湘南白百合学園中学校1年生 I さんのお母さま

受験を通していろいろ葛藤もあったが、最終的には子どもの成長を実感。受験をさせてよかった!

おけいこ事との両立はどのようにされていましたか?

ずっとピアノとテニスを続けていました。ピアノは6年生の4月の発表会を最後にやめましたが、テニスは10月まで週1回2時間続けました。体を動かすことが大好きな子なので、「汗をかくとやる気が出てくる」と言っていました。運動することでいい気分転換になっていたようです。
6年生になると塾のスケジュールが詰まっていたので、遊びの時間もほとんどとれなくなってしまいましたが、下の子が「家族でどっか遊びに行きたいな」と言ったときには、時間をつくって、6年生の10月に「横浜・八景島シーパラダイス」に出かけて1日遊んだりもしました。受験生である娘も久々の休日で、とてもうれしそうでした。
このように、勉強だけで追い込むのではなく、上手にどこかで息抜きをさせることも大事だと思います。


受験を通して、親子関係はいかがでしたか?

おとなしい子だと思っていたのですが、塾に入ってからしっかりとしてきた半面、口答えをすることも多くなってきました。
例えば、私が勉強について指摘をすると、「じゃあ、お母さんが今すぐ解いてみてよ」と挑戦的な態度をとる。私もその場ですぐ解ける問題ばかりではないので、悔しいですから、子どもが学校に行っている間に問題を解いたりしました。しかしやってみると、これがなかなか難しい。5年生になると算数が急に難しくなって、大人でも簡単には解けないんですね。そんなことを1か月ほど続けているうちに、「学校に行って勉強をしてきて、さらに塾に行ってこんなに難しい勉強に取り組んでいる娘は、なんてがんばっているんだろう」と心から思えるようになってきました。

私の態度が変わると不思議と娘の態度も変わってきました。さらに、「受験手帳」を書くようになって、できているところや足りないところを具体的に話すことができるようになってからは、娘も納得して、私の話をよく聞いてくれるようになりました。
他にも、生活面で娘の態度が悪いときには、家族のサポートがあって塾に通えていることを自覚させたくて、送迎をストップしたこともありますし、食べ終わったお弁当箱を流しに出さないときには、お弁当を作るのをやめたこともありました。送迎をストップしたときには、2、3日は娘も抵抗してバスで通っていましたが、バスだと時間がかかるのでさすがにこたえたようで、そのときは手紙で「送ってください」とお願いしてきました(笑)。

どこかで、「自分は塾に行っていて大変なんだから」という気持ちがあったのでしょう。小学生なので、無理もないですね。
でも、私は「受験も大切だけれど、周りに感謝したり、人を思いやる気持ちを忘れてほしくはない」と思っていましたので、そのメッセージは折にふれて娘に伝えてきました。どこまで伝わっているかはわかりませんが、先日その話を娘にしたら、「そんなこともあったような、なかったような…ハハハッ」と笑っていました。
あとから考えれば「こんなことで、なんで?」と思うようなことで親子でぶつかることもありましたが、そのときは精一杯だったし、葛藤をくり返しながら、だんだん親子共に成長していけたのだと思います。


最終的な結果はいかがでしたか? また、中学入学後の様子を教えてください。

念願の第一志望校に合格できました。いいご縁をいただけて、本当によかったです。
それまでは、常に誰かが一緒でないと不安だった娘も、中学生になったら、一人で行動ができるようになりました。勉強面に関しては、学校から家庭学習用のプリントがたくさん出ていて、宿題をこなすのが大変なようですが、親から言われなくても一人でやるようになりました。環境の影響はとても大きいものだと思います。現在は運動部に入部して、充実した中学校生活を送る娘を見ていると、中学受験をさせてよかったと思います。
私自身についても、これまで子育てを中心に過ごしてきました。それだけに、中学生になったとたんに手が離れて、少し寂しい気持ちもありますが、「これからは子離れをしていかなくてはいけないな」と思っています。


これから受験されるかたへのメッセージをお願いします。

中学受験は親子で成長をするチャンスです。確かに、その渦中は大変なこともあったけれど、今となってはけんかも笑える思い出で、そういう経験を通して親子で成長もできたのではないかと思っています。
家族でよく山登りをするのですが、中学受験も山登りに似ていると思います。
なぜなら、
1.初めはなだらかな道が続き、あとでだんだん険しくなってくる。
2.予期せぬことが起こる。
3.頂上までルートは多岐にわたり、家族で選ぶことができる。
4.登り始めたら、途中でやめるのはなかなか難しい。
からです。
皆さんも、途中で思い悩むことがあると思いますが、長い道のりです。そんなときには、道端に咲く小さな花を眺め、気持ちを整理して少しずつ少しずつ前に進んでください。悩んだり、迷ったりした分、大きな充足感が待っていると思います。
「子どもを信じて見守ること。話し合って前に進むこと」これは、受験初心者の私が、娘から学んだことです。がんばってください。


  • 上 入試直前期に作っていた「入試ノート」(受験校ごとに、入学手続きの受付時間や必要な金額などの情報を整理していた)
  • 左下 お母さまの「受験手帳」(心に残った言葉や、塾のテストの結果の振り返りなどを書き留めていた)
  • 右下 お子さんの「要点まとめノート」(まちがえた問題や、重要なポイントをまとめていた)


<取材後記>
中学受験は子どもも思春期に差しかかる時期と重なり、かかわり方によっては、ときに親子関係にも軋轢(あつれき)が生じることがあります。「中学受験を通して、親子で成長した」と実感されたということですが、「受験手帳」を作ったことで、親が状況を客観視して、冷静になれたことが大きかったのですね。
ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか?(教育ジャーナリスト 中曽根陽子)


プロフィール



教育ジャーナリスト、「登録スタッフ制企画編集会社<ワイワイネット>」代表。塾取材や学校長インタビュー経験が豊富。近著に『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)。

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