中学受験に向く子・向かない子[教えて!親野先生]
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中学受験をするか、しないかに頭を悩ませている保護者もいらっしゃるのではないでしょうか。お子さまの同級生の動向が気になったり、時には流されそうになってしまったりすることもあるかもしれません。受験勉強や私立中学での生活が我が子に合うのか気になることもあるでしょう。中学受験に向く子、向かない子とはどのような違いがあるのでしょうか。教育評論家の親野智可等先生に伺いました。
【質問】小3の長男の中学受験を検討中。中学受験に向く子、向かない子とはどんな子ども?
私は長男の中学受験を考えているのですが、夫は「うちの子は向いてないから、やめたほうがいい」と言います。中学受験に向く子というのがあるのでしょうか?あるとしたらどういう子でしょうか?逆に向かない子はどういう子でしょうか?
コチョウラン さん(小3男子)
親野先生からのアドバイス
拝読しました。
自己管理力が備わっているかを見極めて
中学受験においては、まず1つめとして自己管理力が高いことが必要です。
自己管理力が低いと、やるべきことをきちんとこなすことができません。
子どもたちには遊びも含めていろいろな誘惑があり、それに打ち勝って勉強しなければならないわけですから、自己管理力は必須です。
それは、つまり早熟で精神年齢が高い子でもありますし、言い換えると克己心が強いということでもあります。
自己管理力がない子は受験に向きません。
やるべきことをやらずに、毎日叱られ続けるということになってしまうからです。
これでは親子ともどもつらいです。
目的意識がある子どもならがんばれる
2つめとして、子ども自身に目的意識があることが大切です。
「自分は将来こんな方向に進みたい。そのためには、この学校でこういう教育を受けたい」とか「あの学校の校風が大好きだ。ぜひ、この学校で学びたい」など、はっきりした目的意識がある子はがんばることができます。
中には、「みんなが受けるから」「中学受験がブームだから」「受験しないと負け組と思われるから」「親が受験しろって言うから」などの理由で受験する子もいます。
この場合は、子ども自身にはっきりした目的意識がないわけですから、がんばりがきかなくなる可能性が高いと言えます。
勉強が好きな子なら受験勉強が苦痛にならない
3つめとして、もともと勉強が好きで学力が高いことも大切です。
勉強が好きでよくできれば、当然のことながら受験勉強もがんばることができます。
逆に勉強が嫌いで学力も低いという場合、受験勉強を続けるのが苦痛になります。
もちろん、子どものレベルに合わせた学校を受験すればいいわけですが、それにしても勉強自体が嫌いだと苦痛な時間が長くなってしまいます。
受験は長期戦。十分な体力が必要
4つめとして、体が丈夫で体力があることも大切です。
受験するためには、毎日の勉強時間を増やす必要がありますし、多くの場合、塾に通うことも必要になるでしょう。
しかも長期戦です。
それに耐えるためには、やはり体が丈夫で体力があることが求められます。
親に従順な子は中学受験に向く可能性もある
5つめとして、親に従順な子である必要があります。
自分がやりたいことをしっかり持っている子、つまり本当の意味で自立してる子は中学受験には向きません。
こういう子は中学受験には向きませんが、自分の人生を自分の裁量で大きく展開していける、将来有望な大物である可能性が高いと言えます。
自分がやりたいことがあっても、それを押さえて親の言うことを聞くような従順な子は、中学受験に向いています。
以上の5つの視点からわが子を見てみてください。
「目的意識もないし自己管理力もない。加えて勉強は大嫌い」という状態では、この先親子ともども大いに苦しむことが予想されます。
やる気スイッチの入る時期は子どもによって異なる。長い目で見守って
特に「男の子脳」の度合いが高い子は、苦戦が予想されます。
「男の子脳」の度合いが高い子は中学は公立に行って、高校受験で勝負した方がよい結果が出るかもしれません。
高校受験するころには、もう少し自己管理力がついて目的意識も出てくるかもしれないからです。
それにも間に合わない場合は、大学受験や就職試験(もちろん起業もありですが)で勝負すればいいのです。
やる気スイッチが入る時期は子どもによって違います。
でも、どの子にもスイッチが入るときは必ずきますので、長い目で見ることが必要です。
叱りすぎに注意。伸びていく芽を摘み取るだけなく、人間不信につながる恐れも
長い目で見られずに、親が近視眼的になっていると、受験の弊害ばかりを味わうことになってしまいます。
最大の弊害の1つが、勉強しない子や成績が上がらない子を親が叱りすぎてしまうことです。
これによって、子どもは自己肯定感がボロボロになり、自己否定感にこりかたまってしまいます。
これは、伸びていく芽を子どものときに摘み取ってしまうということです。
同時に、叱られることで親に対する不信感が出てきて、親子関係の崩壊に至る危険もあります。
不信感を土台に親子関係をつくってしまうと、それが他者一般に対する不信感にまでつながることがあります。
つまり、他者不信感とか人間不信と呼ばれるものです。
入学後に学校の勉強についていけないと、子どもが辛い思いをすることも
もう一つ中学受験にまつわるリスクをあげるとすると、高望みしてやっと入った学校でついていけなくなるということです。
これだとこの後の3年間、あるいは6年間にもわたって、ずっと苦しむ可能性があります。
私立中学に向く特性の子どももいる
次に少し話が変わりますが、一つ触れておきたいのは、受験に向くか否かではありませんが、私立中学に向く子というのもいるということです。
言い換えれば公立中学に向かない子です。
例えば、何らかの理由でいじめられる可能性が高そうな子、ほかの子と比べてちょっと風変わりな子、何らかの能力が顕著に高い子などは、公立に行かない方がいいかもしれません。
そういう子は、1人ひとりを手厚くケアしてくれる面倒見のよい私立中学校、その子の個性を最大限伸ばしてくれる私立中学校、穏やかな雰囲気の子が多い私立中学校、わが子の性格に合いそうな私立中学校、などのほうがよいでしょう。
親は、子どもが主体的な生き方ができるようなサポートを
最後にもう1つ大切なことを書きます。
それは、みんなが受験するから受験するという非主体的なことはやめたほうがいいということです。
それは、自分の人生を他人の価値観で生きることだからです。
親も子も、自分の人生に主体的に取り組むことが大切です。
親は「自分は、あるいは自分たちはどう生きたいのか?」を真剣に考える必要があります。
子どもも子どもなりに、「自分は何をしたいのか?どういう生き方をしたいのか?」を真剣に考える必要があります。
そういう話を親子ですることが大切です。
これからの時代は、変化のスピードがさらに上がる激動の時代になると言われています。
ブームや価値観も、コロコロ変わることでしょう。
その時のブームに流されていると、一生涯ずっと他人の価値観で生きることになってしまいます。
ですから、子どもたちが主体的な生き方ができるようにしてあげてください。
つまり、自分の生き方を自分で決める、自分がやりたいことを自分で見つけて実行できる、そういう生き方です。
私ができる範囲で、精一杯提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
みなさんに幸多かれとお祈り申し上げます。
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