第22回 適性検査にひるまない子どもを育てる(1)

前回同様「よくわからない文章題」に出あった場合に、過去の学習体験とつなげて論理的分析的な考察をして解く過程をご紹介しましょう。


【問題4】
350m² の畑から560kgのキャベツがとれました。これと同じ割合でキャベツがとれるとすると、キャベツを2000kgとるには、何m² の畑が必要ですか。


この問題はどうでしょう。太郎はこの問題も正解しました。
「これと同じ割合でとれる」と指示語が出てきますが、仮定の表現「同じ…とすると」が出てくるところは【問題2】の「同じにするには」と似ています。しかし【問題2】ではどうすればよいか「よくわからない」のに対して、【問題4】の求めるものは「畑の面積」であり、【問題3】の「長く走る」(距離)と同様、求めるものがはっきりしています。


【問題2】小学5年生
18m² の花だんAと、15m² の花だんBがあります。花だんAには2.7kg、花だんBには1.8kgの肥料をまきました。花だんAと花だんBの肥料のまく割合を同じにするには、どちらの花だんに何kgの肥料をまけばよいですか。


【問題3】
自動車Aは35リットルのガソリンで420km、自動車Bは40リットルのガソリンで540km走ることができます。ガソリンの使用量のわりに長く走るのは、どちらの自動車ですか。


【問題4】では、まず「これ」の示す内容をとらえましょう。「350m² の畑からとれるキャベツの重さが560kgである場合」とおさえます。「同じ割合でとれる」のだから、560÷350=1.6kg/m² がすぐに出せます。これが2000kgとれるようにするには、1.6kgがいくつ分集まればよいか求めればよいので、2000÷1.6=1250、答えは1250m² となります。求める課題が明示されているので簡単なわけです。
(※ なお、この解答は新学習指導要領〔平成23年度から本格実施〕の5年生終了段階の解答としました。もちろん6年生ならば、「比」や「比例」の考えで解くことができます。)

【問題2】で太郎は考え込まないで、すでに学習した経験を思い出し【問題4】【問題2】と同じ構造を持っていることに気がついたならば、解き進めることができたのです。すなわち【問題2】の「肥料のまく割合を同じくする」を【問題4】の「キャベツが1m² あたり1.6kgとれる畑と同じ割合でとれる」に照らし合わせて同じようにとらえ、「Aの花壇で1m² あたり( )kgまく肥料と同じ割合でBにまく」と考えればよかったのです。

このように、すでに学習したり体験したりしてきたことと、目の前にある課題との共通性や本質をとらえる力(論理的に考察し分析する力)が備われば、初めは「難しくてわからない」と思った課題が、絡まった糸をほぐすように解けていくのです。そして、以下に述べる(1)「読み取る力」(2)「気づく力」(3)「つなぐ力」が、算数文章題と同じように適性検査問題を解いていくときに、求められるのです。

「そもそも算数ができない子どもだからすぐにあきらめて考えようとしなくなる」とおっしゃるかたもいるかもしれませんが、そのような子どもに親が仕立て上げてしまったのではないか?と私は考えています。つまり、

(1)書かれている課題を事実として読み取ったうえで、いったん素直に受け入れる態度
(2)課題となっている事実を根気強く分析していく集中力や追究力
(3)これまで学習したことや体験をつなげて課題解決を考えていく思考力や判断力


これらの態度や姿勢を、親が子どもとかかわる中で削(そ)いでしまったのではないかと思うのです。
逆に言えば、子どものあらゆる学習場面、すべての生活体験の場面で(1)「読み取る力」(2)「気づく力」そして(3)「つなぐ力」を育み、強化するように意識して子どもを支えていく、そのような親の生きる姿勢や子どもとのかかわり方が適性検査問題に挑む際に反映されるのではないかと思うのです。


プロフィール



学習塾「スクールETC」代表。思考力を問う公立中高一貫校の適性検査対策に、若泉式の読解力・記述表現力の指導法が注目を浴びる。適性検査問題分析研究の第一人者としても活躍。著書に『公立中高一貫校 合格への最短ルール 』(WAVE出版)などがある。

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