【回答:中曽根陽子】塾<その2>

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。


【回答:中曽根陽子】塾<その2>

共働きですが塾選びで迷っています

塾を続けるか迷っています

塾通いは、子どもにとって負担になるのでは?

塾の勉強の進度が速くてついていけません

共働きですが塾選びで迷っています

中学受験は全く考えていませんでしたが、4年生になり、息子の周りのお友達が徐々に塾に通い始めたため、本人も受験したいと言い出しました。私自身仕事をもっているため、塾の送り迎えやお弁当づくりはきっと無理だと思います。家庭学習や個別指導の塾ならばどうにかなるのではと思っていましたが、息子はお友達が行っている塾に行きたいようです。息子の気持ちに添ってあげるべきでしょうか?
最近は、中学受験生のお母さまの中にフルタイムでお仕事をされているかたも増えてきました。
そうはいっても、仕事と塾のフォローは大変だと思います。
中学受験をまったく考えていらっしゃらなかったということですが、お子さんが希望されているからなんとなくではなく、この機会にまず「中学受験をさせるか、させないか」ということをご夫婦で真剣に考えてみてください。そのうえで、「させる」ということでしたら、今の条件で実現可能な方法を選ぶことが大切です。
確かに、家庭教師や個別指導で受験をする方法もありますが、金銭的にはかなり高額になるということと、先生の資質に大きく左右されるということを理解して選ぶ必要があります。また、お子さんはお友達の通っている塾に行きたがっているということですが、その塾だけにとらわれずに、ここは、わが家にとっていちばんいい受験スタイルを考えて、そのうえで塾も慎重に選びましょう。
まず、送り迎えができないということなら、お子さんが一人で通える条件の中から塾を探す必要があります。学年が上がるにつれて帰りも遅くなりますから、通学路が安全かどうかは大事な要素になるでしょう。
それから、お弁当が作れないということですから、原則お弁当が必要ない塾を選ぶか、あとから届ければ間に合うのか、軽食で済ませて帰宅後に食事を取るかなど、具体的にシミュレーションをしてみてください。この場合も5、6年生の様子をチェックしましょう。
しかし、それらは条件の一つの要素にすぎません。通塾日数や予習型、復習型などの学習スタイルや、どういう学校をねらうのに向いているのか、家庭学習への考え方、親のフォローの必要性などなど。塾選びは中学受験生活を左右する大きな要素でもあります。実際に足を運び、お子さんや家庭の事情に合った塾を選択してあげてください。

塾を続けるか迷っています

娘を中学受験させるつもりで4年生の2月から塾に行かせていますが、このまま続けさせるか迷っています。というのは5歳の息子に手がかかるため、塾の宿題などなかなか見てあげることができません。たまに見てあげても、最後には「なんでわからないの!」と怒鳴る始末で自己嫌悪に陥ります。このままだと、親子関係がどんどん悪くなるように思えてなりません。どうすればよいかアドバイスをお願いします。
下のお子さんに手がかかり、宿題を見てあげられないので塾を続けるか迷っていらっしゃるということですが、下にお子さんがいらっしゃるということは変えることができない条件です。この先下のお子さんに手がかからなくなり、親が見てあげられるようにならない限り、上のお子さんの受験には対応できないということになります。まず、その条件の中で、目的を達成するためにどうしたらいいかということを考えてみてください。
また、そもそもどうしてお嬢さんの中学受験を考えられたのでしょう。そこが漠然としていると、目先のことにとらわれてしまうことになります。
どんどん親子関係が悪くなるということですが、塾の宿題を親が見てあげるというのは、そもそも親子関係を悪くするダントツの原因です。この際、下のお子さんに手がかかることを逆手にとって、お子さんが自立できるように導いてあげてください。
宿題を一人でこなせていないのなら、その原因を探り必要に応じて塾の先生にも相談をしてみましょう。原因が理解不足ならそこをフォローする必要がありますし、受験に対する自覚がお子さんにまだないならその辺りから確認していく作業が必要です。また時間管理ができないなら、スケジュールと時間管理を最初は手伝ってあげてはどうでしょうか。
また、下のお子さんにもお姉さんが今勉強をがんばっていることを話して聞かせ、家族みんなで応援できるような環境を整えていきましょう。小さいお子さんでも、ちゃんと話せばある程度はわかるのではないでしょうか。そして、お姉さんが塾で不在のときに下の子にしっかり対応してあげるというメリハリをつけましょう。

塾通いは、子どもにとって負担になるのでは?

中学受験を考えていますが、転勤族なので受験できないかもしれません。
するかどうかわからない中学受験のために、4年生から塾に入れて、子どもの遊ぶ時間を減らしてしまうことが気になっています。
学校の授業は理解しているようですが、それだけでは足りないことを本人も自覚して、自ら「塾に行く!」と言い出しましたが、遊ぶ時間をけずり、週に何回も塾に行くことは子どもにとってプラスになるのでしょうか? 5年生になれば、塾からの帰りが9時頃になってしまいます。家族一緒の時間も少なくなり、3つ下の妹への影響も心配しています。
子どもにとって、家族にとって、本当に大切なのは、どのような選択なのか迷っています。
転勤族ということで、希望の受験ができない場合もあるということなら、その点はよく話した方がいいのではないでしょうか。それでも、本人に強い意志があるのなら、受験できるならするという条件の下で、準備を始めておくのもひとつです。
するかどうかわからない中学受験のために、4年生から塾に入れて、子どもの遊ぶ時間を減らしてしまうことが気になるのであれば、塾を選べばいいと思います。
4年生なら、週1、2回の塾もありますし、5年生で受験コースか補習コースかを選択できる塾もあります。ご家庭の条件をよく吟味して、それに合った塾を探されてはどうでしょう。
また、5年生になって、帰宅時間が遅くなることできょうだいへの影響も気になるということですが、確かに、受験生がいると家族の生活への多少の影響は避けられません。
何を優先に考えるかで、他のことをどこまで変えないのか、あるいは変えるのかという選択も変わってきます。妹さんへの影響をご心配ということですが、きょうだいががんばっている姿を見せて、一緒に応援するというプラスの面もあると思います。いずれにしても、お子さんの気持ちをよく聞いてあげて、親としての考え方を整理してみてはいかがでしょう。

塾の勉強の進度が速くてついていけません

6年生になって塾に入ったのですが、勉強の進み方が速くてついていけず、娘が自信をなくしています。どのように励ましたら、子どもは気持ちを入れ替えて、意欲的に勉強に取り組めるようになるのでしょうか。また、塾への相談のしかたなどもアドバイスをお願いします。
大人でもそうだと思いますが、少しでも自信をもてることには積極的になれると思います。親は、ついつい、できていることは当たり前で、できないところばかりが気になってしまいがちですが、お子さんの得意なこと、できていることに目を向けて、そこを徹底的にほめてあげてはどうでしょうか。
たとえ、点数が悪いテストでもその中で、例えば、「漢字はできているね」というように、小さなことでもかまわないので、できているところに注目してあげましょう。そんな小さな成功体験を積み重ねていくうちに、だんだんやる気も出てくるのではないかと思います。

また、塾の先生も人間ですから、責められてはいい感じはしないでしょう。クレームをつけるのではなく、今のお子さんの状態を伝えて、一緒に考えていただけるように丁寧に相談してみましょう。
そして、何につまずいているのかを具体的に教えていただくようにして、具体的な対策も立ててもらえるといいですね。

プロフィール



教育ジャーナリスト、「登録スタッフ制企画編集会社<ワイワイネット>」代表。塾取材や学校長インタビュー経験が豊富。近著に『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)。

子育て・教育Q&A