英語好きの小学生も中学校で英語嫌いに 小学校教員も指導力に不安‐斎藤剛史‐

グローバル化に対応するため、文部科学省は英語教育の充実を進めており、現行学習指導要領では小学校高学年に週1時間の「外国語活動」を実施しています。ところが、小学校でせっかく英語を学んでも、中学生になると英語嫌いが増えるという新たな問題が生じていることが、同省の「小学校外国語活動実施状況調査」で明らかになりました。

調査は、小学5・6年生と中学校1・2年生の児童生徒、外国語活動と英語を担当している教員を対象に実施しました。それによると、「英語が好き」(「好き」と「どちらかといえば好き」の合計)と回答した子どもの割合は、小5・6が70.9%、中1が61.6%、中2が50.3%でした。逆に「英語が嫌い」(「きらい」と「どちらかといえばきらい」の合計)は、小5・6が10.9%、中1が18.4%、中2が27.0%で、残りは「どちらともいえない」などでした。小5・6は7割以上が英語を好きなのに対して、小5から4年間英語を学習してきた中2になると約5割にまで減少し、しかも約3割が英語嫌いになっているということになります。
実際、英語の授業を理解しているかどうかを子どもにたずねたところ、小5・小6では65.2%、中1は57.0%、中2は48.9%と、学年を追うごとに授業を理解している子どもの割合が減っています。中学校で英語嫌いが増えるということは「第1回 中学校英語に関する基本調査報告書【教員調査・生徒調査】」(ベネッセ教育総合研究所)などで指摘されてきましたが、小学校で外国語活動が実施されても、その傾向は改善されていないようです。

小学校の外国語活動でもっと学習しておきたかったこととして、中1の約8割が英単語や英語の文章を書くこと、読むことを挙げています。「読む・書く・話す・聞く」の4技能のうち、小学校の外国語活動では英語に慣れることに重点を置き、「話す・聞く」を中心にしています。これに対して中学校では、4技能をバランスよく教えることになっています。どうやら、英語の「読む・書く」という学習が、小学校から中学校の間でうまくつながっていないことが、中学校での英語嫌いを増やしている大きな原因のようです。
2020(平成32)年度から小学校で実施予定の次期学習指導要領では、外国語活動を小3・4に前倒しして、小5・6では英語を教科とすることが予定されています。英語の「読む・書く・話す・聞く」の4技能をいかにバランスよく指導し、それを中学校でどう伸ばしていくのかが、今後の英語教育の大きな課題といえるでしょう。
ただし、小学校教員の英語の指導力がそれに追いつくかどうかを懸念する向きもあります。調査結果を見ても、小学校教員の67.3%が「英語が苦手」と回答しているほか、半数以上が課題として「教員の指導力」を挙げています。一方で、小学校教員の63.5%が外国語活動のための校外研修に「今年度は参加していない」というのが実情です。

文科省は2015(平成27)年度から小学校を含めた英語教員の指導力強化事業を開始していますが、次期学習指導要領の実施までに小学校教員などの英語の指導力をどれだけ向上させられるかが、これからの英語教育の成果を左右することになるかもしれません。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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