英語学習が将来を変える 必要なのは「議論」と「対話」
毎年シンガポールで開催される、RELC(地域言語センター)国際セミナー。ベネッセ教育総合研究所主任研究員の加藤由美子氏はこれに参加し、今後の英語教育についての考察を深めている。加藤氏に、これからの日本の英語学習の在り方について詳しく伺った。
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ケンブリッジ大学教育学部のメイサー教授は、生徒の発達や状況に合わせた共通ルールを設定する必要があると述べました。その基本的な考え方は次のようなものです。
1 参加者は、テーマと関連性のあることを発言する。
2 すべての人の意見は価値あるものと認めたうえで、批判的に評価する。
3 相互に質問をし合う。
4 理由を聞き、理由を答える。
5 合意に至れるように努める。
大切なことは、議論の参加者がそのルールに合意しておくことです。議論の参加者一人ひとりがこのルールを認識し、ルールから外れていると思ったらお互いに注意をし合います。英語は「議論」「対話」に適した言語だと思います。英語は常に主語‘I’を立てる言語ですが、他者の‘I’も自分と異なる視点を持つ、独立した存在として重んじる言語でもあります。それぞれの違いを認め合ったうえで、共に考え、合意をめざすことができるのです。
今回のセミナーでは、国民全体のレベルを引き上げてきた日本の義務教育制度の素晴らしさ、日本人全体の教養の高さや勤勉さ、ものづくりの技術力が高く評価されていると実感しました。一方、日本人は、残念ながら、英語を話すことが全般的にあまり得意でないとも認識されているようです。とはいえ、日本の社会も多様化しており、同じような価値観を持つコミュニティーの中だけで暮らすことはできなくなりつつあります。異なる‘Point of View’を持つ人間同士が対話することで、問題の解決策や新しい価値が見えてきます。‘I’の言語である英語はそれを学ぶのに最適な言語といえます。
出典:英語5技能の時代に育てる「21世紀型思考力」とは?【後編】 -ベネッセ教育情報サイト