【現場のプロが解説】フリースクールとは? 選び方・費用・通学後の進路まで解説
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お子さまが学校に通えないとき、「勉強についていけるかな」「家族以外の人と触れ合う機会がほしい」と悩む保護者のかたもいらっしゃると思います。
そこで注目を集めているのが、「不登校の児童・生徒を受け入れる教育機関」フリースクールです。
でも、入学を検討するにあたっては、「フリースクールではきちんと勉強に取り組めるのかな?」「学費はどのくらいかかる?」など数多くの疑問があるのではないでしょうか。
フリースクールと一口に言っても、方針や対応内容はさまざまです。
そこでこの記事では、フリースクールの種類や費用、スクールの選び方のポイントなどを、中学校の教師を11年にわたり経験されたのち、現在はフリースクールの運営に携わっている信田雄一郎さんに伺いました。
ぜひ、お子さまのフリースクール通学を考える際の検討材料にしてください。
フリースクールとは?
そもそも「フリースクール」とはどんな施設を指すのでしょうか。
文部科学省では、「不登校の子供に対し、学習活動、教育相談、体験活動などの活動を行っている民間の施設」と説明しています。※1
義務教育段階である小・中学生だけではなく、高校生が通えるフリースクールも多数みられます。
フリースクールの活動内容は学習や教育相談、体験活動など多岐にわたり、外出が難しい児童・生徒に向けてICTを通じた支援や家庭訪問を行っている場合もあります。
文部科学省が実施した2015年度(平成27年度)の調査では全国に474の団体・施設が確認されています。※2
フリースクールとサポート校は何が違う?
フリースクールと混同されやすい施設として「サポート校」が挙げられます。
サポート校は、通信制高校に通う生徒に向けて、おもに学習に関するサポート・個性の成長の支援を行う機関です。
つまり、「サポート校を利用するのは通信制高校の生徒」ということになります。
それに対してフリースクールは、さまざまな理由から学校に通えない(または通いたくない)児童・生徒が通う施設で、学習支援だけでなくメンタルケアなど多彩なサポートが受けられるのが特徴です。
フリースクールに在籍する児童・生徒はどのくらいいる?
先述した文部科学省の調査によれば、フリースクールに在籍する児童・生徒数は小学生と中学生を合計して約4,200人(この数字は回答が得られた319施設のものです)となっています。
高校生に関しては、同調査によれば約2,800人が在籍していますが、これは、「義務教育段階の子どもが在籍している団体や施設における在籍者数」のため、そのほかのスクールも含めれば、さらに多くの高校生がフリースクールに通っていると考えられます。
フリースクールに入るには条件がある?
多くのフリースクールでは、入学資格は特に設けていません。
そのため、どのフリースクールに通うかは、「お子さまと相性がいいか」が最も重要な観点です。
相性がいいスクールを見つけるため、まずはWeb検索をして調べたり、学校の先生やスクールカウンセラー、かかりつけ医などの専門家に意見を聞いたりして情報を集めましょう。
そして複数のスクールの見学に行ってみることをおすすめします。
以下では、フリースクールのタイプを複数ご紹介しているので、参考にしてください。
フリースクールの費用は?
先述した文部科学省による2015年度(平成27年度)の調査では、フリースクールの入会金は平均で約53,000円、月額の会費(授業料)は約33,000円となっています。
その他、教材費や設備費などがかかるスクールもあります。
フリースクールのタイプ
フリースクールにはそれぞれ特徴があり、「何を目的としているか」「どんな活動を行っているか」はさまざまです。
ここでは、フリースクールの代表的なタイプをご紹介します。
お子さまの性格や意向を考えながら、「どのタイプのスクールが合いそうか」を一緒に検討してみてください。また、ご家族で検討する際は、ぜひ家族全員で相談し、一人で抱え込まないようにしてほしいと思います。
1. 学校復帰を前提とせず、元気回復をめざすスクール
学校に再び通うことではなく、児童・生徒の新しい居場所を提供することを目的とするスクールです。
学校に行けない・行きたくないお子さまが、友人をつくり、元気を取り戻してほしいと考える保護者が選ぶケースが多いようです。
2. 学校復帰を望む子どもに対する学習サポートが充実しているスクール
学校復帰をめざすお子さまを対象としたスクールです。
児童・生徒がスムーズに再登校できるよう在籍している学校と密に連携をとっており、通うことで学校が出席扱いになる「不登校特例校」もみられます。
学習に力を入れている施設が多く、在籍校の学習進度に合わせた学習指導を行っている場合もあります。
3. 学習障害や発達障害が原因で不登校になった子どもを支援するスクール
学習障害や発達障害のお子さまを支援するフリースクール。
専門知識をもつスタッフがおり、学習支援やソーシャルスキルトレーニング、保護者のかたのカウンセリングなどを行っています。
通常の学校と並行して、このタイプのフリースクールに通っている児童・生徒もみられます。
その他のフリースクール
ここまで取り上げてきた以外にも、以下のように多様なスクールがあります。
全国のフリースクールを紹介するWebサイトなどで、通学候補になりそうな施設を探してみてください。
・医療機関と連携をとりながらお子さまの心身ケアを行うスクール
・スタッフが自宅に訪問して学習支援やカウンセリングをするスクール
・オンラインのスタイルで学べるスクール
・全寮制で、共同生活しながら学習支援のほか生活指導も受けられるスクール
フリースクールではどう学ぶ?
フリースクールの学び方は、身近に通っているお子さまがいないと想像がつきにくいかもしれません。
2015年度(平成27年度)に文部科学省がフリースクールを対象に行った調査※2では、「個別の学習」や「社会体験(見学、職場体験など)」「自然体験(自然観察、農業体験など)」「相談・カウンセリング」「スポーツ体験」「芸術活動(音楽、美術、工芸など)」などを挙げた施設が目立ちました。
そのほか、スクールの中には、グループディスカッションや中高生を対象としたコンテスト応募のための活動を行っているところも。
個別学習の内容も施設によってそれぞれですが、タブレットやスマホの学習アプリで各教科の基礎的な内容を学んでいるところが少なくないようです。
わたしが運営しているTao Hausでは、豊田市が小中学生全員にタブレットを配っているので、AI学習ツールを活用し、学習したい生徒に対応しています。
フリースクール通学後の進路
フリースクールにお子さまを通わせるにあたって、「大学に行ってほしいけどフリースクールで進路指導はしてもらえるの?」「めざす職業に就けなかったら……」などと不安を感じる保護者のかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
フリースクールを卒業したお子さまは、大学・専門学校に進学したり、就職したりと、多様な進路を歩んでいます。
高校卒業認定試験に合格すれば大学や専門学校への受験資格が得られるので、「フリースクール→高卒認定試験→大学受験」の流れで大学へ入学するケースもあれば、フリースクールで学びながら通信制高校を卒業し、大学を受験するケースも。
その他、わたしが知っている事例では、フリースクールで好きなことが見つかり、中学校を卒業後に洋菓子店にアルバイトに入り、正社員になった生徒もいました。
フリースクール検討のポイント
ひと口にフリースクールと言っても多種多様なスクールがあるため、どんなタイプのスクールを選べばよいか迷われる保護者のかたも多いでしょう。
基本的には「どんな目的で通うか(学校復帰・居場所づくりなど)」「通いやすい距離にあるか」などを重視して選ぶのがよいでしょう。
ただ、それ以外でも大切なポイントがあります。
それは、「お子さまの心に寄り添ってくれるスタッフがいるかどうか」です。
不登校になった場合、学校の先生と接する機会がなくなるため、フリースクールのスタッフはお子さまが家族以外で接する数少ない大人ということになります。
お子さまから将来の夢などをていねいに聞き出し、目標を叶えるために学習面や情報収集の手助けをしてくれるスタッフがいる施設なら、安心して通わせることができると思います。
まずは、スクールのホームページやブログをチェックしたり、SNSで情報を収集したりしながら、子どもが興味を持ったら、現地に行ってみるのをおすすめします。
まとめ & 実践 TIPS
フリースクールはさまざまなタイプがあり、選ぶ際に迷うことも多いかもしれません。
今回ご紹介した情報を参考に、情報収集をしてみてください。
お子さまが抱えている課題を解決し、力強く未来に向かっていけるよう、納得できるフリースクール選びができることを願っています。
※1出典:フリースクール・不登校に対する取組-文部科学省
※2出典:小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う 民間の団体・施設に関する調査-文部科学省
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