【回答:森上教育研究所】家庭学習・家庭内コミュニケーション<その6>

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。そのようなときには、ここでご相談ください。お送りいただく相談には、中学受験をよく知る専門家の先生がたがお答えします。これまでに寄せられた相談へのアドバイスもご覧いただけますので、ぜひご活用ください。

塾に行かなくても、合格できますか?

スポーツと中学受験は両立可能でしょうか?

受験について、夫婦の意見が異なります

塾に行かなくても、合格できますか?

中学受験を考えていますが、塾に行くと毎日帰りが遅くなり、夕食も遅くなり、子どもの生活に負担がかかるようなので、塾には行かせたくないと思っています。「家庭学習で中学受験を乗り切る」というのは難しいでしょうか?
私の知り合いに、子どもを塾に行かせることなく家庭学習で有名中学に合格させた人がいます。彼は、中学受験の指導をした経験があるので塾に通ったことと同じで、純粋に家庭学習で中学受験を乗り切ったとは言えません。問題はここからです。娘さんが有名中学に入学後、塾に通わなかったことをクラスメートに話したところ、とても不思議がられたそうです。彼女にクラスには彼女以外に塾に通わなかったクラスメートは一人もいなかったのです。
中学受験の指導をした経験があるか、中学受験を経験した家庭教師がついた家庭学習であれば、「家庭学習で中学受験を乗り切る」ことは可能ですが、そうでなければ難しいでしょう。中学受験の算数は特殊で、教え方が難しく、経験がなければ子どもを指導することはできないからです。
もちろん実力相応の学校を志望するのであれば、上記のような家庭教師が付かなくとも「家庭学習で中学受験を乗り切る」可能性は高くなりますが、そうでなければ、中学受験に失敗することで、お子さんに傷が残る可能性を考えると、多少無理をさせても塾に通わせるか有能な家庭教師をつけて受験することを薦めます。

スポーツと中学受験は両立可能でしょうか?

小学4年生の次男が中学受験予定です。しかし現在野球のクラブに所属し、土日祝日はほとんど練習や試合が入ります。塾の家庭学習は、平日にどうにかこなしています。本人は、今後も野球をやめる気はさらさらないようですが、今後受験勉強も大変になってくることを考えると、両立できるのかどうかが気になります。スポーツと受験で両立されていた方はどのような工夫をされていたのでしょうか?あるいは、どこかでやはり受験に専念させた方がいいのでしょうか?
好きなスポーツや習い事を強制的にやめさせると、やる気を失い、反動で受験勉強に悪影響が出ることが考えられます。親はイライラすると思いますが、本人が自分から「やめたい」と言うのを待つべきでしょう。もちろん本人の学力や体力、精神年齢、野球をしている仲間が中学受験を目指している人が多いかどうかなどにもよります。
小学4年生の間は、野球と受験を両立させるためには、受験だけに集中している子どもよりも頑張らなければならないことを本人にも自覚させるべきでしょう。5年生になれば中学受験を目指している野球の仲間も少しずつ抜けていくでしょうし、だんだん受験勉強の負担は増えてくることでしょう。そして、模試等の成績が伸び悩んで来たときが中学受験に集中すべき時です。その時に本人が自分から「野球をやめたい」と言えるように今から子どもと話し合っておくべきです。
中学受験だけに集中したほうが受験には有利と考えるかもしれませんが、実は中学受験に3年間集中させることは難しく、どうしても中だるみの時期があります。その時期をうまく乗り越えなければ、成績が低迷し、後から受験勉強を始めた生徒に抜かされることになります。野球と受験勉強を両立させることで中だるみの時期を乗り越え、モチベーションを落とさせなければ、中学受験を成功させる可能性が高まります。

受験について、夫婦の意見が異なります

わが子に中学受験が必要なのか、夫婦で考えが異なり悩んでいます。夫は地元の公立中学でいいと考えているのですが、私は公立中学への不安や私立中学の評判の良さから、中学受験をさせたいと考えています。当の本人(小4男子)は、まだ受験について意識が芽生えていないという感じです。まずは、親の意見を一致させたいと思っているのですが、よいアイデアがあったら教えてください。
子どもの教育問題で両親の意見を完全に一致させることは難しいことです。両親の育った環境もバックグラウンドも異なり、価値観も異なるので、せいぜい互いを理解し両親の見解を1つにまとめるくらいしかできないと思うべきでしょう。しかし、子どもの教育問題で、この意見の統一は大事です。両親の意見が統一されていない中では、子どもは不安定となりがちです。
わが子にとって、地元の公立中学がよいのか? それとも私立中学がよいのか? は、誰にもわかりません。それぞれ一長一短がありますが、わが子の個性を伸ばしてくれる可能性が高い学校を選ぶべきです。私立中学と言っても多くの選択肢があるわけで、その中にはわが子に合う中学も合わない中学もあると思います。
わが子の個性を掌握していなければ、「わが子に合った学校」を選定することはできません。個性は性格(長所・短所)と能力(強み・弱み)で考えることができますが、両親はわが子の「長所・短所」は掌握していても「強み・弱み」までは、なかなかわからないようです。人生経験の中で「長所・短所」「強み・弱み」は明確になっていくので、小学生の子どもの個性を完全に掌握することは難しいと思いますが、まずは、両親でわが子の性格や伸ばしたい強みはどこかということなどから話し合ってみてはいかがでしょうか。

プロフィール



中学受験と私塾、中高一貫の中等教育と私学を対象とする調査・コンサルティング機関。私塾に『中学受験研究』、私学に『私学中等教育』を月刊で発行している。「わが子が伸びる親の『技(スキル)』研究会」を主催している。

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