音読をする意味は?どんな効果がある?得られることや効果を上げる方法
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音読は、学力向上に非常に効果的です。とはいえ、どんな効果があるのかわからず、毎日の音読の宿題に疲れてしまっているお子さまもいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、音読の効果からおすすめの音読法、効果を高めるコツまでご紹介します。
音読は学力向上のために必要な勉強法
文章を声に出して読む音読を行うことで、黙読では理解できなかった文章が理解しやすくなります。大人でも、取扱説明書や契約書などの難解な内容も、声に出して読むことで頭が整理されたという実感があるのではないでしょうか。
音読は、文章の内容を理解すると同時に、音やリズム、アクセントなどの発音の練習にもなります。
音読と朗読はどう違う?
朗読は、音読よりも演技を重視した読み方です。文章の感情や表現をより深く理解し、それを音や抑揚などで表現することが求められるため、朗読をすることで、表現力や演技力を高めることができます。
音読で得られる効果7つ
音読で得られる効果は、学力に関する部分から、内面に関わる部分まで多岐にわたります。7つの効果を見ていきましょう。
1:脳の活性化により記憶力が向上する
音読を行うことで、脳の前頭前野が活性化されることが研究でも明らかになっています。前頭前野とは、記憶や思考、判断などを司る部分。脳内の前頭前野が活性されることで、記憶力も向上するといわれています。そのため、勉強の初めなどに取り入れると効果的です。
2:語彙力・読解力の向上
音読することで、語彙力や読解力も向上します。なぜなら、声に出して読むには、漢字の読み方や単語の意味、文の流れや文章の切れ目を考えながら読むことが必要になるため、自然と、文章構造や論展開を考えるようになるからです。
また、音読をするということは、文章を目で追い、声に出し、自分の耳で聞くということ。視覚と聴覚の両方が刺激され、文章理解も進みます。この積み重ねで、確かな読解力が積み上がります。
3:黙読が速くなる
音読は、最初はつっかえながらでも、徐々にすらすら読めるようになるものです。その理由は、日本語のリズムに慣れ、語彙や文章構造、論展開を理解する力が伸びるから。そうして身につけた力は、黙読にも効果を発揮します。内容をしっかり押さえながらも読むスピードを速くすることができるようになるでしょう。
4:勉強意欲が高まる
音読には、勉強へのモチベーションを高める効果もあります。「なんか勉強したくないな・・・」と気分が乗らないときには、音読をとっかかりにするのがおすすめ。「作業興奮」と呼ばれる作用で、初めは気乗りしなくてもやる気が出てくるはずです。
作業興奮とは、ドイツの心理学者エミール・クレペリンが発見した作用。気乗りせず、興味のないような作業でも、やっているうちにやる気が出てくるというものです。
5:気持ちが落ち着き、ストレス軽減
音読で脳の前頭前野が刺激されるとセロトニンが分泌されます。セロトニンは、興奮や攻撃を助長するアドレナリンを抑え、気持ちを落ち着かせる作用のあるもの。音読により、ストレスを軽減して、リラックスした状態を整えることができるでしょう。
6:コミュニケーション力の向上
音読により活性化される脳の前頭前野は、コミュニケーション能力も司っています。また、音読をすることで、発声に慣れて滑舌が良くなったり、声を出すことへの苦手意識も軽減されたりするでしょう。そのため、普段のコミュニケーションにも効果が発揮されます。
7:自制心が育つ
脳の前頭前野は、感情をコントロールする役割も司っています。そのため、音読をすることは、気持ちを落ち着かせ、感情を制御することにも役立ちます。その積み重ねで、自制心が育ち感情に流されなくなっていくでしょう。
音読の効果を上げる方法6選
音読効果を最大化するためには、ポイントを押さえたやり方で取り組むことが大切です。6つのコツをご紹介します。
1:朝に音読する
脳を活性化させる音読は、朝行うことがおすすめです。朝に取り組み、脳を活性化させることで、その日1日の学習効果を高めることができるでしょう。科学的に見ても、朝は脳が最も働く時間帯です。
2:上手に読めなくても叱らない
音読は、最初から上手に読むことが目的ではありません。音読を通して、日本語のリズムに慣れたり、文の構造をつかんだりして理解を深めることが目的です。そのため、流暢さやスムーズさにこだわりすぎないようにしましょう。「つっかえないの!」などと叱ると萎縮して、ますます上手に読めなくなってしまいます。
3:毎日音読する
音読の効果は、毎日継続することで最大化します。気の向いたときにするだけでは、効果も半減してしまうもの。毎日続けて、語彙力や読解力を高めていきましょう。そのためには、1日の中で取り組むタイミングを作っておくことがおすすめです。1日、1週間、1ヶ月と積み重ね、習慣化していきましょう。
4:読む文章を定期的に変える
音読は脳を活性化させますが、同じ文章だけをずっと読んでいて暗記のようになってしまうと脳が刺激を受けにくくなります。そのため、ある程度繰り返して上手に読めるようになったら、違う文章にチャレンジしていきましょう。教科書やテキストだけでなく、新聞コラムやニュース、小説などを取り入れるのもおすすめです。
5:集中できない場合は、耳栓やヘッドフォンをする
周りが騒がしかったり、物音が気になったりして集中できない際は、耳栓やヘッドフォンを活用するのがおすすめです。耳をふさいだ状態でも、骨伝導で体の内側から声が伝わるため、耳で聞くのと効果は変わりません。
6:徐々に音読スピードを上げる
音読に慣れてきたら、読むスピードをアップさせるのがおすすめです。スピードが速いほうが、脳も処理速度も速めなければならないため、脳にとってより大きな刺激となります。
小学校の宿題に音読が出る理由
小学校では、音読の宿題が出されることが多いものです。保護者も音読を聞いたり、コメントカードに記載したりすることが求められますが、なぜ音読の宿題が重要視されているのでしょうか。その理由は、5つあります。
1:内容理解を高めるため
目で見た文章を声に出し、耳で聞く音読は、視覚と聴覚との両方を刺激するものです。また、音読することで意味のまとまりを抑え、文の構成や論展開をつかみやすくなります。それにより、内容理解が高まり、学習効果を最大化できるため、音読の宿題は欠かせないものとなっています。
2:読解力を高めるため
音読によって、語彙力、読解力が高まりますが、それは、国語だけでなく、算数の文章題や社会の資料読解など他の科目にも役立ちます。このように、音読による読解力向上は、全ての科目で学習効果を発揮する土台となるものとなります。
3:大きな声で読む練習
授業での発言や発表は、通常の会話とは違うボリュームで話すことや、伝わりやすい話し方などが求められます。そのトレーニングとして、音読で聞き取りやすい発声やトーン、スピードを行うという意図もあるようです。
4:リズムをつかみ、テンポ良く日本語を話すための練習
音読を通して、日本語のリズムやテンポを身につける目的もあります。音読を通して、日本語のリズムや文構造の型をインプットしていけば、話すというアウトプットにも効果が発揮されるでしょう。
5:黙読の練習として
音読を通して黙読の力をつけることも、音読の宿題の大きな目的です。音読を積み重ねることで、文構造や論展開を理解する力がつき、黙読の際にも生かされるようになります。黙読ができるようになると、読める量も飛躍的にUP。より効果的に学習を積み上げていきやすくなるでしょう。
子どもが音読している際に保護者が注意すること
音読の効果は、保護者の関わり方のよって高まりもすれば、半減することもあります。つい、正しく読ませなきゃ・・・と思ってしまいがちなものですが、それはNG。次の2点を心がていきましょう。
つかえたり、読み間違えたりしても叱らない
音読の目的は、正しく上手に読むことではありません。叱ると萎縮して、ますます上手に読めなくなるという悪循環に陥ってしまいます。それどころか、萎縮すると脳の活性化も十分にされず、伸びる芽を摘んでしまうこととなるため、注意しましょう。
すぐに感想を伝える
読み終わったら、すぐにフィードバックすることが大切。それにより、脳はさらに活性化するためです。これは、脳科学で「即時フィードバック」と呼ばれる効果となります。
フィードバックは、ポジティブなものであることが大原則。次の2点を伝えるようにしましょう。
前向きな感想を伝える
まずは、前向きな感想を伝えましょう。「上手だね」という言い方しか浮かばない・・・という方もいらっしゃる方もいるかもしれませんが、褒め方のバリエーションはたくさんあるものです。「やさしい声で読めたね」「大きな声で元気があったね」「ていねいに読めていたね」「スラスラ読めてすごい!」「聞き取りやすいスピードだったよ」など、何が良かったかも含めて伝えられるとよいでしょう。
質問とセットで褒める
お子さまが自分の音読を振り返ることができるよう、質問とセットで褒めるようにしましょう。「ここのセリフをゆっくり読んだのはなぜ?」などお子さまの工夫を問いかけると効果的です。
音読の宿題は、保護者としては「忙しい中、音読を聞くのは大変」「仕事があるから、時間を作れない」と思うこともあるかもしれません。しかし、効果を最大化するためには保護者の関わりは欠かせないものです。期間限定の特別な親子の関わりと意識して、サポートをしていくようにしましょう。
学年や教科別のおすすめ音読方法
音読は、学年や教科、目的により、効果的な方法があるものです。お子さまに合った方法を見つけてみてください。
小学校低学年・中学年におすすめの「名文音読」
頭の柔らかい小学校低学年・中学年のうちに、さまざまな日本語のリズムに慣れておくのがおすすめです。そうすれば、中学や高校で習う読み応えのある文章への抵抗感も軽減させることができるはずです。
材料としては、古典や近代の名文がおすすめ。百人一首や太宰治の『走れメロス』、落語の『寿限無』など、リズムの良いものに取り組めば、滑舌のトレーニングにもなるでしょう。
小学校高学年には中学受験にも効く「新聞音読」を
高学年になったら、社会に目を向ける視点も強化できる新聞音読がおすすめです。新聞はニュースのジャンルも多く、コラムもあるため、材料の選択肢が多く飽きづらいのがメリット。中学受験する人にとっては、時事問題のトレーニングにもなるでしょう。
朝刊で朝音読という習慣を身につければ、継続もしやすいはずです。1分で音読する記事を選んで、5分音読などお子さまなりの習慣作りができると良いでしょう。
中学生は「スピード音読」にトライ
スピードをあげて高速で音読すると、通常の音読以上に脳が活性化され、頭の回転も速くなると言われています。小学生と違い、宿題で音読が出ることが少なくなる中学生だからこそ、家庭でスピード音読に取り組みましょう。
スピード音読のコツは、理解できない部分があっても止まらずに、意味のまとまりをテンポよく一息で読むこと。文章全体をざっとつかむ訓練にもなりますし、速読のトレーニングにもなります。
テストや受験のリスニングにも効果的な英語の音読
音読は、英語のリスニング力を鍛えることにも効果を発揮します。ただし、正しい発音がわかっていないと効果が少なくなってしまうため、音声付きの教材で取り組むのがおすすめです。正しい音声を聞いてから、段落や意味のまとまりごとに音読していくようにしましょう。音読のポイントは次の通りです。
・ 強く発音されているところと、弱く発音されているところを見つける
・ 長く発音されているところを見つける
・ 音声変化に気をつける(meet youは「ミーチュー」など)
まとめ & 実践 TIPS
音読は、脳を活性化し、記憶力や集中力、読解力など様々な力を高める効果があります。お子さまにも、その効果や効果を高める方法を伝え、楽しみながら取り組めるようにサポートしていってあげてください。保護者の感想やフィードバックも音読の効果を決める重要なキーとなるため、前向きな感想と工夫を問う質問を心がけていきましょう。
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