【回答:中曽根陽子】志望校選び<その1>

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。


【回答:中曽根陽子】志望校選び<その1>

経済的理由で国立中学をめざすことについて

さいたま市付近の私立中を教えてください

学校説明会でおさえておくポイントは?

経済的理由で国立中学をめざすことについて

近隣の公立中学は新設校で意識レベルも高いため、中学受験する人は10%ほどです。しかしわが子は、みんなと同じというよりは人とは違ったことにチャレンジすることに意欲を燃やす性格。親としても、中学生の多感な時期は広い世界に出てほしいと思い、受験を検討中です。
しかし、わが家の経済的理由により、国立以外の受験は無理です。3人きょうだいのため、3人とも同じように教育資金を分配したいのでなおさらです。子どもは「お金がたくさんかかるのなら受験しない」と言うかもしれませんが、受験はしてほしいと思っています。

このような志望校決定は、子どものことを考えると何かまちがっているような気もします。このまま受験を考えていてもいいのでしょうか。
「中学生の多感な時期は広い世界に出てほしいと思い、親は受験を検討中だが、経済的理由で国立しか無理。でも、そんな理由で子どもの志望校を決定するのはまちがっているのでは?」というご相談ですが、経済的理由ということであれば、それは現実問題として大前提なので、しかたのないことのような気がします。今の状況の中で、親として考えられる最善の進路が国立中学を受験することであると思われるのでしたら、自信をもって、お子さんにもそのようにお話しして、チャレンジされたらいいと思います。

しかし、国立中学といっても、学校によって対策がまちまち。なかには、私立同様に塾に通って準備が必要な学校もあります。志望されている中学校の受験対策として、どのような準備をすればよいのかも含めて、まずはもっと詳しく学校について情報収集する必要があるように感じます。同様に、今後の資金繰りについても、今のうちにシミュレーションをしておくことが大切です。現実がはっきり見えてくれば、納得してお子さんの進路も考えられるのではないでしょうか?

参考までに、「Benesse教育情報サイト」には、「教育費シミュレーター」があります。お子さんの進路予定を反映させながら、これからかかる教育費を含めて、家計が将来どうなっていくかをシミュレーションすることができる、便利な機能です。試してみてはいかがでしょう。

さいたま市付近の私立中を教えてください

住んでいる地域柄、都内までは少し遠いため、埼玉県さいたま市付近で私立の中学校を考えています。どんな学校があるのでしょうか。教えてください。よろしくお願いします。
ご質問者のお子さまの性別がわからないのですが、さいたま市周辺ですと、進学校として人気の高い学校がいくつかあります。また、1月校受験として、東京・神奈川・千葉など近県からの受験生を多く集める学校もあるのがこの地域の特徴です。

さいたま市の共学の進学校では、栄東中学と開智中学があります。

栄東中は中1から「東大クラス」と「難関大クラス」に分けて指導する進学校です。「東大クラス」は東大をはじめとする国公立医歯薬系学部への現役合格を目標に絞ってカリキュラムが組まれています。同じ系列に埼玉栄中学もあります。

開智中も2007年度より中高一貫部が創設され、2009年度からは先端クラスを設けて、東大など世界の最先端大学への全員進学をめざす先端的授業を行うとしています。難関大進学をめざす学校として、両校はよく比較されます。

他には、大宮開成、浦和実業学園が中学校を開設。まだ実績は出ていません。浦和ルーテルは創立45年のプロテスタントの伝統校です。

女子校では、浦和明の星、淑徳与野といった学校があります。浦和明の星は、カトリックの女子校で、2003年度に中学を開校しました。淑徳与野も、高校からは国公立大や早慶上智へ全員合格をめざしてカリキュラムが組まれています。両校共に、まだ一貫生の実績が出ていませんが、さいたまの私立女子進学校として注目されています。

公立中高一貫校では、さいたま市立浦和高校の併設校として、さいたま市立浦和中学校が開校しています。このように、さいたま市周辺は、新しい進学校が集まっています。

学校選びにおいては、まずお子さまにどのような教育を与えたいと思っているのかを考えてみましょう。そのうえで、学校の教育理念に賛同できるかという点を軸に、実際に足を運んで教育内容をよく見比べてみてください。

※2008年11月現在の情報です。

学校説明会でおさえておくポイントは?

現在5年生で、私立大の附属中学の受験を考えています。いくつか候補の学校はあるのですが、決め手がありません。秋は多くの学校で説明会がありますが、どのようなポイントに重点を置いて見ておくべきでしょうか。また、体育祭や文化祭にも行ったほうがよいでしょうか?
附属校にこだわっていらっしゃるのか、それ以外の学校も視野に入れていらっしゃるのかで、話が変わってきます。
附属校の中で、何を選択肢にするか迷っていらっしゃるというのなら、やはり大学進学に対する考え方を決めたほうがいいと思います。附属校といっても、ほぼ100%系属の大学に進学する学校と、反対に外部の大学を受験することを前提にしている学校があります。そのどちらを選ぶかによって、将来の進路が変わってくるからです。
もし、附属校以外受けないと決めているのでないなら、私は、附属校を第一志望にしながら、附属校以外の学校も今のうちに見学しておいたほうがいいのではないかと思います。
絞ってしまうとそれだけ学校選択の幅が狭まってしまいますし、まだ5年生ということですから、これからまだまだ学力も気持ちも変化する可能性があるからです。
それ以外の学校説明会でおさえるポイントは一般的な話と変わりません。
まず親として子どもの教育に何を望んでいるのかということを第一に考えてみましょう。そのうえで、その学校が預かった子どもをどのように育てようとしているのかという、教育に対する姿勢をぜひ確認しましょう。学校説明会ではたいてい校長先生が教育理念について語りますが、そのときの話の内容はもちろんのこと、態度や他の先生とのつながり具合などにも注目してみると、いろいろなことが見えてくると思います。校長先生は良くも悪くも学校の中身を代弁します。また、できるだけ在校生のいる曜日や時間帯を選んで行き、特に高校生の様子を観察してみましょう。それは5、6年後のお子さんの姿です。なにより、いちばんのチェックポイントは、生徒たちの目に元気が感じられるかどうか。そこに違和感を感じるようならあまり相性がよくないのかもしれません。そういう意味で、文化祭や体育祭は在校生の様子を垣間見られる貴重な機会です。ちなみに、文化祭は午後からゆっくり行くと、生徒も「お客さん対応」モードから、通常の「素顔モード」になってくるのでおすすめです。いずれにしても気になった学校には、複数回足を運んでみるといいでしょう。

プロフィール



教育ジャーナリスト、「登録スタッフ制企画編集会社<ワイワイネット>」代表。塾取材や学校長インタビュー経験が豊富。近著に『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)。

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