【回答:中曽根陽子】家庭学習・家庭内コミュニケーション<その5>

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。


【【回答:中曽根陽子】家庭学習・家庭内コミュニケーション<その5>

短時間でも、子どもの勉強につきあうポイントは?

どうしたら、子どもが積極的に勉強をするようになるのでしょうか?

受験学年になり、親子でイライラしています

模試の結果にショックを受けています

短時間でも、子どもの勉強につきあうポイントは?

両親がフルタイムで働いているので、しっかり子どもの受験勉強につきあうことができません。帰宅してからも家事をしながらなので、短い時間に、親が子どもの勉強を見てあげるポイントがあれば教えてください。
子どもの受験勉強につきあえないということですが、逆に、お子さんを自立させるいい機会ではないでしょうか。子どもの勉強を横について見てあげるのも、一つのかかわり方ではありますが、私が取材した多くの塾の先生が、「家庭では、スケジュール管理と健康管理を徹底してほしい」とおっしゃっていました。

今何を勉強しているのか、理解できているのか、気持ちが勉強に向かっているかというように、お子さんの様子をしっかりと把握することは大切ですが、勉強に関しては、下手に手を出すと、塾と教え方が違ったりしてかえって混乱することも多いようです。短時間でもお子さんの状況の把握はできると思います。
手を出さず、目を離さないという姿勢で、お子さんのメンタル面を支えてあげてはいかがでしょう。
塾に通っているのなら、定期的に塾の先生ともコミュニケーションをとり、連携を図ることも大切です。

どうしたら、子どもが積極的に勉強をするようになるのでしょうか?

5年生の息子は、親の私が声をかけるとやっと勉強を始めますが、自分からはなかなか取り組もうとしません。どうしたら、積極的に勉強をするようになるのか、保護者としてのサポートのコツがあれば、ぜひ聞きたいです。
「自分からなかなか取り組もうとしない」という理由を考えてみましょう。まだ、受験に対しても、自分のこととしてとらえられていないのかもしれません。なんとなく親に言われたから塾に行っているというのでは、やる気も出てこないでしょう。たとえきっかけはそうだったとしても、自分の意思で取り組めるようにもっていかない限り、親に言われないとやらない、あるいは、言われたからイヤイヤやるというパターンは続くと思います。
では、どうしたら自分からやるようになるのでしょうか。

そもそもなぜ受験をするのかということを話し合ったことはありますか? そこが一致していないと、ボタンのかけ違いが生じます。
まず、親の考えを押しつけるのではなく、お子さんの気持ちにより添って、あいづちをうちながらお子さんの考えを最後まで聞いてあげてください。そのうえで、親としての考えを「お母さんはこう思う」というように、メッセージで伝えてみてください。

大事なのは、「あなたならできるよ」というプラスのメッセージを送ってあげること。
そして、お子さんが納得できるような中学校の情報を話してあげたり、学校に連れて行ったりして、お子さんが具体的に目標とするあこがれの学校を見つけられるといいですね。

受験学年になり、親子でイライラしています

6年生の長女の受験に、親子でストレスが高まっています。子どもは神経質になってきているし、親のほうも余裕をもって接しようと思ってもどうしても学習態度や点数のことが気になって、つい過剰に叱ったり注意したりしてしまいます。どのように気持ちを落ち着かせていけばいいのでしょうか? 頭ではわかっているのですが、なかなか行動できないでいます。
頭ではわかっていても、なかなかできないものですよね。その気持ち分かります! 私も最初の子どもの時にはなかなか冷静になれませんでした・・・。また、受験を経験した多くのお母さんが同じようなエピソードをお持ちのようです。
経験からお話するとしたら、まず今のイライラの原因がお子さんの問題なのか、お母さん自身の問題なのかを冷静に分析してみることです。
お子さんの問題なら、なぜ神経質になっているのでしょう。例えば、「志望校が決まっているのに、成績がそこに届かないから」ということなら、具体的な対策を検討してみる必要があるかもしれません。塾に通っていらっしゃるなら、担当の先生と直接面談をして、一緒に学習の中身を再検討していただくことで解決方法が見つかるかもしれません。また、女の子の場合、6年生くらいになると、思春期にさしかかり、お友だちとの関係や自分の体の変化で精神的に不安定になることも多いものです。学校あるいは、塾での人間関係に問題がある場合もありますから、お子さんの状態をよく観て、聴いてあげてください。
その際、気をつけたいことは無理やり聞き出そうと質問攻めにしないことです。おやつでも食べながら、自然に話しやすいムードを作ることも大切です。
そして、子どもの顔をちゃんと見て、子どもの話に「へーそうなんだ」とか「○○だったんだ。大変だったね」などと共感をしてあげながら聞いてあげましょう。聞いてもらえていると思うと人は安心して、心の扉を開きやすくなります。すぐに結論を導き出そうとはしないことです。
また、お母さんも心配でしょうが、あまりお子さんの問題を自分の問題と一体化せず、気持ちに余裕をもてるように、たまには自分にご褒美をあげて、お友だちとおいしいものを食べに行くとか、じょうずに息抜きをしながらこの時期を乗りきることが必要です。

模試の結果にショックを受けています

5年生で初めて大規模な模試を受けたところ、結果が悪くて親子ともにショックを受けています。塾での成績はわりといい方なので、今まではこの調子で行こうと思っていたのですが、このまま受験の準備を進めていていいのか、とても不安になっています。
大手の摸試を受けられたということですが、塾によっては摸試の出題範囲と学習している範囲にズレが生じている場合もあるようです。また、かなり難易度の高い問題が出題されていることもあります。テスト会によっては、その母体となる塾に通っている生徒の方が、点数をとりやすいという傾向もあります。
一度、そのあたりのことを冷静に分析されてみるといいのではないでしょうか?
また、模試の結果というのは、あくまでも現時点でのお子さんの弱点や反対に強みを見つけるための材料です。点数に一喜一憂するのではなく、正答率が高くて、お子さんができていない問題を中心に見直しをされ、今後の勉強に役立てることが重要です。
親はついつい、子どものできないところに着目しがちですが、できたところを見つけてほめてあげてください。5年生ということですから、まだまだこれからではないでしょうか? 塾での成績はいいということですから、これからが楽しみではないですか!
ちなみに、我が家の場合には、塾の方針で6年生になって初めて大手の模試を受けましたが、結果は散々でした。でも、先生からは問題形式になれていないだけだから心配ないと言われていました。心配はしましたが、結果的には志望校に合格できました。ひとつひとつ階段を着実に上がっていけるように、ぜひ励ましてあげてください。

プロフィール



教育ジャーナリスト、「登録スタッフ制企画編集会社<ワイワイネット>」代表。塾取材や学校長インタビュー経験が豊富。近著に『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)。

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