入試の仕上げに過去問演習 その1[中学受験]

過去問演習を行う理由はなにか? 過去問演習は、単に志望校に合格できるかどうかを確認するために行うのではない。受験勉強の目的は志望校合格だが、過去問演習も例外ではない。過去問演習は、誤答から得点率を高める対策方法を見つけ、対策を実施することによって、志望校合格に導くことができる効果が高い学習法なのだ。

受験生の多くは、すべての学習を12月までに終了させて、1月から最後の仕上げとして過去問演習を行うが、実際には入試直前まで苦手分野・単元の克服や過去の学習の見直しに追われていることが多い。
志望校の過去問を演習して合格点まで引き上げる学習は、苦手分野の学習や過去に学習した内容の復習と並行して行うことになるので、費やせる時間は意外に少ない。入試間際まで、第1志望校の過去問は大事にとっておいて手をつけない受験生もいるようだが、過去問演習を入試のぎりぎりまで行わないのは、合格点以上得点できる自信がなく、自分の学力に自信を喪失するのが怖いという心理もあると思う。確かに、6年生の10月や11月に第1志望校の合格点まで届く学力のある生徒は少ないだろう。

問題は、過去問演習を1月からスタートすると、1カ月では第1志望校の5年間の過去問を2回繰り返すのが精いっぱいで、過去問演習から得られた誤答情報から受験生本人が得点力をつける対策を行う時間が、ほとんどないことだ。これでは何のために過去問演習を行ったのかわからなくなる。得点力をつけるのに必要な時間を考えて過去問演習を始めるべきである。2月の時点で得点力をつける方法がわかっても得点力をつける時間がなければ、合格できる実力がありながら不合格になることもあるだろう。

学習すべきことが多岐にわたると混乱するので、過去問演習を機軸として一つの学習としてまとめれば、学習効率が高まる。たとえば、不得意単元の克服だが、過去問演習で不得意だとわかった単元があれば、その都度、ピンポイントで学習し、大々的な復習は行わない。一見、中途半端になりそうな気もするが、理科・社会などは単元が明確で、単元同士のつながりはあるものの、前の単元をそれほど理解していなくとも学習はできるので、過去問演習で間違えたところを集中的に復習して不得意単元を克服するには都合が良い。むしろ、得意・不得意の基準がわからなければ、どの単元も心配になってすべてを学習し直すことになり、結果として途中までで入試に突入することになりかねない。

いつから過去問演習を開始すべきか、が問題だ。受験生の状況によって、過去問演習を開始する時期は異なるが、現在行っている学習とのバランスを取りながら、できれば10月から始めるのが得策だ。過去問演習を行うことで損失はない。それどころか、過去問演習を行うことで入試までに何をすべきかが明確になるので、プラスが大きい。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

子育て・教育Q&A