【回答:日高のり子・森上教育研究所】志望校選び<その2>

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。


【回答:日高のり子・森上教育研究所】志望校選び<その2>

公立中学校との比較で子どもに合う学校を選ぶ際、基準にすることは?

偏差値を基準にした学校選びか、大学進学率を見据えた学校選びか

確かな教育理念をもって指導している学校は?

公立中学校との比較で子どもに合う学校を選ぶ際、基準にすることは?

地元の公立中学校と比較した場合、何を基準に子どもに合うかを選択していけばよいでしょうか。
【森上教育研究所】
私立中高一貫の難関校・上位校の在籍生の保護者アンケートで「わが子に合った学校」とはどのような学校かを、7つの選択肢から最も当てはまるもの1つを選んでもらったところ、
●わが子が苦労しても学力・資質の強みを伸ばし、弱みを改善してくれる学校(24%)
●わが子が無理せずにすむ、わが子の性格に近い校風の学校(15%)
●わが子の生き方・考え方を認めてくれる学校(15%)
●わが子が無理せずにすむ、わが子の資質が生かせる教育方針の学校(14%)
●わが子が苦労しても性格の長所を伸ばし、短所を改善してくれる学校(12%)
●わが子と同じタイプの生徒が多い学校(10%)
●わが子と家庭環境が同じ生徒が多い学校(10%)
という結果になりました。

各選択肢の割合を見ても大きな差はなく、保護者の理想とする「わが子に合った学校」が分散していることがわかります。つまり、「わが子に合った学校」といっても、保護者の価値観によって学校に求める教育が全く異なることになります。
まず、選択肢を参考にしながらあなたの理想の「わが子に合った学校」を考えます。そして、私立校の第一志望校と地元中学校が、あなたの理想の「わが子に合った学校」にどれだけ近いかを比較します。もちろん、私立校の第一志望校と地元中学校の学校説明会や文化祭に参加して、在校生・教職員・学校全体が自分自身の感覚と適合するかを確認することも必要です。

【日高のり子】
同じ地域の公立中学校でも、それぞれカラーがあるようです。
カリキュラムが同じ中で決める場合は、説明会での先生のお話(いじめなどに対する生徒の指導方針についてなど)に共感し、安心して子どもを任せられると保護者が感じて決める場合と、子ども自身が見学に行った際、どちらの雰囲気が好きかで選ぶ場合があるようです。なかには、いちばん近い公立中学校に入りたい部活がなく、電車を使って入りたい部活のある公立中学校にあえて通っていらっしゃるかたもおられます。

私立にしろ公立にしろ、子どもが通うことになる中学校に親が求める、教育方針、生活指導、学校内の雰囲気などの希望をまとめ、気になる学校を見学して、合う・合わないを判断されてはいかがでしょうか。

偏差値を基準にした学校選びか、大学進学率を見据えた学校選びか

子どもに合った学校がいいと聞きますが、やはり基準となるのは偏差値だと思います。偏差値の高い学校ほど生徒主導で、中堅の学校は先生の熱意があり手厚いというようなことを聞きました。大学進学率を見据えての学校選びがいいでしょうか。より偏差値の高い学校をねらえるならその選択がいいのでしょうか。
【森上教育研究所】
「子どもに合った学校がいいと聞きますが、やはり基準となるのは偏差値だと思います」に問題はありません。「子どもに合った学校」を受験させたいという保護者に話を聞くと、「同じくらいの偏差値であれば」という付帯条件がつくのです。お子さんの偏差値で手が届く学校の中から、「子どもに合った学校」を志望校として選定すればよいと思います。

「偏差値の高い学校ほど生徒主導で、中堅の学校は先生の熱意があり手厚いというようなことを聞きました」は、例外はありますが、一般的にはまちがいではありません。難関校は生徒の自主性に任せて、中堅校は生徒の尻をたたいて勉強させる学校が多いようです。

「大学進学率を見据えての学校選びがいいでしょうか」ですが、偏差値の高い学校は、大学進学率(と大学合格実績)が良く、偏差値を基準とした学校選びでも同じことになると思います。同程度の偏差値であれば「わが子に合った学校」を選定してもよいでしょう。また、「より偏差値の高い学校をねらえるならその選択がいいのでしょうか」は、それだけの学力があれば、より偏差値が高い学校をねらうか、同程度の偏差値でも「わが子に合った学校」をねらうかは価値観の問題です。

【日高のり子】
偏差値は学校を選ぶうえでは見過ごすことのできないものです。合格の可能性を模試の偏差値と照らし合わせながら、子どもに合った学校の中から第一志望校、併願校を選ばなければなりません。
例えば子どもに合うと思われる学校が2校あって、甲乙つけがたい状況だったら、より上の偏差値の学校を第一志望校とすると思います。でもちょっと偏差値が下がっても、うちの子にはこの学校のほうが合っているという決定的な理由があれば、こちらを第一志望校にすると思います。
こういうお話は各家庭によっての価値観で選び方が変わってくるので、これが正解! という答えはないのかもしれません。

私の考えは、(1)子どもに合っているか (2)生活面での面倒見が良いか (3)学校の教育方針に賛同できるか。この3つをクリアしたうえで、偏差値、大学進学率を見て決めるということでした。
まず、はずせない学校選びの条件を整理して、それから改めて考えると答えが見つかるのではないでしょうか。

確かな教育理念をもって指導している学校は?

ゆとり教育から学力重視へ回帰した学習状況ですが、重要なのは、子ども一人ひとりにどのように教育指導するかだと考えています。偏差値は無視できないものの、教育に大切な理念をもっている学校、教員などについて教えてください。
【森上教育研究所】
どの私立校も教育に大切な理念をもっていると思います。特に私立の学校は特色を出すためにも「教育理念」を大切にしている学校が多いと思いますが、理念が形骸(けいがい)化して教育現場に活かしきれていない学校が多いことも事実です。どの学校の理念が優れているかよりも、どの学校が教育理念を教育現場で円滑に活用できているかを見るべきです。

学校によって理念は異なり、受験生・保護者は、自分の納得のいく教育理念の学校を志望校として選ぼうとするのですが、教育理念は抽象的なため理解することは難しいようです。そこで、教育理念を達成するための具体的な方針となる「教育方針」と「校風」で、教育理念がうまく教育現場で活用されているかを判断したほうがよいと思います。

教育方針と校風が優れていて、教育現場でも円滑に活用されているかどうかは、学校説明会で聞いて理解するよりも、在校生を見たり、大学合格実績を見たほうがわかりやすいと思います。在校生がイキイキと学校生活を送っていれば、それは、教育方針と校風が優れていて、教育現場でも円滑に活用されてきた結果だと考えられます。だからこそ、文化祭などの学校見学で生徒の様子を観察するのです。大学合格実績も同様で、結果を見て判断しなければ、いくら教育理念や教育方針・校風を調べたり、学校説明会で話を聞いたりしても実態はわからないのです。

【日高のり子】
学校案内を見たりパンフレットを見たりしていると、本当にどの学校もいろいろ考えて独自の教育理念を掲げていらっしゃるので、保護者の目にはどれもすばらしく映ります。でも実際に学校を訪ねて、先生がたのお話を聞いて「なるほど…」と深くうなずいても、在校生を見て「あれ?」と思うことがありました。「先生がたの思いは生徒に届いているのかしら?」と。また、「先生がたはこの状況をどう考えていらっしゃるのかしら?」と。
いくら教育理念がすばらしくても、それが反映されていないと説得力がないですよね。ですから、やはり気になる学校には足を運んで、実際の雰囲気を肌で感じること、見てみることが大切だと思います。

プロフィール



【日高のり子】『タッチ』(浅倉南役)、『となりのトトロ』(草壁サツキ役)でも大活躍の声優。ブログ「日高のり子の中学受験ホンネで語る成功と失敗」が人気。
【森上教育研究所】中学受験と私塾、中高一貫の中等教育と私学を対象とする調査・コンサルティング機関。

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