音読をする意味は?効果を上げる方法や保護者のサポートのコツも
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宿題の定番である音読は、学力向上にたいへん効果的なものです。とはいえ、お子さまの中には、音読をする意味がわからず、疲れてしまっているケースもあるのではないでしょうか。そこで、効果を踏まえたおすすめの音読法、保護者のサポートのコツまで、教育評論家の親野智可等先生に伺いました。
読解力向上だけじゃない! 音読で得られる4つの効果
文章を声に出して読む音読を行うことで、黙読だけでは得られない4つの効果を得ることができます。
1. 文章の理解が深まる
音読では、黙読で起こりがちな読み飛ばしがなくなるため、文章を丁寧にしっかり読むことができます。また、自分の声をとおして耳からも情報が入ってくるため、目から情報が入るだけの黙読よりも情報量が多くなります。そのため、内容を整理しやすくなったり、黙読では気付けなかった文脈をとらえたりできるようになります。
「そうか……主人公はここで気持ちに変化が生まれたのかも」といった具合ですね。音読をすることで、文章の理解度は格段に深まるといえるでしょう。
2.全体構成がつかめるため、授業に付いていきやすくなる
音読を繰り返すことで、文章一つひとつを丁寧に理解できるようになるだけでなく、文章全体の構成もつかめるようになります。話の展開を踏まえて「どこに何が書いてあるか」を押さえることができるため、授業で先生が説明している部分も追いやすくなるでしょう。また、授業中の先生の問いかけに対しても、答えに当たる部分がどのあたりに書かれているか見当を付けやすくなるはずです。文章の理解度が深まることで、授業にも付いていきやすくなるため、授業での学びも深くなるでしょう。
3.黙読のスピードが上がる
音読がスムーズにできるようになると、黙読もスムーズになります。音読をとおして、文章の構造や話の展開も含めて理解する力が養われることで、黙読をする時にも、素早く内容を把握することができるようになります。
黙読のスピードが上がれば、テストの際にも大いに役立ちます。
4.語彙力・表現力が向上する
音読をすることで、語彙(ごい)力や表現力も高まります。文章を声に出して読むことで、さまざまな語彙や表現を、実際の使い方と合わせて体感的に理解できるためです。
「この言葉は、こんな文脈で、こんな意味合いで使われるんだな」と感覚が磨かれていくのです。それにより、実際の文章や会話の中でも使っていけるようになります。
音読の効果をあげる方法はさまざま。お子さまに合わせた選択を
音読の効果を高めるためには、音読のやり方も大切です。ただ声に出して読むだけに思える音読ですが、徐々に上手に読めるようにしていくものから、楽しんで取り組めるものまで、さまざまな方法があります。音読のスキルは、個人差が大きいので、お子さまの現在の状況に応じた方法を取り入れていきましょう。
音読ビギナーでまだ慣れていない場合
音読にまだ慣れていないお子さまには「追い読み」がおすすめです。追い読みとは、一文を文節や短い意味のまとまりで区切って、初めに保護者のかたが読み、お子さまがそのあとに続くという読み方です。
保護者「むかしむかし」
お子さま「むかしむかし」
保護者「あるところに」
お子さま「あるところに」
といった具合ですね。ある程度、スムーズに読めるようになったら、「むかしむかし あるところに」と1回で読む量を長くしてみてください。無理なく、音読に慣れていくことができるようになるはずです。
音読に自信が持てない場合
音読に自信が持てないお子さまには「部分完成法」がおすすめです。部分完成法とは、先ほどご紹介した「追い読み」のステップアップバージョンで、まずは一文を練習、一文目がすらすらと読めるようになったら二文目、二文目もすらすら読めるようになったら、一文目とつなげて読む……というように、少しずつ読める部分を増やしていくという方法です。
読める範囲が広がっていくにつれて、少しずつ自信を付けていくことができるでしょう。
文字を追うこと自体に困難を感じている場合
「どこを読めばいいの?」と、文字を追うことから難しさを感じている場合は、読みやすい環境を整えてあげることから始めてください。教科書を使う場合は拡大コピーをして、タブレットであれば文字を拡大する、また、どこを読めばいいかを手で指し示すといった工夫ができるといいですね。文字を追いやすくなることで、お子さまも安心することができるでしょう。
音読に飽きた……を解消するには?
音読は大切ではあるものの、単調でマンネリ化してしまいがちでもあるもの。毎日の音読の宿題で「もう同じ文章ばかり読むの飽きた!」というお子さまもいらっしゃるでしょう。マンネリ化脱出のカギは、楽しくなる工夫をこらして変化を付けること。次のアイデアから、お子さまが思わず取り組みたくなるものを選んでみてくださいね。
思わず取り組みたくなる9つの音読法
新記録に挑戦! チャレンジ系音読法
・完璧読み:つかえたり、読み間違えたりせずに完璧にどこまで読めるかにチャレンジする方法。「記録を更新したい」とのモチベーションにもつながります。
・暗記読み:文章を見ずにどこまで暗記できているかにチャレンジする方法。特に、物語や小説は暗記がしやすく、おすすめです。
チーム戦で挑む! 協力系音読法
・一文交代読み:親子や友達で一文ずつ順番に読んでいく方法。チームワークが試されます。
・一斉読み:みんなで声を合わせて読む方法。スピードやリズムもうまく合わせて読めるようにしましょう。
違う自分になってみる! 表現・なりきり系音読法
・アナウンサー読み:アナウンサーのように滑舌よく、はっきり、かつスムーズに読む方法。楽しみながら、丁寧に読む練習ができます。
・表現読み(朗読):文章に書かれている情景や、登場人物の気持ちを表現しながら読む方法。聞き手の心に訴えかけるように読めるといいですね。
・ミュージカル読み:ミュージカルのように節や動作、ダンスも取り入れながら読む方法。ちょっと大げさなくらいに抑揚を付けるのもGOOD。表現する楽しさを存分に味わいましょう。
・お経読み:お経のような節を付けて読んだり、落語の「寿限無(じゅげむ)」のように長文を一息で読んだりする方法。意外にもハマる方法です。
・ラップ読み:ラップのようなリズムで読んだり、「YO!」「Yeah!」と合いの手を入れたりしながら読む方法です。聞き手である保護者のかたとコール&レスポンスをするのもいいですね。
録音の活用もおすすめ
マンネリを感じている時は、ずっと同じことばかりで成長実感が持てないことも多いものです。そのため、録音を活用して上達具合を実感できるようにするのもおすすめです。
たとえば音読を録音することを習慣付け、たまに始めたころの録音を聞くと、お子さまがどれだけスムーズに読めるようになったかがわかるはずです。また、お子さま自身が今現在の音読を録音したものを聞くことで、読み方を客観的にチェックし、現時点での課題に気付くことで、改善への意欲も高まるでしょう。
音読の題材の工夫も効果的
国語の教科書以外の題材を音読することで、マンネリ解消はもちろん、音読そのものを楽しむことができるようになります。ポイントは、お子さまの好きなことに関わるものを音読するということ。お気に入りのアニメや映画の小説版、興味のある分野の図鑑、あこがれの有名人の伝記、好きな歌の歌詞など、どんなものでもOKです。好きなことに関わるものであれば、マンネリとは無縁。わくわくしながら、夢中になって音読するはずです。
保護者のかたは注意や間違いの訂正より、音読が楽しくなるサポートを
保護者のかたは、日々の音読の宿題のサポートに悩むこともあるでしょう。「どうすればうまく読めるようになるかな」と頭を抱えたり、ついつい、細かく指摘してしまって気付けば険悪な雰囲気に……なんてこともあったりするかもしれませんね。それだけ一生懸命取り組まれているということだと思います。
音読のサポートでは、しからないことが鉄則です。うまく読めないのは仕方のないことです。しかってしまうと、苦手意識を強くしたり、音読そのものが嫌いになってしまったりする可能性も。いいところをほめること、音読を楽しくする工夫をすることを心がけられるといいですね。
「そんなこと言われても、ほめるところなんてないんです」と思われるかたもいらっしゃるかもしれませんが、どんなささいなことでもほめてあげれば大丈夫です。「はっきり読めたね」「落ち着いて読めたね」と読み方をほめてもいいですし、「いい声、出てたね」「聞きやすい声だったよ」と声をほめるのもOK。「気持ちがこもっていたね」と表現力をほめてあげれば、自信にもつながるはずです。ほめ方のバリエーションを増やしていきましょう。
また、「うまく読めるようにサポートしなきゃ」と気負うより、親も一緒にエンジョイしてしまおうという大らかさがあるほうが、お子さまも音読が好きになるはずです。保護者が率先して、ラップ読みやミュージカル読みをしてみせれば、お子さまも「ぼくだって」「わたしのも聞いて」と前向きにチャレンジできるでしょう。楽しむのが一番の上達への近道です。
高学年以降も音読が習慣化すれば、勉強への効果も
音読は学年が上がるにつれ、宿題として出されることは減っていくものです。とはいえ、高学年以降も続けていくことをおすすめします。というのも、音読をすることで勉強へのさまざまなよい影響があるためです。
たとえば、音読は勉強へのエンジンをかけるのに効果的です。「今日は疲れているし、勉強したくないな」という時は、あまり難しい思考を必要とせずハードルの低い音読にとりあえず取り組むことが、ウォーミングアップになります。勉強は簡単なものから始めることで、スイッチが入りますからね。
また、国語以外の教科の音読をしてみるのもよいでしょう。音読することで、難しい内容も理解しやすくなるもの。勉強が難しくなる高学年以降、特に理科や社会の音読はおすすめです。因果関係を整理して理解したり、歴史の全体の流れをとらえたりすることに役立つでしょう。
また、音読は勉強だけでなく、将来的に役立つスキルをも強化することができます。実際に声に出してさまざまな言い回しの使い方を体感することで、日本語の感覚が研ぎ澄まされ、語彙力・表現力が磨かれることはもちろん、音読をとおして内容を深く理解することで、知識や教養を高めることもできるはずです。
まとめ & 実践 TIPS
音読には、読解力を高めるだけにとどまらず、幅広い効果があることに驚いたかたもいらっしゃるのではないでしょうか。お子さまが音読を習慣化できるようにするためにも、楽しみながら取り組めるサポートをしていけるといいですね。
編集協力/岡聡子、Cue`s inc.
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