外国人を英語教員に グローバル化対応、「特別免許」で道開く‐斎藤剛史‐

文部科学省は、外国人の外国語指導助手(ALT)や海外勤務経験のある民間人などを英語教員として登用するためのガイドラインを策定し、都道府県教育委員会などに通知しました。これによって、2015(平成27)年度から公立学校などでも外国人の正規教員が英語を教える風景が出現するかもしれません。

グローバル化に対応した英語教育を進めるため、文科省は次期学習指導要領の改訂で、小学5・6年生に教科としての「英語」を創設するほか、中学校では原則として日本語を使わずに英語の授業を行う方針を表明しています。しかし最大のネックになるのが、現在の英語教員です。専門知識はあるものの、文法指導などが中心で実際の会話能力が十分でないなど、「使える英語」を教えるには課題がある教員も少なくないという指摘もあります。さらに、小学校で教科として英語が始まれば、英語教員の数が不足することも懸念されます。このため文科省は、教員免許がない外国人や海外勤務経験のある民間人などに対して、学校の英語教員に登用する道を開くことにしたものです。

具体的には、専門的知識・経験はあるが教員免許はないという民間人を教員に登用するための「特別免許状」を外国人などにも適用できるようにします。特別免許状は政府の規制緩和の一環で創設された制度ですが、これまでは専門高校の職業科目教員などごくわずかの活用例しかありませんでした。これに対して文科省は、外国人にも「特別免許状」を交付できることを明確化し、都道府県教委が特別免許状を授与する際のガイドライン(外部のPDFにリンク)を作成しました。ガイドラインでは、日本の学校や国内のインターナショナルスクールなどで、教科としての英語の授業に「最低1学期間以上にわたり概ね計600時間(授業時間を含む勤務時間)以上」携わった経験があること、民間企業などで英語による勤務経験が「概ね3年以上」あることなどを定めています。これにより大半の外国人ALTに特別免許状の授与が可能になると思われます。

ところで現在でも多くの外国人ALTが活動していますが、特別免許状を授与されるとどう変わるのでしょうか。一番の違いは、特別免許状の授与は制度的に教員採用とセットになっているため、その保有者は正規教員であるということです。教員免許のないALTは日本人教員の助手という位置付けで、授業の一部しか担当できません。それに対して特別免許状を持った外国人は、正規の教員として授業の全部を担当し成績評価までします。さらに、担当教科以外でも道徳・特別活動・総合的な学習の時間を受け持つことができます。文科省が英語教員への外国人登用を実質的に認めたことで、今後、公立学校などの英語の授業風景が大きく変わることも予想されます。

なお公立学校の場合、法的に日本国籍のない者は「教諭」になれないため、特別免許状による外国人教員は「常勤講師」という身分になりそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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