少子高齢化と福祉を考える! 適性検査対策として今家庭でできることは?
※2006年4月現在の情報に基づいた記事です。
右の記号は2006年1月、国土地理院が小・中学生からデザインを公募して決定した新しい地図記号です。何を表す地図記号かおわかりですか?
ぜひお子さまと一緒に考えてみてください。
☆ヒント 家の中につえがあります。
答えは…そう、「老人ホーム」です。
今回は、我が国の大きな課題である「少子高齢化と福祉」について考えてみましょう。公立中高一貫校の適性検査でも、お年寄りらが乗るバスのマナーについて考える問題などが出ています。昨年発表されて新聞やニュースで話題になったので知っているかたも多いと思いますが、2004年に生まれた子どもの数は約111万1千人(厚生労働省 人口動態統計より)。一人の女性が一生に産む子どもの数を示すとされる合計特殊出生率は1.29で、前年と同様過去最低となりました。
一方、04年10月現在の65歳以上の高齢者人口は2488万人(04年10月現在)で、高齢化率は19.5%に上昇しています。90歳以上の高齢者はこの年に初めて100万人を超えました。国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の人口は2006年をピークに減少し、2050年には現在より約2700万人減り、1億59万人程度になることが予想されています。1億59万人といえば、1967年(昭和42年)当時の水準。だいたい保護者のかたが生まれた頃くらいでしょうか。ただし、1967年当時は中位数年齢(人口を年齢順に並べて数え、ちょうど真ん中に当たる年齢)が30歳だったのに対し、2050年の中位数年齢はなんと53歳だそう! 高齢化が進んでいることがはっきりとわかります。
「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」
国や地方自治体、企業などでは、高齢者や障害を持つ人たちも快適に暮らせるための環境づくりを進めています。皆さんも「バリアフリー」や「ユニバーサルデザイン」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
「バリアフリー」とは、障害のある人が生活するうえで障壁(バリア)となるものを除去するという意味です。もともとは住宅建築用語として登場し、建物の段差を取り除くことなどを指す場合が多いですが、もっと広い意味で、社会的、制度的、心理的なバリアを除去するという意味でも使われます。これに対し、「ユニバーサルデザイン」は、障害の有無や年齢、性別、人種等にかかわらず、多様な人々が利用しやすいようにあらかじめ都市や環境をデザインする考え方を言います。つまり、「バリアフリー」とは現にあるバリアを除去すること、ユニバーサルデザインは初めからバリアとなるようなものは取り除かれている状態を指します。また、障害者や高齢者を特別視するのではなく、一般社会の中で普通の生活が送れるような条件を整えるべきであり、共に生きる社会こそノーマルな社会であるとの考え方を「ノーマライゼーション」と言います。
皆さんの身のまわりでも、段差のない床、スロープ、広く凹凸のない歩道、車いすでも使えるトイレなどを目にするのではないでしょうか。乗降口の位置が低く、床がフラットな「ノンステップバス」や、車いすやストレッチャーに乗ったままで乗降できるよう車両にリフトやスロープを搭載し、介護士の資格を持ったドライバーが乗務する「福祉タクシー」なども増えています。少子高齢化が進むとどんな影響があるのか、福祉に関する言葉や用具にはどんなものがあるのかなどについて、親子で考えてみるのもよいのではないでしょうか。
「福祉」というと行政や企業だけに関係する言葉のように思われるかもしれませんが、「福祉」とは「人々の幸せ」や「幸せに暮らせる生活環境」のこと。つまり、私たち一人ひとりの現在の生活や、子どもたちの将来の生活にもかかわることです。「バリアフリー」も「ユニバーサルデザイン」も「ノーマライゼーション」も、言葉は違えど「いつでも、誰もが自由に快適に暮らすことができる社会を目指す」理念に変わりはありません。誰もが快適に暮らすためには、一人ひとりが「自分のことだけでなく、さまざまな人の立場で考えられること」が大事。この視点は、公立中高一貫校で求められている力にも通じているのではないでしょうか。「さまざまな立場や気持ちになって考えられるかどうか」をみる問題は、過去の適性検査でも出されています。
適性検査での出題例
・お年寄りらが乗るバスの中でのマナーについて書かせる問題
・幼児に喜ばれるおもちゃを考えさせる問題
・友達と2人で小学校低学年の子どもを遊ばせる方法を考えさせる問題
これらの問題に答えるには、普段から身のまわりのことや社会の動きに関心を持ち、自分にできることを考えておく必要があります。親子で近所を散歩したり、地域の公共施設に行ったりしたときには、「ここに手すりがついているのはどうしてかな」「この道で危ないところはない?」「私たちにできることは?」などとお子さまと一緒に話し合ってみてください。