2013/11/13
第1回 : 学校外教育費の支出格差はどのようなタイプの活動から生じるか?[4/4]
4.所得階層と活動タイプ
1)所得階層別にみた活動タイプの構成割合
図3、図4、図5は、所得階層別に活動タイプの構成割合を示したものである(ここでは世帯年収800万円以上、世帯年収400万円未満のグラフのみ掲載)。小学校4-6年生(図3)においては、世帯年収800万円以上の場合、全活動を行うタイプ①(16.2%)、スポーツ活動・家庭学習活動・教室学習活動を行うタイプ②(24.1%)、家庭学習活動・教室学習活動・芸術活動を行うタイプ③(7.5%)、家庭学習活動・教室学習活動を行うタイプ④(11.5%)の活動を行っているケースが、世帯年収400万円未満の層と比較して多い。800万以上の層では、幅広い学校外教育活動を行っていることがわかる。他方で、家庭学習活動のみのタイプ⑧、スポーツ活動のみのタイプ⑭、活動なしのタイプ⑯は、世帯年収400万円未満の層において構成割合が高い。比較的コストが低い家庭学習活動を中心に行う、あるいは学校外教育活動をひとつに絞る、もしくは学校外教育活動を行わないというケースが多いと考えられる。
中学生段階(図4)も傾向は変わらないが、世帯収入400万円未満の層の場合、スポーツ活動・家庭学習活動を行うタイプ⑥の割合が相対的に高い(17.9%)ことが特徴的である。部活動を中心に行い、高校受験対策は家庭学習により行っていると考えられる。
高校生段階(図5)になると、全体的に活動が減る傾向にあるが、活動なしのタイプ⑯をみると、世帯年収400万円未満の場合に26.9%と多く、世帯年収800万円以上の3倍以上になる。スポーツ活動のみのタイプ⑭、芸術活動のみのタイプ⑮に関しても同様、800万以上の層に比べて多い。他方で、活動の種類が多いタイプ①、②、③、④に関しては、800万以上の層のほうが割合が高い。学習活動とスポーツ活動・芸術活動の両立が行われていることを示している。
2)所得階層別費目別学校外教育費
表4は、家庭学習活動・教室学習活動・スポーツ活動を行うタイプ②に関して、所得階層別に学校外教育費を示したものである。どの学校段階においても、所得階層が高いほど合計の学校外教育費が多い関係がみられる(高校生の400万円未満を除く)。費目別にみると、3で述べたように、学校外教育費の差の多くは、教室学習活動の費用の差に依っていることがわかる。高校受験を控え教室学習活動が盛んになる中学生段階には差が小さくなっているが、小学校4-6年生、高校生においては、教室学習活動の費用の差が大きい。活動のタイプが同じ場合の所得階層による費用の差は、教室学習活動を行っているタイプでは、概ね教室学習活動によってもたらされていると考えられる。
5.まとめ
本稿の分析から、以下のことが明らかになった。学校外教育の活動タイプによる学校外教育費の差は、学校段階が進むにつれて大きくなっている。学校外教育費の多寡に影響を与えるのは、主として教室学習活動であり、学校段階の上昇にしたがって、教室学習活動への支出を増やした場合に学校外教育費は増加する。所得階層別に見ると、所得階層が高いほど、多様な活動を行い、所得階層が低い場合には活動が限定的である傾向にある。この傾向は学校段階が進んでも同様である。所得階層が高いほど学校外教育費が多い関係が見られるが、活動のタイプが同じ場合の所得階層による費用の差は、教室学習活動を行っているケースでは、概ね教室学習活動によってもたらされている。
本稿では、活動タイプ別の学校外教育費に関して概略を示すにとどまったが、本調査は豊富な情報を有しており、より詳細な分析を行うことが必要である。
参考文献
- 片岡栄美、2010、「子どものスポーツ・芸術活動の規定要因——親から子どもへの文化の相続と社会化格差」Benesse教育研究開発センター編『学校外教育活動に関する調査 調査報告書』所収
- 都村聞人、西丸良一、織田輝哉、2011、「教育投資の規定要因と効果——学校外教育と私立中学進学を中心に」佐藤嘉倫、尾嶋史章編『現代の階層社会[1]格差と多様性』、東京大学出版会所収