められる問題だと問題文を理解せず、的外れな解答を書き残します。また何度も同じ文章を読むことを嫌います。好きな本は『ミッケ!』シリーズ。楽しい本が好きです。


小泉先生のアドバイス

「答案が的外れ」でもすぐに「問題文が読めていない」とは結論付けない

「(記述問題などで)的外れな答案を書いてしまう」というのは、多くの受験生に共通の悩みだと思います。誤りを指摘されればすぐに気が付くのですが、試験になるとまた同じような間違いをくり返し、なかなか直りません。そんな場合は原因を突き止めて、根本からしっかり改善する必要があります。
原因としては以下の三つが考えられますが、お子さまによってつまずいているところが違ってきます。

まず一つ目ですが、「問題文が読めていない」ということです。説明的文章は抽象的な語句も多く、内容を理解することが難しい場合があります。お子さまの場合も、しつかり問題文を読めていない可能性はありますが、少々気になるのが「理由を求められる問題だと」というところです。
問いには、「なぜ問題(理由を問われる)」「こと問題(様子や状態を問われる)」「気持ち問題(気持ちを問われる)」などがあります。そのうちの「なぜ問題」の時だけが間違えるのであれば、必ずしも問題文が読めていないことだけが原因ではないかもしれません。

二つ目の原因としては、「問い」がしっかり読めていないことが考えられます。つまり、何が問われているかが明確になっていない場合です。この原因により的外れな答案を書いてしまうことは意外に多く、問いの「求めているもの」や「条件」にも線を引きながら読むことで、間違いを少なくすることができます。もしかしたら、「速く解かなくては……」という思いが、勘違いをさせてしまうのかもしれません。

三つ目の原因としては、答案を書いているうちに解答がぶれてくるケースです。問題文を読み、問いを読み、書くべきこともだいたい決まりました。しかしいざ書き出してみると、字数や言い回しに苦労し、ああでもない、こうでもないと書いたり消したり。やっと書き上げてみたものの、あとで読み返してみると、確かに問いに答えていない答案になっているのです。せっかくわかっているのに、良くて部分点、悪くすれば点数がもらえない可能性もあります。このようなことが原因で点数を落とすお子さまは、実力があるのに、なぜか点数が伸びない生徒に多く見られます。

答案がぶれないようにするには、問いに対する答えを正しく示す必要があります。特に答案が50字、100字と長くなると、内容がわかりづらくなります。そんな場合は前にも説明しましたが、「理由+相手+キーワード+文末」という記述の構造をしっかり守った答案を心がけると良いでしょう。
ここで「キーワード」とは、問いに対する答えの中心であり、「理由」は「キーワード」に対する理由になります。
たとえば、「なぜ農地がやせてしまったのか?」という問いがあったとします。そして模範解答は、「人口の増加に合わせて農業の生産性をあげようとしたため、化学肥料や農薬を大量に使うことで土の調和がこわれたから。」だったとします。ここでの「キーワード」は、「土の調和がこわれた」になります。そして、「人口の増加に合わせて……」という長い答案を書き出す時も、常にこの「キーワード」を目指して書き上げることを意識することです。
あるいは、書き上げた答案を見直す時も、「問い」と「キーワード」を比べ(「なぜ農地がやせた?」→「土の調和がこわれたから」)、問われていることに正しく答えているかを確認することが必要です。

十人十色と言いますが、生徒によってつまずいている箇所はさまざまです。その箇所を正しく理解し、適切な指導を行わないとなかなか成果は出ません。「答案が的外れ」でもすぐに「問題文が読めていない」とは結論付けないで、いろいろな原因を考えながら解決していくことが大切だと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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