「我が子に合った学校」とは、どのような学校か[中学受験]

今年度から「脱・ゆとり教育」が始まり、小学校の指導要領も以前の指導レベルに戻る。考えてみれば2002年からの中学受験ブームは「ゆとりの教育」が契機となったようだが、原因はそれだけではないように思える。少子化の影響から子どもの数が減少したことで、親が子どもに時間とお金を集中させることになったのと同時に、私立中高一貫校が生徒数の減少に対応すべく、学校の中身を充実させる努力をしてきたことも大いにあると思う。

学校の中身を受験生・保護者の側から見ると学校の教育方針と校風になるのだが、いくらすばらしい教育方針と校風の学校でも、我が子に合っていなければ入学しても意味がない。しかし、「我が子に合った」という言葉は抽象的でわかりにくい。
志望校選定の相談では、保護者は「我が子に合った」という言葉をよく使うが、「我が子に合った」という言葉を集約していくと「我が子の能力を伸ばしてくれる」「我が子を認めてくれる」という2通りの意味で使っているようだ。「我が子に合った」とは何かを、学校の教育方針と校風との関係を踏まえて具体的に考えてみたい。

まず、「我が子の能力を伸ばしてくれる」環境を考えてみる。子どもの能力を伸ばしてくれるのは先生ばかりではない。良き友と切磋琢磨しながら子どもは成長するものである。そう考えれば偏差値の高い学校には、能力が高い生徒が集まるので、偏差値の高い学校を目指すのも納得できる。
次に、「我が子を認めてくれる」環境を考えてみる。多くの友人や先生に囲まれ、子どもにとっては非常に居心地の良い場所で、「学校が楽しい」と言う生徒のほとんどはこのケースに当てはまる。それらの環境を備えた学校が「我が子に合った学校」なのではないだろうか?

「在籍者」の保護者アンケートで、入学前に思った「我が子に合った学校」とは、どのような学校かを調査した。「我が子が苦労しても学力・資質の強みを伸ばし、弱みを改善してくれる学校」(24%)を選択した保護者が最も多かったが、「我が子が無理せずに済む、我が子の性格に近い校風の学校」「我が子が無理せずに済む、我が子の資質が生かせる教育方針の学校」「我が子の生き方・考え方を認めてくれる学校」もそれぞれ15%程度あり、その他の選択肢も10%台で、「我が子に合った学校」は多様化していることがわかった。

「我が子に合った学校」は多様化しているものの、選択肢を集約していくと「我が子の能力を伸ばしてくれる」という条件は教育方針に、「我が子を認めてくれる」という条件は校風に対応していると考えられる。志望校選定では、どちらの要素も重要で、順位はつけられないが、それぞれの要素が我が子の性格・資質・生き方等に合った学校を選べばよいことになる。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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