なぜ適性検査なのか? 時代が求める学力を探る! 5分でわかる最新教育事情 

※2006年3月現在の情報に基づいた記事です。

全国に設置が広がる公立中高一貫校。2005年の12月から2月にかけて、各校で入学者選抜が行われました。東京都や埼玉県などでは10倍もの高倍率になった学校も。皆さんもご存じのように、公立中高一貫校は入学者選抜において学力検査を課すことができません。そこで、学力検査に準ずるものとして適性検査が行われています。では、今年の適性検査でどんな問題が出たのか見てみましょう。


  • 「あなたがこれまでの生活の中で、思い通りにいかなかったことを2つ書きなさい。また、それぞれについて、自分でどのような工夫をし、解決したのか説明しなさい」
  • 「市役所職員を名乗る人から、あなたに『友達の電話番号を教えてください』と電話がありました。家にはあなたしかいません。あなたはどのように対応するのがよいと思いますか、対応の仕方を書きなさい。また、その理由を書きなさい」
  • 「日本の食料の自給率が低いと、どのような問題が出てくると思いますか? あなたの考えを100字程度で書いてみよう」

上の問題は適性検査問題の一部ですが、これらの問題を見ると、従来の私立中学の入試問題や保護者のかたが経験した高校入試問題とは大きく異なっていることがわかります。
これらの問題の大きな特徴は「答えを選択肢から選ぶのではなく、体験を踏まえて自分で答えを作り出さなければならない」ということです。よって、これらの問題には「決まった解答」がなく、答えが何通りかある場合もあります。(1)の問題なら、答えは一人ひとり違うことでしょう。しかし、だからといって、「自分勝手な答えでよい」というわけではありません。例えば、字数制限のある記述問題であれば、原稿用紙の使い方や漢字の使い方、文章の構成など作文を書く基本的な知識・技術はもちろん必要です。知識・技術を自分なりに使いこなしたうえで、「自分の考えを持ち、それをわかりやすく的確に相手に伝えることができる」ことが重要なのです。


社会が変わると求められる学力も変わる!

では、公立中高一貫校の適性検査問題のような「持っている知識を使いこなして解答を作り出す力をみる問題」が出題されるようになったのはなぜなのでしょうか。

保護者のかたが経験した過去の入試では、どの教科でも「習った知識や公式を覚えているかどうか」「習ったパターンをなぞらえて答えることができるかどうか」を試す問題が多く出題されました。そのため、勉強=覚えることになっていたはずです。
このことは、経済が右肩上がりに成長していた当時の日本社会と深く関連しているのではないでしょうか。当時の社会では、上司の指示に従い、言われたことをコツコツとこなす「まじめさ」や「熱心さ」が重宝されました。学校教育でも「知識を身につける」ことに重きが置かれました。
しかし、バブル経済が崩壊し、状況は一変! 厳しい不況が続き、リーダーの指示や今までのやり方に従うだけでは立ち行かなくなってしまったのです。新たに必要になったのは、「新しい道を切り開く方法を自分自身で見つけ、実現できる人」。このためには、ただ知識があったりまじめであったりするだけでなく、「どんな方法がベストなのか、自分で考え判断する力」を持っていなければなりません。そこで、学校教育では知識よりも考える力の育成を優先しようと、学習内容の3割削減や「総合的な学習の時間」の創設などを柱とした「ゆとり教育」が実施されました。
ところが、実際に「ゆとり教育」が実施されると、子どもたちは「ゆとり」を通り越して「のんびり」してしまい、「考える力」の育成は思うように進みませんでした。学習内容を精選するという「ゆとり教育」が、学力低下問題の一因になったのではないかという指摘もありました。

そこで出てきたのが、削除単元復活など「脱・ゆとり」の流れです。「脱・ゆとり」は、単に「改革前の昔の教育に戻す」という意味ではありません。「基礎・基本の知識はしっかり習得する」ことを重視したうえで、「ゆとり教育」で必要性を唱えていた「考える力」をも養っていこうとするものです。すでに、一部の大学入試、高校入試では変化が始まっています。これらの入試では、公立中高一貫校の適性検査問題のような「自分で解答を作り出す力をみる問題」が出されているのです。


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「進研ゼミ小学講座」は2020年新課程に対応して、リニューアル。基礎から応用までの学力向上はもちろん、自ら学ぶ姿勢を身につける。
学んだ知識を使って、自分なりの答えを導き出す。そんな体験を繰り返すことで、「自ら考え表現する力」を育んでいきます。

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