【回答:早川尚子】受験対策<その2>
「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。
記述問題の見直し方はどうすればいい?
登場人物の気持ちの読み取りが苦手。いい指導法は?
具体的な国語の指導法、その結果を教えてください
記述問題の見直し方はどうすればいい?
Q | 記述問題のテストの見直し方法をどのようにやっていけばいいでしょうか? |
A | 記述問題の見直しは、まず、設問の条件をきちんととらえているかどうかのチェックから始めます。設問にも「印つけ」をして、正確に読み直しをさせます。次に、文末の不一致をチェックします。「なぜですか」という問いの文末は「〜だから」、「どういうことですか」ならば「〜こと」、「どういう点ですか」ならば「〜という点」というように、文末を必ず一致させます。文末の不一致を避けるため、問題を解くときには「〜だから」、「〜こと」と設問の余白に書いておくとよいでしょう。 記述問題では、「全文を踏まえて」という条件以外は、設問の傍線部の前後を大きくとらえて読み直します。子どもたちは、傍線部の前だけを読んで、あるいは、傍線部の前後の狭い範囲だけを読んで解答しようとします。できる限り広い範囲を読んで見直しをすることが必要です。 また、キーワードを1つ見つけると安心して解答し終えてしまう傾向があります。キーワードは文中でくり返されていることが多いので、それを四角(□)で囲んではっきりさせておくことが、見直しをするときにおおいに役に立ちます。 さらに、解答した文章の意味が通っているかのチェックも必要です。子どもたちは、記述の解答をだらだらと一文で書こうとします。無理に一文で書くと、主語と述語の関係がわかりにくくなり、意味の通らない文章になってしまいます。 30字以上の記述ならば一文で書くことにこだわらず、つなぎ言葉を使ってわかりやすい文章に直せないか、もう一度考えてみるのもよいでしょう。 |
登場人物の気持ちの読み取りが苦手。いい指導法は?
Q | 登場人物の気持ちや気持ちの揺れ、変化の読み取りが苦手です。家ではどのようなことに気をつけ指導していけばいいでしょうか? |
A | 物語的文章では、うれしい、悲しいという気持ちがはっきり表されている場合と、行動や会話、情景から気持ちを読み取らなければならない場合があります。 私たちは心の中に、ある気持ちが起き、その結果、行動や会話をします。気持ちや考えなしには行動も会話も始まらないのです。子どもたちは、そこのところがよくわかっていないようなのです。 例えば、「雨が急に降ってきたとき、お母さんが傘を持って坂道を上ってくるのが見えた。僕は、お母さんの方へ走りだした。」という文章では、どこにも気持ちは書かれていません。しかし、傘を持ったお母さんを見たとき、「あっ、お母さんだ。傘持ってきてくれたんだ。うれしいな。助かった! ラッキー!」といういくつかのプラスの気持ちが「僕」の心の中にわいてきたということが読み取れます。 その気持ちが起きたから、「お母さんの方へ走りだす」という行動をしたのです。 このような気持ちの変化と行動について、日常生活でも少し気をつけてみると文章読解もスムーズにできるようになります。 読解文においては、登場人物がある行動をしたときは、どのような気持ちでそうしたのか、親子で文章の読み合わせをし、話し合いながら理解させます。 プラスの気持ち(+)、マイナスの気持ち(−)、驚く(!)気持ちなど自分でマークを決め、「印つけとメモ書き」をすると、気持ちの変化が目に見えるようになります。そして、その変化の原因となるできごとにも「印つけ」をしておきます。 こうすると、「なんとなくわかったつもり」の気持ちの読み取りも、「よくわかった」というように変化していきます。 |
具体的な国語の指導法、その結果を教えてください
Q | 実際に指導をされていたお子さんの変化の事例を教えてください。 |
A | 受験を目的とした指導の場合について述べさせていただきます。 夏前の大きいテストでは偏差値30前後。夏休み中、6回の集中指導後、秋口の模擬試験では偏差値60に向上した6年生の男の子の例をお伝えいたします。 指導が始まるまでに、それまでの大きなテストを分析した結果、文章自体を読んでいないと判断しました。 夏休み中の1回2時間、6回指導では、拙著『中学受験 お母さんが教える国語』、『中学受験 お母さんが教える国語 印つけとメモ書きワークブック』をもとに「印つけとメモ書き」を徹底させると共に、以下の3点について厳しく指導いたしました。 (1)つなぎ言葉に「印つけ」をし、特に「しかし、つまり」のあとの文章には、限定の「印つけ」を必ずすること ※限定の「印つけ」とは、ずるずるとした線ひきを防ぐために下図のように、線のひき始めと終わりを限定することです。 (2)理由を示す「〜だから、〜のために、〜ので」を○で囲み、上の余白に(理)とメモ書きをすること (3)くり返されている言葉は、四角(□)で囲むこと 文章を読んだあとには一緒に内容確認をし、それから、一人で解答させるといういつものとおりの指導です。こうして、毎回、物語的文章と説明的文章の2種類の文章を練習し、ご家庭ではこのやり方で時間制限をしないで塾の宿題をすること、また、『中学受験 お母さんが教える国語 印つけとメモ書きワークブック』18ページの「『印つけとメモ書き』をする箇所」をコピーして、毎日、復唱することをお願いいたしました。 4回目の指導ではお子さん自身が「文章を読めるようになった」と言うようになり、姿勢も筆圧も変化していきました。ただ、「時間に間に合わないかもしれない」という不安を訴えましたので、6年生の秋口でしたから「設問にざっと目を通し、読みながらできるものと、読み終えてからやるものを選別すること」の練習をしました。これが案外早く身につき、解答のポイントをおさえながら読めるようになりました。 このお子さんは、今まで読み方がわからなかったために、国語の点数が伸びなかったのです。6回の授業と本人の努力、そして、ご家庭の協力が結びつき、2月にはたいへんうれしいご報告をいただきました。 指導させていただきましたすべてのお子さんを通して、「一時期、時間制限なしに懸命に読み、文章を目に見えるようにしておくこと」が、この年齢の子どもたちには必要なことであることを改めて感じております。 |