手伝うと自立できない?【親野先生アドバイス】
- 育児・子育て
時間どおりに行動したり、忘れ物をしないように準備したり、といった生活面のことをどこまで親が手伝うべきか、気になっているかたもいらっしゃるでしょう。他の子と比べて焦ったり、手伝いすぎて自立できないのではと心配したり、いったいいつまで手伝わなければいけないのかと考えてしまうことも。生活面のサポートのヒントや向き合い方を教育評論家の親野智可等先生にお聞きしました。
しつけと自立の速度は無関係
子どもの発達のスピードは十人十色で、それぞれのオリジナルペースというものがあります。こうしたペースがもともと生まれ持った個性だというのは、きょうだいでも得意不得意がまったく異なることからもわかります。
つまり、なかなか自立できないと感じても、子どもがサボっているわけではないし、親のしつけが悪いわけでもないということ。子どもの努力不足でないことはもちろん、保護者のかたが自分を責めることもないのです。
もちろん、子どもが少しずつでも自立できるようにサポートしていくことは大切です。また、そのための方法やコツもあります。ただ、こうした方法を紹介する前に、まず「追い込めば子どもが早く自立するという考えはまちがい」だということを知っておいてください。
もうひとつ、子どもの自立に関するまちがいに「親が手伝うと子どもが自立できない/自立が遅れる」というものがあります。これは既に研究で否定されていて、今は、むしろたっぷり手伝ってもらった子どものほうが自立できると考えられています。
- 「厳しくすれば早く自立する」「親が手伝うと、子どもが自立できない」は、どちらもまちがい。この考えが悪循環に陥る原因に。
時間が「見える」工夫をする
時間の管理には、紙に時計の絵を描いて「家を出る」「おふろに入る」など意識してほしい時間の針を描き込む「模擬時計」を時計のとなりに貼ってみてはいかがでしょうか。時計を見るたび目に入り、見比べることで無意識に心の準備ができるようになります。
曜日ごとなどに家庭での時間割を決めてホワイトボードに書く「家庭内時間割」を作るのもおすすめです。帰宅後にすることの全体が把握できるので、次はこれをするという心構えができ、今しないとあとで困るなということも感じられます。
残り時間が減っていくようすが色で見える実感型タイマー、ストップウォッチなどを使って「時間までに〇〇するよ!」「何分でしたくできるかな〜?」などゲーム感覚で取り組むのも、楽しめる工夫ですね。
片づけのハードルを下げる
片づけや物の管理には、まず物を減らして整理を。目に入るところには必要なものだけ置くようにして、余分なものは処分し、使用頻度の低いものは箱にしまえば、したくしやすくなります。
物の出し入れのステップを減らすことも効果的です。部屋を移動して扉を開けて箱を出してしまう、などはステップが多くてハードルが上がります。使う場所の近くで、引き出しを開ければしまえるほうが楽ですね。
収納場所にラベルを貼ってみるのもいいでしょう。箱に「カード」と書いてあれば、おもちゃは入れにくくなります。ランドセルの置き場などを決めて「置いたらプリントを出す」など、目に着く場所に書いておいてもいいですね。
「あえて困らせる」のは効果がない
環境の工夫と共に大事なのが、言葉の工夫です。「やりなさい」ではなく、「できるかな?」「そろそろじゃない?」という問いかけに。環境の工夫をしてもできない時は「一緒にやろう」「手伝ってあげる」と言ってサポートしてあげてください。
叱ったり、困らせたりすれば自分で直すという考え方はやめましょう。なぜなら、たいていの場合、子どもはこれまでに十分叱られ、困っているからです。それでも直らないのですから、その方法は効果がないのです。
物の管理や時間の管理で本当に困ったり、重要性を感じたりするのは、実は大人になってから。子どもは、その場では困ってもすぐに忘れてしまいます。ですから、今は、子どもが困らないように手伝うことのほうが大切で効果的です。
「いつまで手伝い続けるのか」という問いには答えがありません。それでも、子どもが自分から「片づけようかな」「そろそろ始めないと」などと言うだけでも大きな変化です。子どものペースに寄り添って、無理なく自立を応援していきましょう。
まとめ & 実践 TIPS
生活自立のペースは個々に違って、無理をしたから早くなるというものではありません。むしろ子どもが必要とする間は、求められるサポートを。環境を整え、声かけを工夫しながら、成長を応援しましょう。
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