まったく見当違いの答えを書いている[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


質問者
小4男子のお母さま

質問
問題文を適当に思い込んで解答を書いていることがあるような気がします。ちょっと読んだだけでわからないような気がして、パニックになっているんじゃないかと思います。(算数でも)国語と同じく、思い込み解答が多いと思います。先日まで習っていた面積にも苦労していました。一問にかける時間が長くなりそうな問題だと、やる前からやる気が失われているように思います。

小泉先生のアドバイス
「つまずいているところはさまざま」という視点を常に持つ

「まったく見当違いの答え」を書く原因の一つは、ご指摘のとおり、「問題文を適当に思い込んで」いるからです。物語文であれば自分勝手に物語を作ってしまい、それに従って答えますから、妙な答案を作ってしまうのです。特に、記述問題の場合はユニークな答案を出す場合があると思います。このように自分勝手に物語を作ってしまうのは、想像力が豊か過ぎて、≪妄想≫のレベルまで達しているからです。通常の読書の場合はともかく、試験問題ではこのような妄想は許されません。
妄想を治す方法としては、常に本文を根拠に考えるクセをつけることです。たとえば登場人物の気持ちを考える時(例:恥ずかしい)、本文のどの部分からそれがわかるのか(例:頭をかいた)を確認すると良いでしょう。ただし、「頭をかいた」が常に「恥ずかしい」を表現しているとは限りません。また、そもそも「頭をかいた」で筆者が何を表現したいのかわからない子どももいます。これらの場合は、一つひとつ経験を積むことで、常識的に心情表現(動作・言葉・情景描写)とそれらが表す気持ちを一致させることができるようになると思います。

もちろん、他の原因によって「まったく見当違いの答え」を書いていることもあります。たとえば、問題文に出てくる漢字や熟語で知らないものが多いと、どうしても問題文を正確に読みとることが難しくなります。二つや三つなら前後の関係で意味を推測することもできますが、それ以上になると内容がつかみにくくなるのです。
このような語彙(ごい)不足が原因かどうかを確かめるには、「わからない漢字や熟語、あるいは言葉」の有無をお子さまに聞いてみると良いでしょう。また、「知らない」と言わない子どももいますから、難しそうな漢字や熟語を選んで、理解しているかどうか確認するのも良いでしょう。

さらに、読むスピードが遅いために「とばし読み」をしている場合も考えられます。文章を読み慣れていない子どもは、特にこの「とばし読み」には注意すべきでしょう。
「とばし読み」を見つけるには、問題文を音読させると良いでしょう。音読の場合、黙読よりもスピードは落ちます。しかし、黙読の場合よりも音読が倍以上の時間がかかっているのであれば、おそらく黙読している時は適当にとばし読みしていると考えられます。
そんな場合は、文章をつかえることなく正しく読める速さから始めて、徐々にスピードを上げていきます。そしてかなり速く音読できるようになったら黙読に切り替えると良いでしょう。正確にしかも速く読めるようになっていると思います。

また、問題文が正確に読めていても、問いを適当に読んでいる子どももいます。試験には制限時間がありますから、焦りすぎて、問われていることに答えていない場合です。
こんな時は、問いも正確に読むべく、大切なところに線を引きながら読む練習をすると良いでしょう。特に記述問題の場合は、問い自体の意味を理解するのが難しい子どももいます。おそらく問題演習の不足にその原因があると思われますので、そんな時も、演習をくり返すことで答え方の練習をすると良いでしょう。

以上、「まったく見当違いの答え」を書く原因をいくつか挙げてみました。こうやって見てみると、一つの症状でも原因はさまざまであることがわかります。つまり、正しい原因を突き止め、お子さまを正しく指導するには、常にいくつかの可能性を考えることが必要だということです。「つまずいているところはさまざま」という視点を常に持つことが大切だと思います。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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