【回答:森上教育研究所】家庭学習・家庭内コミュニケーション<その1>
「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。
受験を迷っています
読解問題の対策として、読書に興味をもたせるには?
受験に向けた勉強のペースをつかめない子どもに、親としてできることは?
受験を迷っています
Q | クラスの多くの友達が中学受験する予定で、小学5年の娘も受験したいと言い始めました。本人が受験を簡単に考えているように見え、親としてはあまり賛成できないでいます。受験は、どのように決めればいいのでしょうか。 |
A | 「友達が中学受験をするから自分も」と考えるのは確かに物をねだる子どもを見るようで、親の目からは安易に中学受験を考えていると映るかもしれません。しかし、小学5年生が大きな目的を持っており、そのために中学受験をしたいというのも不自然です。 きっかけは偶然だが、そこから人生が変わることはよくあることです。きっかけを大事にして、そこで何を考えさせるかが重要です。「なぜ、あなたは中学受験をしたいのか?」を子どもに尋ねます。子どもが「友達が中学受験をするから」と答えたら、「なぜ、友達は中学受験をするのか?」「なぜ、あなたは友達と同じことがしたいのか?」・・・、と質問しながら子どもに考えさせます。その時、初めて子どもと親が中学受験について考え始めます。考えながら自分の感情と思考が整理されて、中学受験に対する目的が形になります。 明確な目的ができた時点で中学受験をすれば、受験勉強に対するモチベーションを保つことができるので、成功する確率は高くなります。親子で話しても、明確な目的ができなければ中学受験を止めればよいわけです。どちらにしても、受験を考えるチャンスとして捉えれば、次の高校受験や大学受験へのステップになります。 |
読解問題の対策として、読書に興味をもたせるには?
Q | 国語の物語文などの読解問題が苦手です。読んだ内容を具体的にイメージできないようです。「チャレンジ」の読解問題でも、正しく解答できません。 読書もさせたいと思うのですが、書店に行ってもテレビアニメの本ばかり見るし、学校の図書室から借りてくるのは科学の図鑑が多く、お話の本に興味が向かないようです。 小さい頃から読み聞かせをやってきてはいるのですが…。 いい対策はあるでしょうか。 |
A | 算数は偏差値65を超えているのに、国語は50を超えられない子どももいるようです。そのような子どもは「説明文はまだいいが、物語文や詩が苦手」という傾向が見られます。物語や詩が不得意な子どもは、情景描写の能力が欠けていることが考えられます。 筑波大学附属駒場中学校では、毎年のように大問で1題の詩が出題されます。筑駒を志望する生徒の個人指導を頼まれた私の知り合いの話ですが、その生徒は大手の塾でも算数はトップクラスでした。しかし国語が苦手で、特に詩の得点力をつけてもらいたいという要望だったそうです。 受験まであと数か月という時点で、最も力を入れた指導内容は「場面の情景描写」という基本的なものでした。物語の場面ごとの情景を絵に描いて、登場人物の心情や人間関係を絵に描いて見せ、解説し、設問に答えさせるところから始め、子どもに自分で絵を描いて解答できるように指導したということでした。詩は、物語の一場面の絵を描けばとてもわかりやすくなります。詩の指導はわずか3回程度で、合格点がとれるようになったそうです。試験当日は、国語がいちばん落ち着いて受験できたようで、筑駒と開成に合格しました。 情景描写力をつけるためには、多読は必要ありません。どのような本でもかまいませんので、お子さんの興味のある本の一場面を絵に描く練習をしてはいかがでしょうか? 絵日記も有効です。まずは、お子さんの興味のあるものから始めましょう。 |
受験に向けた勉強のペースをつかめない子どもに、親としてできることは?
Q | 中学受験に向けて、自宅にて通信教育で学習しています。 4年生までは「進研ゼミ」で順調にこなせていましたが、5年生から受験向けの教材で勉強を始めたところ、まずペースがつかめません。 算数はもちろんのこと、国語では一緒に横について勉強するとよくできるのに、自宅でテストをやらせてみると、30分の制限時間のところ、1時間かけてもまだ終わりません。なかなか答えを書き出せないようです。 私は仕事をもっています。限られた時間の中、どのように見守ればよいのでしょうか。 |
A | 5年生になれば学習内容は難しくなります。中学受験に向けての教材であれば、なおさらです。ここで、お子さんが勉強嫌いになってしまわないように指導することが必要です。また、いつまでも親がそばについていなければ勉強ができないというのでは困ります。 「問題文の理解→設問の理解→着目点→解答の方針→解答の記述」のような順序で解答を考えるとすれば、お子さんのケースは、解答はわかっていても「解答の記述」ができないので書き出せないのかもしれません。その場合は、模範解答をまねて、解答を書く練習をすればよいでしょう。お母さんが一緒に横についているときに、お子さんがどのステップで引っかかっているのかを確認し、1人で解答できるように指導してください。1人で学習するときは、できなかった問題は、引っかかったところがどこかを書き留めて、その問題は飛ばして、あとで親に聞くようにするとよいでしょう。わからない問題に引っかかり、時間だけが過ぎていく状況は勉強が嫌いになる原因となります。 子どもを見守るというのは辛抱の要ることです。子どもは親の目がなければ、つい遊んでしまうものです。「親にしかられるから勉強する」と子どもに思わせては失敗です。「私のことを本気で心配してくれる親は裏切れない」「親が喜んでくれるからがんばれる」と思えるように、子どもがやる気になるようなコミュニケーションをとることが大切です。 |