入試の仕上げに過去問演習 その2[中学受験]

最近では、過去問演習を塾でも行うようになったが、もともと志望校は生徒ごとに異なるため、過去問演習は集団指導にはそぐわない。指導者は、過去問演習で志望校の出題傾向をつかみ、過去問演習の結果から、具体的にあと何点得点できれば合格できるかを知り、さらに、そのために最短距離で得点力をつけるための対策方法を誤答から探し、生徒のモチベーションを高めながら、得点力をつけるための対策を集中的に指導し、学習させて、次の過去問演習で合格点に近付けるようにがんばらせるのである。

個人によって、志望校も異なり、得点力も異なる。当然、間違え方も異なるので、得点力をつけるための対策も個人によって異なるはずだ。失点に対する対策を詳しく指導しなければ、生徒自身ではなかなか対策ができないので、過去問演習を行っても、どれだけの得点力があるかを知るだけになってしまうのである。塾でどこまで個別に、次に失点しない対策をしてもらえるかがポイントとなる。
どれだけの時間を過去問演習に割くかは、塾によっても異なると思うが、十分な時間を割いて個別に対処してくれる所は少ないと思われる。やはり、不足している部分は家庭で過去問演習を行って補うべきだろう。

過去問演習を行う目的は、志望校に合格することだ。合格点に達することができるように、最もたやすく得点でき、しかも最も上げられる得点率が高い対策から始めることが重要である。時間がかかる対策や受験生本人に負担がかかる対策は後回しにして、簡単にできる対策から手をつけることも大切だ。不得意分野・単元は、対策に時間がかかったり受験生本人に負担がかかったりするからこそ、今まで学習せずにいたことが多い。簡単に対処できる対策で得点率が上がっていけば、「学習すれば、得点が伸びる」ことを受験生本人が実感し、不得意なことにも積極的に取り組む可能性が高い。

対策は、大きく二つに分けることができる。一つは、不得意な分野・単元の問題で失点してしまうケースで、志望校の出題傾向が受験生の不得意な分野・単元と一致している場合は対策として、その分野を繰り返し学習して得意にしていく。しかし、不得意分野・単元の克服には時間がかかるという難点がある。さらに、不得意分野・単元は、受験生本人が学習したがらない傾向が強い。

もう一つが、「答案作成テクニック」つまりスコアメーキングだ。スコアメーキングは、問題の解法がわかっていてもケアレスミスや時間不足などで正解できない問題を、(1)受験生本人が自分の失点パターンを自覚し、(2)対処方法を理解し、(3)対処方法を過去問演習で行いながら得点できるようにする得点力アップの対策だ。これは、本人がやる気になれば短時間で身に付けられるので、得点力を付けるには画期的だ。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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