どちらの方法でも解くことができるようにさせるべきか?[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


質問者
小6男子のお母様

質問
いろいろな問題集の文章問題で、最初のほうに例題があり、その解き方を参考に問題を解かせていることがあります。すると、ある問題集では「線分図」を書いて解かせるのに、他の問題集では「面積図」を使って解かせていることがあります。本人が理解しやすいほうで解かせればよいのか、それともどちらの方法でも解くことができるようにさせるべきか悩んでしまいます。

小泉先生のアドバイス
まずは一つの方法で解けるようにする

ご指摘のとおり、算数の問題にはいろいろな解き方がある場合があります。教える側(先生)としては、一つの問題をいろいろな方法で解けるようになってほしいのですが、教わる側(生徒)としては、とにかく確実に解ける方法を一つ教えてほしいという立場の違いはあります。なにしろ時間は限られていますし、勉強すべき科目は算数だけではありません。やはり効率的に勉強したいというのは、受験生の共通の願いだと思います。
しかし、いろいろな解き方を学ぶことにより、解法を深く理解することができるようになるという先生の気持ちもわかります。さらにその問題に最も適した解き方をすれば、非常にエレガントな方法で素早く解けることも事実です。算数や数学の先生はこの「エレガントな方法」が大好きですから、生徒にもすすめるわけです。

さて、両者の言い分はこのようにもっともなのですが、それではどうすべきかと言えば、個人的には「まずは一つの方法で解けるようにする」ことをおすすめします。そしてある程度のレベルになって余裕がでてきたら、別の方法でも解けるようになるのがよいでしょう。まだまだ算数が苦手なお子さんに、いろいろな方法を教えるのは混乱させる原因になります。また問題によっては、たとえば「面積図」のほうが解きやすいものもあります。そんな場合は苦労して線分図を使うのではなく、「こんな問題の場合は面積図を使う」ということで、一つの方法で解くほうが合理的だと言えるでしょう。

このように、「まずは一つの方法で解けるようにする」がここまでの結論ですが、それでも「どの問題に、どんな解法を用いるべきか?」という問題は残ります。ご質問のように、複数の問題集を使う場合は、確かに同じような問題でも異なった方法を示される場合があると思います。このようなことを避けるためには、「複数の問題集を使わない」ことをおすすめします。書店に行くと、確かに複数の問題集や参考書が棚に並んでいます。一つの問題集に絞るのが不安になって、同じレベル・単元でも数冊を同時並行で学習したくなるかもしれません。しかし、やはり定評のある問題集を選んでそれを徹底的にこなすべきでしょう。
たとえば2冊の問題集を1回ずつ勉強するよりも、1冊の問題集を3回こなすほうがより効果的です。かかる時間も、1冊の問題集を3回こなしたほうが短時間で済みます。なぜなら、1回やって解けた問題は、2回目はもう解かなくてよいからです。複数の問題集を使った場合は、同じような問題でも解いてしまうので効率が悪いと言えるでしょう。また基礎・基本から応用・入試とレベルを上げる場合も、できるだけ同じシリーズの問題集を使用するのがよいと思います。

それでは、最後にまとめます。一つの問題集(あるいは一つのシリーズ)を使えば解き方にも統一性がありますから、まずはその問題集で示された方法で解けるようにしてください。そして余裕が出てきたら、他の解き方を学ぶのもよいと思います。また基本的な問題集を仕上げたあとで、過去問などの入試問題演習を行う場合は、今までにない解き方に出会う可能性はあると思います。そんな場合は、もし自分の方法で正解が得られたら自分の解法だけで満足してもよいですが、余裕があれば他の解法にも目をとおしてください。しかし正しい答えが出ない場合は、解答・解説に示された解き方を理解し、自分のものにしておくことが必要だと思います。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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