湘南白百合学園中学校1年生 I さんのお母さま
今回は、ご長女が湘南白百合学園中学校に通われているお母さまにお話を伺いました。「中学受験は、確かに大変なこともあるけれど、親子が成長するいいチャンス」とおっしゃいます。苦手科目の成績が伸び悩むなど心配もありましたが、なるべく親が冷静になれるように工夫をしたそうです。その工夫とは何だったのでしょうか? (2009年3月19日)
profile 湘南白百合学園中学校1年生I さん 神奈川県在住。 I さんは、2008年4月に湘南白百合学園中学校に入学。 お母さまによると、「体を動かすのが大好きな女の子。マイペースだが、自分の考えをしっかりもっている」という娘さんです。「中学受験を通し、精神的にも成長した」I さん。今は運動部に所属して、中学校生活を楽しんでいます。 |
中学受験をは塾選びから始まる。マイペースな性格なので、ストレスをためないように、成績によってクラスが上下しない小規模塾に絞って塾を選んだ。
中学受験は、いつ頃から考えていましたか?
小学校のクラスの半分が受験をするという地域性もあって、小学校に入学した頃から、中学受験をさせようと考えていました。子どもも、小学校の友達が皆さん塾に行くので、自分も行くものだと思っていたようです。塾を選ぶにあたっては、成績でクラスや席順が頻繁に替わるような大規模塾では、親子共に成績を気にしてしまうと思ったので、個々に目が行き届く小規模塾を中心に考えました。
ちょうどその頃、PTAでご一緒のかたのお子さんが学校の学習発表会で理科の発表をした様子がとても堂々としていて、しかも物事のとらえ方がとてもすばらしいので伺ってみたら、「塾の理科の授業がユニークなんですよ」と教えてくださったのです。その塾が小学3年生向けの通信教育を行っていたので、さっそくやり始め、4年生からそのまま塾に通い始めました。
その塾では、教科ごとにクラスの振り分けをしていて、テストの成績だけでなく、やる気や、子どもの特性も考慮しながらクラスを決めてくださるので、子どもは、のびのびと通っていました。
後々算数が難しくなって伸び悩んだときにも、他の科目は安定していたので、劣等感をもたずにすみました。
「受験手帳」で、子どもの学習状態や自分自身の心の葛藤(かっとう)を整理。入試直前には入試情報を整理した「入試ノート」が大活躍。受験本は貴重な情報源。
では、成績で一喜一憂することはなかったのですか?
いいえ、特に5年生になると、苦手な算数がより難しくなって、定着する前に次々に新しい学習内容が出てくるので、親も子もいちばん大変でした。そうはいっても、子どもはマイペースなので、成績が悪くても特に焦る様子もなかったのですが、私は娘と向き合っているとどんどん暗くなってしまい、「もうやめようか」と言ってしまったり、「もっと楽な塾に転塾させようか」と考え込んでしまうこともありました。
そんなときに主人が中に入って、「大変なら塾を変わってもいいし、受験そのものをやめてもいいんだよ」と子どもと話してくれたのですが、子どもは「算数が難しくて大変だけれど、がんばるからこのまま塾を続けさせて」と言うではありませんか。
それでも私は不安でしたが、「子どもがやると言っているんだから、信じて見守ればいい」と主人にびしっと言われて、私もやっと腹が据わりました。
私は、どちらかというと、叱咤激励(しったげきれい)してお尻をたたくというより、オロオロしてしまう母親でした。相談できるような先輩ママの知り合いもいなかったので、いつも漠然とした不安がありましたね。
私にとっても中学受験は初めての経験で、どっしりと構えることはなかなか難しかったですね。
親としての不安な気持ちをどのように解消していたのでしょうか?
そんなときに支えになったのは、先輩ママの声が載っている中曽根陽子さんの『後悔しない中学受験』(晶文社)や、田中貴先生の『中学受験これで成功する! 母と子の「合格手帳」』(講談社)などの受験について書かれた本でした。田中先生の本は、巻頭に「中学受験でこの子の人生は決まらない」と書いてあったのが心に響き、折にふれて読み返して、初心に立ち返っていました。
また、子どもが5年生になった頃から、私自身が「受験手帳」を作って、琴線にふれた言葉を書き写したり、中学受験をする意味などを思い返して書き留めたり、子どものテストの振り返りや、見学に行った学校の様子や感想などを整理して書いていきました。
勉強に関しては、田中先生の本にも、「テストが返ってきたら、偏差値を気にするのではなく、内容をよく振り返る」と書いてあったので、塾内の毎回のテストを見直して、例えば「平均点そこそこだけれど、内容が良い」とか、「字はきれいだし、知識不足で失点した部分をフォローすればこれから伸ばすことができる」「時間切れでマイナス5点」とか、「途中式は書けているが計算まちがいをしている」というように、いいところや問題点を見つけてメモもしました。
こうして手帳に書くことで、情報を整理するだけでなく、子どもの状態を客観的に把握したり、自分自身の感情とも向き合って、熱くなった頭を冷やすことができるようになりました。実際に、この手帳を書くようになってから、子どもを怒るというより、2人でよく話し合うようになりました。その話し合いの過程で、娘も自分の受験を自覚するようになっていったのかもしれません。
6年生の11月頃からは、もう少し大きめのノートを用意して、学校ごとの入試スケジュールや必要な写真の枚数、受験する予定の学校までの経路や時刻表、入学手続きの期限や必要な金額などを整理してまとめた「入試ノート」を作っていきました。
入試直前のスケジュールについてはカレンダーも活用しましたが、情報が1冊にまとめられて持ち歩けるこのノートは、とても役に立ちました。実際に、入試当日雪が降った日があったのですが、あらかじめいくつかの経路やバスの時間を調べていたので、慌てずにすみました。
お子さんは、どのようにして苦手なところを克服していったのでしょう?
私が、「入試ノート」を作るようになってから、情報はあちこちにバラバラに書くのではなく、1冊のノートにすべてまとめていくほうがいいということがわかったので、子どもにも教えたところ、自分でまちがい直しと振り返りの「要点まとめノート」を作るようになりました(文末の写真参照)。ノートは、小型のメモ帳タイプで、受験までには何冊も作って持ち歩き、すき間時間を利用して勉強していたようです。
最終的には、このように子どもが自分で勉強にも取り組むようになっていきました。私としてもできることはしたかったので、テストを振り返って、できなかった問題や漢字を抜き出して、まちがい直し問題をA5の紙1枚にまとめたものを作りました。
本当は、これは学校に行く前、朝にやってほしかったのですが、朝はなかなか起きられません。そうはいっても、体育大会の朝練があるというときには、自分でちゃんと起きられるのですから、勉強になると起きられないのは気持ちの問題ではないか…とずいぶん話し合いました。結局、塾に行く前の時間に1枚はやると決めて、入試直前まで続けました。
受験校はどのようにして決めましたか?
学校選びは、娘の希望がはっきりとしていたので、その条件に合うところを探していきました。
娘の希望とは、
1.すいた電車で通えるところ
2.郊外にある学校
3.学校らしいキャンパスのある学校
というものでした。
その条件で探すと、自然と家から下りの電車で通える学校に絞られていって、いくつか見学をしているうちに、湘南白百合学園が第一志望になりました。
最終的には、
1.清泉女学院
2.湘南白百合学園
3.鎌倉女学院
と受験しました。この他には、聖園女学院、神奈川大学附属などを併願校として考えていましたが、結局受験はしませんでした。
娘が選んだ5つの学校は、親にとってもそれぞれすばらしい学校だと思いましたので、志望校決定で意見が合わないということはありませんでした。
塾では、女の子はフェリス女学院を目標に据えるお子さんが多かったのですが、娘は一貫して「私は湘南白百合が第一志望」と言っていました。
実は、6年生になって成績が伸びてきたときにちょっと欲が出て「チャレンジ校もつくってみたら」と言ったこともあったのですが、「お母さんのための受験ではない」と言われてしまい、娘の成長を感じると共に、自分自身が恥ずかしくなりました。
娘は、「フェリスを志望するような人は、算数の演習でも、さっさと解き終わって帰るけれど、自分は違う」と冷静に自己分析をしていました。