私立大学付属中学校1年生 お母さまの日高のり子さん

■学校選びも親の大事な仕事。本人の意思を尊重しながら、成績に応じていろいろな学校に足を運び、教育内容に注目して選んだ。

学校選びはどのようなステップを踏みましたか?


子どもの成績に応じて、だんだん可能性を広げていきました。最初は子どもの成績が客観的にわからないので、近所の学校から見ていきました。
勉強に関してはほとんど私が見ていましたが、学校見学は父親にも行ってもらうようにしていました。ある程度子どもに合う環境を見定めて絞ってから、子どもを連れて行くようにしました。子どもの好みがはっきりしていたので、学校選びもある意味楽だったかもしれません。
子ども自身の学校選びのポイントは、明るく、荒れていなくて、のびのびしている学校。緑が多くてトイレがきれいなところということでした。

親としては、進学実績より教育内容に注目しました。私自身が高校から私立のプロテスタントの学校に通ったので、当初宗教のある学校もいいかなと思っていました。子どもも座禅などが気に入って仏教系の学校を考えていた時期もありましたが、そのうちに文化祭で活気のある学校がいいと言いだして、付属校を考えるようになりました。また、共学のほうがいいかなという気持ちもありました。しかし、これに関しては見学に行った学校の先生に「同じ性別でも200人もいれば必ず気の合う人間がいますよ」とアドバイスしていただき、考え直しました。

最終的に1月に共学校と第二志望の付属の中学。2月に第一志望の共学の付属校と第三志望の中学校に絞って出願しました。偏差値的にもちょうど4~5ポイントずつ幅があって、どの学校も親子共に行きたいと思える学校だったので、我ながらベストチョイスができたと思います。結果的に1月に受験した付属の中学校に合格したので、第三志望の学校は受験せず、第一志望の学校の2回目入試で合格しました。


中学受験で成功した秘訣(ひけつ)は何だと思いますか?


うちの場合、ほんとうに個性的な子どもで、子育てはとまどいの連続でした。なにしろ、幼稚園ではどんなに説得しても、ずっと靴下と上履きを履かないで通したような子どもです。その分、親として子どものことを理解しようという気持ちが人一倍強かったと思います。
志望校に関しても、最初から偏差値が上の学校を望まず、そのときの子どもの成績の伸びに応じて変えていきました。余力のないところまで追い込んでいたら、このような結果は得られなかったのではないでしょうか。
それから、「一つ強いたら一つ許す」というように精神的に追い詰めないように心がけました。ですから、6年生の夏休みにも4泊5日の旅行に行きました。

また、子どもの受験は日常とかけ離れたものであってはならないと思っていましたから、学校行事も通常どおり参加させていました。
1月に学校で鼓笛隊の移杖式(いじょうしき)というのがあって、この日は半袖、半ズボンで過ごすので、親御さんによっては休ませる人もいましたが、うちは背中にカイロをたくさんはって参加させました。また、2月1日の学校を受験しなかったので、この日も学校に行ったくらいです。さすがに、周囲のお母さんから「よく行かせたわね」と言われましたし、学校の先生にも「受験日じゃなかったの!?」と驚かれましたが(笑)。


中学受験を通してお子さんが成長した点は?


実際に受験が始まってから、子どもの成長を感じました。それまで「お子さんのことをもっと信じてあげなくては」と周囲のママ友達に言われたこともありましたが、本番ではプレッシャーから我を見失ってしまうということもあるのではないかと最後まで心配だったのです。
でも、本人はとても冷静で、自分自身でテストの得点を客観的に見ることができるようになっていたことには驚きました。算数の得点について、「1月に受験した中学校は90%、第二志望の付属校は70%、第一志望の付属共学校の1回目は65%できた」と自己採点をしていました。塾で答え合わせをしてみると、それがすべて当たっていたのです。「この子は、職人みたいになってきたな」と思いました(笑)。

しかし、第一志望の大学付属校の1回目入試では緊張していたらしく、不合格だったのです。第二志望の学校に合格していたので気が大きくなって、第一志望校の入試当日「今日で終わりだね」と私がプレッシャーを与えてしまったのもよくなかったみたいでした。
夜10時頃に即日発表だったので、9時頃には寝かしてしまったのですが、11時に起きてしまい、結果を知って大泣きをしました。翌日が2回目入試だったので、どうなることかととても不安でした。


第一志望校不合格という結果を知ってから気持ちの立て直しはどのように図ったのですか?


実はエピソードがあって、寝る前に翌日の準備をするのをいやがって用意をしていなかったので、それから慌てて用意をしたら、翌日時計を忘れてしまったのです。
「教室には時計がないから持参するように」と注意されていたのに忘れてしまって私も慌ててしまったのですが、本人は「そうだ、時計機能の付いたキッチンタイマーを持っているから、あれを時計代わりにすればいい」と言って、時間を合わせ始めたのです。目の前の作業に集中しているうちに、気持ちがすっと落ち着いたらしく、会場に着いた頃にはとても冷静になっていました。

出迎えてくださった塾の先生も、「昨日不合格だったからどれだけ落ち込んでいるか心配だったけれど、落ち着いているからびっくりした」とおっしゃったくらいでした。結局先生が時計を貸してくださって、余計うれしくなって「行ってきまーす!」と元気に会場に入っていきました。
そのときに、子どもは親が思っている以上に成長していたのだと、実感しました。
試験が終わって、本人は算数の得点を「最低でも70%、最高で80%はとれた」と言っていました。結果は合格。その晩、豆まきをしながら合格発表の時間を待っていたのですが、パソコンの画面で合格を確認して「よかったぁ!」と親子で感動がこみ上げてきました。


中学校に入っていかがですか?


今は、部活動に燃えて前向きに打ち込んでいます。週6日練習があり、その他に朝練もあるような大変な部活なのですが、楽しくてしかたないようです。私自身、子ども時代に児童劇団の活動に打ち込んでいた経験から、子どもにも何か打ち込むものをもってほしいと思っていましたので、うれしいですね。中高時代というのは打ち込むものがないと、ちょっと斜に構えて引いてしまいがちな年代ですからね。
勉強に関しては、「希望の学校に入ったのだから、卒業してくれれば何も言わない。自分で悔しい思いをするなら、勉強すればいい」と言っています。
受験生の間は、「希望する学校に入れなかったら」という不安からしかったこともありましたが、これからは自分でしたことの結果は自分が責任をとらなくてはなりません。中学受験までは、子どもを上手に操るプロデューサーでしたが、これからは自立させなくてはならないと思っています


これから受験を迎えるかたへのメッセージをお願いします。


中学受験は、やり方によってとても達成感のあるいい時期を子どもと過ごすことができます。やる価値のあるものだと思うので、一緒に成長できるように心がけてがんばってください。




  • 塾でいただいたカウントダウンカレンダー
    今もなぜか机から見上げたところにはられています。
湯島天神からいただいた愛媛のいよかん
「いよかん=いい予感」とげんをかついであってそれ以来、その年はよく食べました。


<取材後記>
声から想像するとおりの明るいお人柄の日高さん。お子さんの中学受験に対しても、その明るさと機転の利いた対応で、名プロデューサーとしてお子さんを導かれていました。熱心でありながら、決してお子さんを追い込まず、自分自身が受験を楽しむような気持ちで取り組まれているのが印象的でした。(教育ジャーナリスト 中曽根陽子)


プロフィール



教育ジャーナリスト、「登録スタッフ制企画編集会社<ワイワイネット>」代表。塾取材や学校長インタビュー経験が豊富。近著に『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)。

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