【回答:中曽根陽子】家庭学習・家庭内コミュニケーション<その1>

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。


【【回答:中曽根陽子】家庭学習・家庭内コミュニケーション<その1>

計画倒れになっているわが子の勉強予定。家庭ではどのようにフォローしていけばいいのですか?

何をやるにも時間がかかる1年生の娘。勉強や遊びの時間を増やす良い方法は?

発達障がいのある息子が中学受験をしたいと言う

計画倒れになっているわが子の勉強予定。家庭ではどのようにフォローしていけばいいのですか?

6年生になって、家で勉強をしなくてはならない時間が増えてきました。かかる時間を宿題ごとに見積もって、予定を立てて、本人なりにこなしているようですが、どうも計画倒れしているようです。いつも見ているわけではないので詳細はわからないのですが、途中で息抜きをしすぎているような気もします。できれば予定どおりに終わることを目標にがんばってほしいのですが、家庭でどのように促したりフォローをしたらいいでしょうか?
6年生ということですから、勉強量も多くなり、これからますます大変になりますね。
現段階で、宿題ごとに時間を見積もり、予定を立てて、本人なりにこなしているということですが、その予定どおりに事が進んでいないということなのでしょうか?

塾に行ってらっしゃるのだと思いますが、塾の先生はなんといってらっしゃいますか?
一度塾の先生に面談でもお願いして、目標到達に向けた長期計画とそれを実現させるための月別、あるいは週別の予定を一緒に考えていただき、お子さんに伝えてもらうといいのではないかと思います。

塾でそこまでのことを期待できないとすれば、塾のカリキュラムをお母さまが把握して、お子さんと一緒に、1日の時間割と1週間の時間割を細かく作ってみることをおすすめします。
1日を30分くらいに細かく区切った予定表に、曜日別で寝る時間、学校に行っている時間、塾にいる時間、その他の時間などを書き出してみると、1日の行動がビジュアル化されて、どこで、どこで、どのくらい勉強時間がとれるのかということが明確になると思います。
予定表は、カレンダーの裏紙などを使って大きめに作って、机の横など目につくところにはるといいでしょう。

明確になった勉強時間の中で、「いつ何をやるのか」ということを決めていけば、本人もより具体的に計画を立てられると思います。
計画を立てるときは、親は相談に乗ってサポートはするけれど、あくまでも本人に考えさせることがポイントです。主体的に決めた予定をこなせなかったとき、言い訳はできませんから。
もちろん、お子さんが予定をこなせるように励ましてあげることは忘れないでくださいね。

何をやるにも時間がかかる1年生の娘。勉強や遊びの時間を増やす良い方法は?

娘は何をやるにも時間がかかります。通信教育2つをやるのに規定時間の倍以上かかります。他にも習い事を4つしているので、宿題を終わらせるのにひと苦労です。毎日1時間以上それらにかかってしまい、9時に寝かそうとすると他の勉強や遊びの時間が残りません。
また時間が遅くなることが多く、せかして怒ってしまいます。

慣れて速く解けるようになってほしいのですが、量を増やすと時間も長くなるので、中学受験前に息切れしないか心配です。1年生には負担が大きすぎるのではないかとも思います。
何か良い方法がありましたら教えてください。
お子さんが何をやるにも時間がかかるので、お母さまとしては予定がこなせなくて、イライラなさるのでしょうね。その気持ち、よーくわかります。
おおかた、大人のペースで日常生活が営まれていると思うので、予定どおりに事が進まないとつい急がせてしかってしまう…。私にも、かつてそういう時期があったので、ご相談を読みながら昔のことを思い出しました。
しかし、年の功で言わせていただくと、ちょっとがんばらせすぎのような気がします。

通信教育2つに習い事4つ。それらはお嬢さんがすべて望まれて、始めたことでしょうか? もしそうだとしても、まだ1年生では自分の力量を客観的に把握することはできないでしょう。もしかしたらお子さんにとって、すべての予定をこなすのは、今はキャパシティーオーバーなのかもしれません。
昼間学校に行っていて、習い事を4つしていて、そのうえに通信教育をこなすということは、大人でもかなりの要領と体力が必要な気がします。

通信教育を2つやっているというのは、中学受験を意識してのことですよね? 量を増やしても、それぞれが中途半端になってしまうのでは、本末転倒ですね。
一度すべてを見直して、お子さんと優先順位をつけてみられた上で、続けるもの、今はやめるものを決めてはいかがでしょうか?

ここで重要なのは、お母さまが先導しないで聞き役に徹し、お子さんの気持ちを十分にお聞きになること。そのうえでお子さん自身の意思を尊重することです。自分で考えて決めた結果なら、もしそれがこなせなかったら、それはお子さん自身の責任になります。

また、子どもというのは無意識に親を喜ばせるためにがんばるという気持ちが働きますから、無言のプレッシャーを与えすぎないように気をつけてくださいね。
今は、親のペースで焦って多くのことをやらせるより、お子さんのできることを1つずつ確実に増やして、自信をつけてあげることのほうが、将来の中学受験にもきっと役に立つと思います。がんばってくださいね。

発達障がいのある息子が中学受験をしたいと言う

今年に入り、息子が「中学受験したいから進学塾に行きたい」と言いだしました。
ただ、息子にはアスペルガー症候群という発達障がいがあります。1、2年生までは普通学級で過ごせたのですが、3年に入り周りの子どもとの感覚の違いに気づき始めて「普通学級では落ち着けない」と、現在、特別支援学級に籍を置き、普通学級には交流学級として過ごしております。知的障がいは全くなく、逆に「高いIQがゆえの症状かも」と病院の先生からは言われています。実際、理解力は高く、学校の先生からも能力はあると言ってもらえています。
高学年に向けて、普通学級でも過ごすことができるようになるお子さんもいますが、息子はまだまだ無理なようです。
私たちも息子が望むように受験をさせてあげたいのですが、息子のような子どもを受け入れてくれる中学があるのかわかりません。千葉県の市原市に住んでいますので、できれば県立千葉中を考えています。ご回答よろしくお願いします。
アスペルガー症候群という診断を受けられているということですが、ご存じのとおり、その内容は非常に個人差があり、ここではあくまでも一般的な回答とさせていただきます。

発達協会(http://www.hattatsu.or.jp/)常務理事の湯汲英史先生によると、まずお子さんが受験をしたいという理由をよく確かめてみたほうがいいということです。
今とは違う生活環境のこと、そのプラス面・マイナス面もよく話してあげてください。
そのうえで、受験をするということになったら、学校選びにお子さんも一緒に関与させて、本人も納得がいく選択をしてあげてください。
そして、受験には必ず合否がついて回ります。あまりプレッシャーをかけず、不合格ということもあり得ることをきちんと話し、今の勉強がこの先どのように役に立つのかということを、筋道を立ててわかりやすく説明してあげましょう。
また、どういう学校が向いているかということですが、森上教育研究所によると、多様性を認め合うという学校文化をもっている私立なども、お子さんの特性をプラスにとらえてもらえるのではないかということです。

プロフィール



教育ジャーナリスト、「登録スタッフ制企画編集会社<ワイワイネット>」代表。塾取材や学校長インタビュー経験が豊富。近著に『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)。

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