【回答:中曽根陽子】家庭学習・家庭内コミュニケーション<その2>
「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。
子どもが納得する学校見学のポイントは?
受験する気があるのに勉強をしない。どう声かけすればよいか?
志望校は成績から決めるべきですか?
子どもが納得する学校見学のポイントは?
Q | 現在5年生の娘と、秋に、志望校を絞り込むために、中学校の文化祭や体験授業、学校説明会などに行きました。帰宅してから本人に「この学校どうだった?」と聞いてみると、ほとんどの学校が特にマイナスのイメージもなく、反応がだいたいいつも一緒で困っています。 親のほうは多少各学校について印象が違うのですが、子どもにその印象を伝えると、親の顔色を見て「その学校がいい!」となりかねない感じです。6年生になってから再度、受験したい学校は見学に行くつもりでいますが、次に見学に行ったときにはもう少しはっきりした子どもの反応が知りたいです。子ども本人に、学校見学でどこを見るように促すといいでしょうか? |
A | 「親は多少学校に対する印象が違う」ということですが、今回行かれた学校はタイプも似通っている学校なのでしょうか? それとも全く違うタイプの学校なのに、お子さまの反応が同じということでしょうか? 前者であれば、微妙な違いはお子さまにはなかなかわかりづらいと思います。親御さんが感じられた違いについて、親の希望は控えて、客観的事実のみをお話しなさってみてもよいかと思います。 後者だとすれば、お子さま自身が中学校生活に対して、まだ具体的なイメージがわかないのかもしれませんね。お子さまの反応がいつも一緒で困っていらっしゃるということですが、受験そのものも自分が決めたことではなく、親の意向に沿ってやっているという意識があり、自分自身の考えがまだ芽生えていないのではないでしょうか。 「親の顔色を見て『その学校がいい!』となりかねない感じです。」という一文から、もしかしたらこれまでも、何かを決めるときに親の暗黙の意思が働いて、完全にお子さまだけに決めさせる経験をあまりしてこなかったのかな、と思いました。 子どもは、無意識に親の期待に応えたいという気持ちをもつものです。もちろん中学校選びは、まだ子どもだけの判断に任せることはできませんが、お子さまにとっても、初めての進路選択の機会です。今一度、中学に入ったらどんなことをしたいのか、とにかく口を挟まずに、お子さまの気持ちをよく聞いてあげてください。 そのうえで、次回の学校見学の折には、自分がそこで生活するということを具体的にイメージさせて、在校生の様子などをよく観察してみるように伝えてあげてはいかがでしょうか? |
受験する気があるのに勉強をしない。どう声かけすればよいか?
Q | 中学受験を親も子も希望していますが、習い事とサッカーの練習で、放課後時間があるのは2日程です。 現在は「進研ゼミ」と、その他「ハイレベルテキスト」や過去問を与えて、家庭のみの勉強でがんばっていますが、声をかけたときしか勉強しません。学校の成績も、5年生になり落ちてきました。習い事やクラブをやめようかともちかけると、絶対やめないというので、それなら受験をあきらめようかと話すと、それもあきらめません。話し合ったときは、自分から勉強しますが、あとは全く自分からはしません。 夫は単身赴任中で、下の子もいますし、なかなか勉強を見てあげられず、どうしたらよいかわからなくなってきました。なんとか受験して合格へ導きたいのですが、どう声をかけ、どのような日々を受験に向けて過ごしたらいいかアドバイスお願いします。 |
A | 「中学受験を親も子も希望している」ということですが、お子さまは、具体的な目標をもって勉強をしていますか? それとも漠然と中学受験をしようと思っているのでしょうか。 もしかしたら、親御さんとお子さまの間で、受験に対する気持ちに温度差があるのかもしれません。お母さまは、志望校に合格するためには、このくらい勉強しなくてはならないということが、ある程度予測できているのですね。でも、まだ小学生のお子さまには、そこまでの意識をもたせることはなかなか難しいものです。 目標とする学校に合格するために何をどのくらい勉強するというプランニングをしていくのは、中学受験では大人の仕事になります。塾に行かないのであれば、それをすべて親御さんがしなくてはなりません。「進研ゼミ」と、その他「ハイレベルテキスト」や過去問を与えているということですが、今の時点で過去問に取り組むというのは少し早いように思います。今やっている勉強法が合っているかどうか検証してみる必要もありそうです。家庭でがんばるにしても、一度塾の模試なども受けてみて、今の時点で目標校に合格するためには何をしなければならないかというアドバイスを専門家である塾の先生に伺ってみるのもひとつの手かと思います。 それと並行して、お子さまに、「なぜ中学受験を希望するのか」ということをもう一度聞いてみてください。そのうえで、「どこに行きたいのか(具体的な学校名でなくても、どんな中学校生活をしたいということでもOK)、そのためには何をしなくてはならないか、そして今のおけいこ事との両立をしていくためにはどういう工夫をしなくてはならないのか」というように大きな目標を達成するための小さい目標を描けるように、具体的な話し合いをもう一度してみたほうがいいのではないでしょうか。 お子さま自身が、自分事としてとらえない限り、同じことのくり返しになると思います。 |
志望校は成績から決めるべきですか?
Q | 現在3年生で、私立の中高一貫校の受験を考えていますが、志望校を決めるにはまずは成績を考慮して絞り込んでいくべきでしょうか? |
A | そもそも、なぜ公立中学進学ではなく、私立の中高一貫校の受験を考えられたのでしょうか? 必ず、ご家庭としての理由があるはずです。そこがわかっていないと、志望校を選ぶ基準が、成績(偏差値)になってしまいますね。 私立中学にはそれぞれ「こういう子どもに育てたい」という教育理念があります。その理念に賛同できるのかどうかというのが、実はいちばん大切なポイントだと私は考えます。 お子さんにどのような教育環境を与えたいと考えるのか、そこをぜひもう一度よく考えてみてください。家庭の考え方と学校の教育方針が合っていなければ、せっかく入学してもトラブルの原因になりかねません。 そういわれても、最初は漠然としているかもしれません。その場合には、偏差値にとらわれず、幅をもたせて校風の違う学校をいろいろ見てみることです。そのうちに、「うちの子にはこういう学校が合ってそうだ」ということが見えてくるでしょう。 世の中の多くの人が、まず偏差値表に成績を照らし合わせて学校選びをしているようですが、成績から学校を選ぶというのは、あくまでも最終的に合格の可能性を測って受験校を絞るときに必要なものさしです。成績はこれから伸びる可能性がおおいにあるのですから、最初から成績に縛られず、お子さんがどんな学校に行けばいちばんのびのびと過ごせて、力を発揮できそうかよく見極めてください。あこがれの学校が見つかれば、目的ができて勉強にも身が入り、成績も伸びてくることでしょう。 |