英語の「CAN-DOリスト」って? 次期指導要領で再注目

改訂が検討されている次期の学習指導要領では、小学校高学年で行われている「外国語活動」を教科「外国語」に格上げし、外国語活動は中学年から必修化する方針が、既に決まっています(いずれも2020<平成32>年度から)。それに伴って、中学校や高校でも、より<使える英語>を目指してパワーアップされる見通しです。そこで、改めて「CAN-DOリスト」と呼ばれる指標形式が注目されています。

中学校5割、高校7割の設定率だけど……

CAN-DOリストとは、学習の到達目標を「~することができる」という形で指標化し、英語を使って具体的に何ができるようになったのか、明確化しようというものです。文部科学省の有識者検討会が2011(平成23)年に提唱し、13(同25)年に文部科学省が手引を作成して、中学校や高校で、具体的な指標を設定するよう求めています。

たとえば、中学校卒業までに「聞いたり読んだりしたことなどについてほかの人と話し合い、理解したことを確認したり、意見の交換をしたりすることができる」(話すこと)、「自分の考えや気持ちなどが読み手に正しく伝わるように、文と文のつながりや全体としてのまとまりに注意してある程度の長さの文章を書くことができる」(書くこと)といったような形式です。

文科省の調査によると、2015(平成27)年度に、中学校では51.1%の学校、高校では69.6%の学科が、CAN-DOリストによる学習到達目標を設定していました。ただし、その達成状況を把握している学校は各22.2%、30.7%にとどまり、CAN-DOリストそのものを公表している学校に至っては、各7.8%、22.0%にすぎません。学校側も、まだまだ「生徒が~できるようになった」と、自信を持って指導できている状況にはなさそうです。

文法・和訳中心から脱却

先の文科省調査では、国が設定した目標に到達している生徒が少ないばかりか、「書くこと」に比べて「聞くこと」「話すこと」「読むこと」の能力が低いというように、4技能がバランスよく育成されていないことが明らかになりました。

そこで、中央教育審議会のワーキンググループでは、小学校から高校まで、一貫してCAN-DO形式の能力記述文で指導目標を示す方向で、検討を進めています。そのうえで、高校だけでなく、中学校でも授業を英語で行うことを基本とし、互いの考えや気持ちを英語で伝え合う対話的な言語活動を重視する、としています。

CAN-DOリストで測られる能力は、いわゆるペーパーテストに解答できる能力とは違います。実際に英語を使う場面を想定して、教員とのやりとりや生徒同士の会話、リポートなどを通じて、そうした言語運用能力が具体的に身に付いているかどうか、きめ細かく評価する必要があります。

これまでの学校英語は、ともすれば文法や和訳が中心で、「中高で6年間勉強してもさっぱり使えるようにならない」という批判があります。そうした授業からの脱却が、いよいよ求められることになりそうです。児童生徒の側にも、物おじせず積極的に英語を使ってみようという姿勢が、ますます必要になるでしょう。

  • ※中教審 教育課程部会 外国語ワーキンググループ
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/058/index.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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